姉弟波乱組
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誰しも人には譲れないものがある。
だからこそ他人とぶつかり合うこともあるだろう。
でも、それって悪いことではないとおれは思う。
爆破事件から数日経った。結局、桂たちを捕まえることはできなかったが、拠点の一つであるホテル池田屋を摘発したからかテロ事件はぐんと減った。
あれから隊士として、トシの補佐として仕事を与えられた。基本的には書類をまとめる事務的なことと市中の見回りである。
一希は一番隊隊長の沖田の補佐ということもあって、民間の事件や事故の処理など実践的な仕事が多いようだった。
「それでは本日もよろしくお願いします」
そんな仕事に慣れ始めた今日、真選組屯所にはテレビ局の関係者が揃っていた。「最近の真選組の活躍を機に密着取材をしたい」とあの事件の直後に申し出があり、意外にもそれに応じたのだ。
既に昨夜、攘夷志士の会合への討ち入りから密着取材は行われており、朝から取材が再開された。しかし、綾日は少し苦笑いをしながら土方の横に立っていた。
「気合い入れろ!早朝訓練をサボる奴は切腹だぞゴラァ!!」
何故ならもう10時にも関わらず早朝訓練として庭で隊士たちが木刀の素振りをしているからだった。綾日はカメラに映らない場所で隊士たちへ霧吹きをかけて汗を演出していた。
「…まったくここまでするかよ、普通」
「土方が早朝っていえば、早朝だって言わざる得ないッスから」
「いや、これもう偽装でしょうよ」
呆れてつい本音をこぼす綾日に、稽古に参加してる一希と山崎が答えた。だが山崎だけはバトミントンのラケットで素振りをしている。
「うるせぇぞ!てかお前はまたミントンか!!」
3人の会話に気がついた土方は山崎を蹴っ飛ばした。
するとアイマスクをしたまま素振りをしていた沖田が手を止め、土方に問いかける。
「そういや近藤さんはどうしたんで?休暇でも取ったんですかィ?」
「てめぇと一緒にするな!…近藤さんのことだ、どこか一人で剣術の修行でもしてるだろうよ」
「さすが近藤局長!惚れ直すぜ」
「局長ともなるとやっぱり違うな」
そのやり取りもカメラは捉えていて、これを見た視聴者はきっと近藤は素敵な人だと思ったりするのだろうか、と綾日は考える。
すると番組ディレクターが一旦カメラを止めさせ、土方に声をかけた。それは普段の真選組の仕事の内容を取材したい、とのことだったので早々に訓練を切り上げ、各仕事の持ち場へと取材陣を同行させたのだった。
*
数時間後、いつものように書類の山から解放された綾日は、街中で暴れていた酔っ払いを捕らえ帰ってきた土方と合流する。
「終わったか」
「もちろん!」
一息つこうと淹れてきた茶を土方にも渡し、自分は部屋の前の縁側に腰かけゆっくりと茶を啜る。
綾日は仕事の合間によくこうして休憩しているのだ。
「やっぱりテレビ局の人がいると落ち着かないなぁ」
元の世界でもなかなか経験できないような出来事に心浮つかせつつ、遠くで複数の隊士に取材をし続けている人たちを見ながら呟いた。
「意外だね?こうゆう申し出受けるなんて」
「仕方ねぇだろ、これも仕事だ」
視線はそのままに部屋の中にいる土方へ言えば、ぶっきらぼうに返される。そんなもんか、と納得するようにもう一度茶を啜り、沈み始めた太陽を眺める。
「……お前、俺らが漫画だって言ってたな?」
「ん?」
藪から棒に何だと問うてきた土方へ振り向くと、彼が珍しくこちらをじっと見ていて少し動揺した。黙ったままの彼に綾日は肯定するように頷いた。
「なら未来を知ってるってことか?」
「……さあ?」
とぼけるように答えれば彼は眉をひそめる。
綾日は彼の予想通りな反応に肩を竦めた。
──正直、日に日に記憶は薄れてるんだよなあ。
だから思い出すのは諦めたし、未来を考えるのも止めた。今、ここで起きた事に必死に向き合おうって決めたばかりなんだけどな?
