姉弟波乱組
名前
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制服を身に纏った綾日は自室から動けずにいた。
あれほど憧れていた本物の制服に胸を高鳴らせていたが、ある事に気が付き困惑していた。
「何で…、何で思い出せない…?!」
先程、局長室で『連続爆破テロ』の話を聞いた時に原作と一致すると気が付き、自室に戻ってから全て思い出そうと試みたのだがモヤがかかったようで思い出せないのだ。
大好きな作品だから、特に真選組が関わった話なら綺麗に覚えていたはずなのに、こんなにも思い出せなくなった自身に戸惑った。
「もしかして、余計な事をしないためのトリップ補正?」
消すなら全て消してくればいいのに、と思った。思い出せないと言っても、これから会うであろう人達の記憶はあり、何となくこうゆう事が起きるだろうという曖昧な記憶はあるのだ。
「今はまだいいけど……この先のことを考えると不便じゃねぇか」
自分が動くことで助かる命があるなら、そうするつもりだった綾日にとってこの地味な記憶喪失はとてもショックだった。
しかし諦める気も毛頭ないようで、仕切り直して急いで会議しているであろう居間へ向かった。
「姉貴!遅いッスよ!」
「悪りぃ…ちょっと問題発生して」
「サイズが合わなかったんですかィ?」
「デリカシーないな、おい!」
からかいながら言ってくる沖田に思わずツッコむ。そんな2人が部屋の前で彼女を待っていたということは会議は終わってしまったようだ。
念の為、ちらりと中を覗くとそこには誰もいなかった。
「もう皆指定された持ち場に向かったッスよ」
「そっか。それでおれらはどうすんだ?」
「爆破テロに毎度狙われてる大使館の近くで張り込みでさァ」
了解、と短く返事をする彼女を見て、一希は少し違和感を覚える。そして違和感の正体を確かめようと綾日を見るが、至っていつも通りのようなので、気のせいかと思うことにしたのだった。
*
「ん〜暇ですなぁ」
窓のサッシに肘をついて外を眺めていた綾日がそう呟くと、土方は彼女を頭を小突いた。
「仕事中だぞ、もう少し緊張感を持て」
「そう言われても後ろで2人も寝てたら緊張感も何もないって」
彼女の言う通り、部屋の真ん中で沖田と一希が堂々と雑魚寝をしていた。そんな彼らを見て土方も綾日もため息を吐く。
そしてもう一度外へ視線をやると、大使館前に見覚えのある3人が現れてつい「あっ」と声に出した。
「何だ?不審者でも見つけたか」
土方は綾日が見ている方へ持っていた双眼鏡を向ける。大使館へ荷物を届けに来たらしいその3人が戌威族の門番と話していた。
──ドカンッ
そして、3人のうち1人が持っていた荷物を不審に思った門番が払い飛ばしてしまい、その荷物が落ちた瞬間大きな音と共に爆破した。
大使館の周りを警備していた戌威族が続々と集まっていくのが見える。
「とうとう尻尾だしやがった」
警備に捕まりかけていた3人の逃走を手助けした人物を一瞥した後、手元にある手配書を見る。
「山崎、何としても奴らの拠点おさえてこい」
「はいよ」
「戦でかつて活躍した英雄もお天道様様の今の世の中じゃただの反乱分子ってわけか。このご時世に天人を追い払おうなんざ、たいした夢想家だよ」
手配書をくしゃりと握り丸め、寝転がっている沖田へ投げる。綾日は一緒に寝ている一希を起こすため身体を揺さぶる。
「2人ともよくあの爆音の中寝てられんね?」
「爆音って…またテロ防げなかったんですかィ?何やってんだィ、土方さん真面目に働けよ」
「そうッスよ、姉貴もちゃんと働けッス」
「もう一回眠るかコラ」
「今度は永遠に眠らせるぞ」
先程まで寝ていた2人の発言に苛立ちを覚える。
しかし沖田も一希も気にすることなく、気持ちよさげに伸びをする。そんな彼らに綾日は呆れるように息をつくと、もう一度記憶を手繰り寄せようと試みた。
──くそ、やっぱりダメか。銀時や桂たちに会うことぐらいしか思い出せない…。
「姉貴?大丈夫ッスか?」
難しい顔をして黙り込んだ綾日にやはり何かを感じ取った一希が不安そうに声をかけた。それに気づいた綾日は返事をしようとするが土方に遮られる。
「おい、お前らもこのまま連れていくから準備しておけ。…真選組の晴れ舞台だぜ、楽しい喧嘩になりそうだ」
カチャリと刀を鞘から抜き、それを眺める。
綾日は座ったまま土方の持つ刀を同じように眺める。今までしてきた喧嘩とは違う緊張感が走る。
「一希、また今度話すから心配すんな。今は目の前の初仕事を頑張ろうぜ」
不安そうにしていた一希を安心させるようにさっき返せなかった言葉を伝える。原因ははっきりしなかったが、いつもの調子で答えた綾日を見て彼は頷いた。
すると、襖が開いて偵察に出ていた山崎が戻ってきた。
「副長、拠点を割り出しました。ホテル池田屋に奴らは逃げ込んでいるようです」
「よくやった。近くに配置している隊士にもそこへ向かうよう連絡してくれ」
「はいよ」
報告と次の指示を手短に交わすと再び山崎は去る。
土方と沖田も報告にあった場所へ向かうため部屋を出ていく。それに続くように姉弟も初めて扱うことになるであろう刀を握りしめ、部屋を後にしたのだった。
→
