姉弟波乱組
名前
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ふと意識だけが浮上する。
まだ寝ていたい気持ちが強いからか、目も開けず身体も動かすことはない。ただ耳を澄ますとやけに騒がしい気がする。
「…き……姉貴っ!!!」
一希の声だと気づき、同時に風が強く吹いていることが分かる。窓を開けたまま寝たっけ?と考えるも、自分の名を何度も叫ぶ彼に苛立ちを覚えた。
「姉貴!起きてってば!!」
「うるさいんじゃボケェ!!!」
寝返りをうつ勢いで足で彼を蹴ろうとしたら、身体ごと一回転し、一希の頭にかかと落としをした。
(…あれ、回転した?いやいやベッドで寝てたはずのおれが一回転って)
「うおわぁぁああぁぁあぁぁ?!?!!」
「な、何んスか!?」
「何でおれら落ちてんの?!」
「気が付くのが遅いッス!!」
綾日の言う通り、姉弟揃って何もない真っ白な世界を現在進行形で落ちている。
「あ、これ!夢だろ!そうなんだろ?!」
「さっきの姉貴の蹴りがめっちゃ痛かったから夢ではないッス!!」
「はあ?!ならどうすんだよコレ!!」
先の見えない落下にただただ2人は慌てた。
腕や足をばたつかせるが何の効果もなさそうだ。
「待って待って!地面が見えてきてるぅぅぅ!!」
「「ぎゃあああああああ!!!」」
為す術もなく襲ってくるであろう衝撃に怯え、目を固く閉じた。しかし、思っていた痛みはさほどなく、尻もちをついた程度のものだった。
有り得ない事態に姉弟は恐る恐る目を開く。
周りを見渡すとどうやら路地裏のようで、周辺には日本家屋しかないようだ。時代錯誤な風景に唖然としていると奥から野太い男の怒声が聞こえる。
「早く逃げねぇと捕まる…ってお前ら誰だ?!」
「え?!いや、その!」
「お前らも真選組か!?俺らの仲間をよくもやってくれたなぁ!!」
「しんせんぐみ……?」
聞き慣れた単語に驚くが、いかにも悪そうな男が複数人現れたので、急いで立ち上がりその場から距離を取る。
そこで初めて見知らぬ男2人が自分たちの下敷きになってくれたのだと知った。
「こんな餓鬼を雇うとは大した事なさそうだな」
「ああ、追手も容易く撒けたしな」
「真選組が聞いて呆れるぜ!がははは!!」
「さっきからアンタらが話してる『しんせんぐみ』ってのはあの黒い制服を着た真選組か?」
「あ?それ以外何があるってんだ?」
「なるほど…実写の撮影だとしてもその台詞は聞き捨てならねぇな?」
「姉貴!ここがどこかも分かんないのに喧嘩は!!」
確かに状況は一向に分からずじまいだが、大好きな真選組を侮辱され、頭にきた綾日は一希の制止を振り払い男達に詰め寄る。
「命知らずが。俺らとやるのか?」
「さっきの発言を取り消さないならな」
「はっ、餓鬼のくせに生意気なんだよッ!!」
目の前にいた男が振りかざした拳を簡単に避け、鳩尾に拳を喰わせると音にならない呻き声とともに男が崩れ落ちる。それを皮切りに他の男達も一斉に殴りかかってきた。
「へいへーい、そこまででさァ」
屋根の方から聞こえた少し気の抜けた声に再び驚き見上げたが、次の瞬間目の前が爆発した。
今度こそ死んだと思ったが、まだ息はできるらしい。
爆発で舞い上がった砂埃と煙で咳き込む。
「総悟てめぇ餓鬼まで巻き込んでどうすんだ!」
「でも、あそこで止めてなかったらボコボコにされてましたぜ?」
さっきの声ともう1人の声に耳を疑った。
爆風が落ち着く頃には先程の男達は捕まっていて、爆発で転んでしまった綾日の目の前には手を差し出されていた。
「おい、大丈夫か」
差し出された手の先にある顔を見て、やはり聞き間違えではなかったと知る。しかし何故彼が目の前にいるのか理解ができず固まってしまった。
「あーあ、土方さんが怖いから動けなくなっちやいましたねィ」
後ろから現れた彼を見て再び絶句する。
先程自分で発した「実写の撮影」だとしても理解し難い。何故なら姿、声がそのまま過ぎるからだ。
「おい、お前ら聞いてんのか」
「……嘘だろ?」
「あ?」
「お、お、推しが生きてるぅぅぅ!!?!」
急に叫んだ綾日に今度は目の前の2人が驚く。
彼女の後ろにいた一希は「あちゃー」と頭を抱えたのだった。
To be continued.
2019.09.16.