「おい、こっちは真剣に…」
「分かってるって」
「だったら真面目に答えろ」
どんどん土方の顔が険しくなるが構わず黙る。
そんな彼女に痺れを切らし、もう一度口を開こうとしたが、それは部屋に尋ねてきた番組の取材陣により遮られた。
「そろそろ見回りの時間ですよね?」
現れた彼らにそう尋ねられると綾日はケロリと表情を変え「そうです、そうです」と笑顔で返事する。そして立ち上がり身支度を済ます。
「トシ!早く見回りに行こうぜ」
「お前なぁ……話は終わってねぇからな」
取材陣を待たせぬように急かす彼女の態度に、小さく舌打ちをすれば部屋を後にする。それに続くように綾日も取材陣も出て行く。
街を抜け、夕陽が綺麗に見れる橋へ歩いていると、そこには小さな人溜まりができていた。
「何の騒ぎだ?」
一足先に気がついた綾日は、橋の下を眺めている男性に興味ありげに尋ねた。
「あー何でも女を取り合って決闘をしたようですぜ」
「女で決闘?!」
「くっだらねぇ……どこの馬鹿が」
教えてもらった内容に土方も呆れつつ、橋の下を覗くと決闘に負け 大の字で倒れている男性を見つける。彼を見た2人は「あっ」と揃えて声を出す。
「近藤さん…」
「え?あれが真選組局長の近藤局長?」
「てめっ、おい!何撮ってんだ!」
ボソリと呟かれた名前に取材陣は聞き逃すことなく、今までいなかった近藤かと返す。ハッとした土方は慌てて橋の下へ向けられているカメラを手で塞ぎ、取材陣を橋から遠ざける。
最後までグダグダだったなあ、と土方たちと近藤を見て今日一番のため息を吐く綾日なのであった。
→
だからこそ他人とぶつかり合うこともあるだろう。
でも、それって悪いことではないとおれは思う。
取材×再会
喧嘩はグーでやるべし
喧嘩はグーでやるべし
爆破事件から数日経った。結局、桂たちを捕まえることはできなかったが、拠点の一つであるホテル池田屋を摘発したからかテロ事件はぐんと減った。
あれから隊士として、トシの補佐として仕事を与えられた。基本的には書類をまとめる事務的なことと市中の見回りである。
一希は一番隊隊長の沖田の補佐ということもあって、民間の事件や事故の処理など実践的な仕事が多いようだった。
「それでは本日もよろしくお願いします」
そんな仕事に慣れ始めた今日、真選組屯所にはテレビ局の関係者が揃っていた。「最近の真選組の活躍を機に密着取材をしたい」とあの事件の直後に申し出があり、意外にもそれに応じたのだ。
既に昨夜、攘夷志士の会合への討ち入りから密着取材は行われており、朝から取材が再開された。しかし、綾日は少し苦笑いをしながら土方の横に立っていた。
「気合い入れろ!早朝訓練をサボる奴は切腹だぞゴラァ!!」
何故ならもう10時にも関わらず早朝訓練として庭で隊士たちが木刀の素振りをしているからだった。綾日はカメラに映らない場所で隊士たちへ霧吹きをかけて汗を演出していた。
「…まったくここまでするかよ、普通」
「土方が早朝っていえば、早朝だって言わざる得ないッスから」
「いや、これもう偽装でしょうよ」
呆れてつい本音をこぼす綾日に、稽古に参加してる一希と山崎が答えた。だが山崎だけはバトミントンのラケットで素振りをしている。
「うるせぇぞ!てかお前はまたミントンか!!」
3人の会話に気がついた土方は山崎を蹴っ飛ばした。
するとアイマスクをしたまま素振りをしていた沖田が手を止め、土方に問いかける。
「そういや近藤さんはどうしたんで?休暇でも取ったんですかィ?」
「てめぇと一緒にするな!…近藤さんのことだ、どこか一人で剣術の修行でもしてるだろうよ」
