姉弟波乱組
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はぁ、本当に可愛げのない弟だよな!姉にこんな本気出すかフツー?!」
「姉貴は普通の女じゃないッスからね」
「それは否定しないけども!」
「そして喧嘩を望んだのは姉貴ッスよ?姉の望みを叶える弟なんて健気じゃないッスか」
「ホント可愛くねー!」
なんだかんだと言い合いながら打ち合い、せめぎ合いと激しい攻防を繰り広げている。ちょっとだけと言っていたはずなのに、姉弟はいつの間にか白熱していた。
庭には木刀同士がぶつかり合う音と姉弟の口喧嘩で響き渡っている。
「こんなボロボロじゃ明日稽古どころじゃねぇぞ」
一度一希と間合いを取った綾日が、汗を拭い、防ぎ切れなかった攻撃の跡を見て呟く。
「ならリタイアするッスか?」
「はっ、誰がするかよ」
まだまだ、と再び一希へ向かって木刀を振り上げるが、それは彼に届くことはなかった。
自分たちの間に割って入ってきた父が原因である。
「お前たちいつまでやるつもりだ、もうすぐ夕飯の時間だぞ」
「うえ?!そんな時間経ってんの!?」
日が沈み始めてることに気がついていなかった綾日は驚きの声をあげる。
きっと誰も止めなければ続けていたであろう2人に父がタオルを渡し、強制的に終わらせる。そして、姉弟は父に言われるがまま家の中へ戻っていく。
「続きは明日の稽古でだからな!」
「いいけど、剣道じゃ蹴りはダメッスよ?」
「分かってるわ!」
からかってくる一希に言い返していると、ふいに近くに置いてあった綾日の携帯が鳴る。
誰からの連絡かと考えながら通知を見ると一通のメールが届いていた。送信元は見覚えのないメールアドレスだが、躊躇うことなく開いた。
「…異世界キャンペーン?」
聞き慣れない内容のメールについ声を漏らす。
不思議そうに携帯を見つめる姉が気になり、一希も彼女の携帯画面を覗き見る。
「行きたい世界の写真を送って下さい…?」
「チェーンメールッスか?」
「いや?今どきこんな分かりやすい手法やらないだろ。…えっと確か新刊がここに」
「え、返信しちゃうんスか!?」
「え、だって面白そうだし?」
キョトンとした顔で疑うことをしない綾日に溜め息を吐く。何を言っても「気にしすぎ」と言われるだろうと思い、単行本を撮影して送信する彼女を黙って見る。
どうやら送信後にすぐ返信が来たようで、綾日は続けざまに操作をする。
「何て来たんスか?」
「何人で行きたいかって。2人っと」
「2人ってもしかして僕ッスか?」
「もちろん!行けるなら行きたいっしょ?」
「そりゃあ…あんな世界絶対楽しいッスからね」
でしょ?と言った時には2度目の送信は終わっていた。するともう一度返信が届き、開いてみると『アンケートのご協力ありがとうございました。』と定型文のみだった。
「ありゃ、これだけか」
思ったより簡易的な内容に拍子抜けした2人だったが気に留めることなく、夕飯の用意ができたという母の声に返事をした。
『貴方の願いを叶えましょう』
最後に届いたメールに続きがあったなど2人は知る由もなく、携帯は閉じられたのだった。
*
「ふわあ、眠い……」
夕飯を済ませ、いつものようにゴロゴロと自室で寛いでいると眠気が襲ってくる。今日は自己記録を更新するほど寝たはずなのに、と抗うが昼間の一希との手合わせ(喧嘩)が原因なのだろうか、重たい瞼が上がることはなかった。
明日も変わらず剣道に打ち込み、終われば漫画やアニメを楽しみ、創作意欲が沸けば絵を描いたりするのだろう。そして、一希と趣味の話に花を咲かせたり、喧嘩して怒られたり…そうやっていつもの日常が続くと思っていた。
だけど、そんな中、非日常がやって来たのだ。
→