あれほど憧れていた本物の制服に胸を高鳴らせていたが、ある事に気が付き困惑していた。
「何で…、何で思い出せない…?!」
先程、局長室で『連続爆破テロ』の話を聞いた時に原作と一致すると気が付き、自室に戻ってから全て思い出そうと試みたのだがモヤがかかったようで思い出せないのだ。
大好きな作品だから、特に真選組が関わった話なら綺麗に覚えていたはずなのに、こんなにも思い出せなくなった自身に戸惑った。
「もしかして、余計な事をしないためのトリップ補正?」
消すなら全て消してくればいいのに、と思った。思い出せないと言っても、これから会うであろう人達の記憶はあり、何となくこうゆう事が起きるだろうという曖昧な記憶はあるのだ。
「今はまだいいけど……この先のことを考えると不便じゃねぇか」
自分が動くことで助かる命があるなら、そうするつもりだった綾日にとってこの地味な記憶喪失はとてもショックだった。
しかし諦める気も毛頭ないようで、仕切り直して急いで会議しているであろう居間へ向かった。
「姉貴!遅いッスよ!」
「悪りぃ…ちょっと問題発生して」
「サイズが合わなかったんですかィ?」
「デリカシーないな、おい!」
からかいながら言ってくる沖田に思わずツッコむ。そんな2人が部屋の前で彼女を待っていたということは会議は終わってしまったようだ。
念の為、ちらりと中を覗くとそこには誰もいなかった。
「もう皆指定された持ち場に向かったッスよ」
「そっか。それでおれらはどうすんだ?」
「爆破テロに毎度狙われてる大使館の近くで張り込みでさァ」
了解、と短く返事をする彼女を見て、一希は少し違和感を覚える。そして違和感の正体を確かめようと綾日を見るが、至っていつも通りのようなので、気のせいかと思うことにしたのだった。
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「ん〜暇ですなぁ」
窓のサッシに肘をついて外を眺めていた綾日がそう呟くと、土方は彼女を頭を小突いた。
「仕事中だぞ、もう少し緊張感を持て」
「そう言われても後ろで2人も寝てたら緊張感も何もないって」
彼女の言う通り、部屋の真ん中で沖田と一希が堂々と雑魚寝をしていた。そんな彼らを見て土方も綾日もため息を吐く。
そしてもう一度外へ視線をやると、大使館前に見覚えのある3人が現れてつい「あっ」と声に出した。
「何だ?不審者でも見つけたか」
土方は綾日が見ている方へ持っていた双眼鏡を向ける。大使館へ荷物を届けに来たらしいその3人が戌威族の門番と話していた。
──ドカンッ
そして、3人のうち1人が持っていた荷物を不審に思った門番が払い飛ばしてしまい、その荷物が落ちた瞬間大きな音と共に爆破した。
大使館の周りを警備していた戌威族が続々と集まっていくのが見える。
「とうとう尻尾だしやがった」
警備に捕まりかけていた3人の逃走を手助けした人物を一瞥した後、手元にある手配書を見る。
「山崎、何としても奴らの拠点おさえてこい」
「はいよ」
「戦でかつて活躍した英雄もお天道様様の今の世の中じゃただの反乱分子ってわけか。このご時世に天人を追い払おうなんざ、たいした夢想家だよ」
手配書をくしゃりと握り丸め、寝転がっている沖田へ投げる。綾日は一緒に寝ている一希を起こすため身体を揺さぶる。
「2人ともよくあの爆音の中寝てられんね?」
「爆音って…またテロ防げなかったんですかィ?何やってんだィ、土方さん真面目に働けよ」
「そうッスよ、姉貴もちゃんと働けッス」
「もう一回眠るかコラ」
「今度は永遠に眠らせるぞ」
先程まで寝ていた2人の発言に苛立ちを覚える。
しかし沖田も一希も気にすることなく、気持ちよさげに伸びをする。そんな彼らに綾日は呆れるように息をつくと、もう一度記憶を手繰り寄せようと試みた。
──くそ、やっぱりダメか。銀時や桂たちに会うことぐらいしか思い出せない…。
「姉貴?大丈夫ッスか?」
難しい顔をして黙り込んだ綾日にやはり何かを感じ取った一希が不安そうに声をかけた。それに気づいた綾日は返事をしようとするが土方に遮られる。
「おい、お前らもこのまま連れていくから準備しておけ。…真選組の晴れ舞台だぜ、楽しい喧嘩になりそうだ」
カチャリと刀を鞘から抜き、それを眺める。
綾日は座ったまま土方の持つ刀を同じように眺める。今までしてきた喧嘩とは違う緊張感が走る。
「一希、また今度話すから心配すんな。今は目の前の初仕事を頑張ろうぜ」
不安そうにしていた一希を安心させるようにさっき返せなかった言葉を伝える。原因ははっきりしなかったが、いつもの調子で答えた綾日を見て彼は頷いた。
すると、襖が開いて偵察に出ていた山崎が戻ってきた。
「副長、拠点を割り出しました。ホテル池田屋に奴らは逃げ込んでいるようです」
「よくやった。近くに配置している隊士にもそこへ向かうよう連絡してくれ」
「はいよ」
報告と次の指示を手短に交わすと再び山崎は去る。
土方と沖田も報告にあった場所へ向かうため部屋を出ていく。それに続くように姉弟も初めて扱うことになるであろう刀を握りしめ、部屋を後にしたのだった。
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