「さすが近藤局長!惚れ直すぜ」
「局長ともなるとやっぱり違うな」
そのやり取りもカメラは捉えていて、これを見た視聴者はきっと近藤は素敵な人だと思ったりするのだろうか、と綾日は考える。
すると番組ディレクターが一旦カメラを止めさせ、土方に声をかけた。それは普段の真選組の仕事の内容を取材したい、とのことだったので早々に訓練を切り上げ、各仕事の持ち場へと取材陣を同行させたのだった。
*
数時間後、いつものように書類の山から解放された綾日は、街中で暴れていた酔っ払いを捕らえ帰ってきた土方と合流する。
「終わったか」
「もちろん!」
一息つこうと淹れてきた茶を土方にも渡し、自分は部屋の前の縁側に腰かけゆっくりと茶を啜る。
綾日は仕事の合間によくこうして休憩しているのだ。
「やっぱりテレビ局の人がいると落ち着かないなぁ」
元の世界でもなかなか経験できないような出来事に心浮つかせつつ、遠くで複数の隊士に取材をし続けている人たちを見ながら呟いた。
「意外だね?こうゆう申し出受けるなんて」
「仕方ねぇだろ、これも仕事だ」
視線はそのままに部屋の中にいる土方へ言えば、ぶっきらぼうに返される。そんなもんか、と納得するようにもう一度茶を啜り、沈み始めた太陽を眺める。
「……お前、俺らが漫画だって言ってたな?」
「ん?」
藪から棒に何だと問うてきた土方へ振り向くと、彼が珍しくこちらをじっと見ていて少し動揺した。黙ったままの彼に綾日は肯定するように頷いた。
「なら未来を知ってるってことか?」
「……さあ?」
とぼけるように答えれば彼は眉をひそめる。
綾日は彼の予想通りな反応に肩を竦めた。
──正直、日に日に記憶は薄れてるんだよなあ。
だから思い出すのは諦めたし、未来を考えるのも止めた。今、ここで起きた事に必死に向き合おうって決めたばかりなんだけどな?
「おい、こっちは真剣に…」
「分かってるって」
「だったら真面目に答えろ」
どんどん土方の顔が険しくなるが構わず黙る。
そんな彼女に痺れを切らし、もう一度口を開こうとしたが、それは部屋に尋ねてきた番組の取材陣により遮られた。
「そろそろ見回りの時間ですよね?」
現れた彼らにそう尋ねられると綾日はケロリと表情を変え「そうです、そうです」と笑顔で返事する。そして立ち上がり身支度を済ます。
「トシ!早く見回りに行こうぜ」
「お前なぁ……話は終わってねぇからな」
取材陣を待たせぬように急かす彼女の態度に、小さく舌打ちをすれば部屋を後にする。それに続くように綾日も取材陣も出て行く。
街を抜け、夕陽が綺麗に見れる橋へ歩いていると、そこには小さな人溜まりができていた。
「何の騒ぎだ?」
一足先に気がついた綾日は、橋の下を眺めている男性に興味ありげに尋ねた。
「あー何でも女を取り合って決闘をしたようですぜ」
「女で決闘?!」
「くっだらねぇ……どこの馬鹿が」
教えてもらった内容に土方も呆れつつ、橋の下を覗くと決闘に負け 大の字で倒れている男性を見つける。彼を見た2人は「あっ」と揃えて声を出す。
「近藤さん…」
「え?あれが真選組局長の近藤局長?」
「てめっ、おい!何撮ってんだ!」
ボソリと呟かれた名前に取材陣は聞き逃すことなく、今までいなかった近藤かと返す。ハッとした土方は慌てて橋の下へ向けられているカメラを手で塞ぎ、取材陣を橋から遠ざける。
最後までグダグダだったなあ、と土方たちと近藤を見て今日一番のため息を吐く綾日なのであった。
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