短編
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「今日もお手柄でしたね。貴女のサポートがなかったら、この情報は得られなかったかもしれません」
『…そうかな?』
組織のNo.2 ''ラム'' からの任務を終えた帰路。
僕は彼女を自宅付近まで送っていくこととなり、いつもより騒がしい夜の街中を 闇夜にそぐわない真っ白な愛車で走行していた。
「えぇ。それにしても、貴女の命中率は相変わらず素晴らしいですね。銃の精度も良さそうですし、きちんと手入れをされてるのが分かります」
『そんなことないよ。それに、あの人に比べたら 私なんて………あ…』
あの人…
それはおそらく 赤井……
''ライ'' のことだろう。
僕の前では 禁句だと知っているからか、しまった という表情で口をつぐみ 顔を逸らすマイ。
「ほぉ… あの人ですか……」
『あはは… 』
「僕の前で その名前は……」
『分かってる… ごめん』
彼女の困った顔が可愛かったので、つい からかってしまう。
これが、好きな子は 苛めたくなるって奴なのか…
「そういえば、今日は10月31日、ハロウィンでしたね。道理で外が賑やかなわけです 」
『ハロウィンかぁ。 小さい頃は、よくカボチャをくり抜いて ランタンを作ってたな…』
「 ''Jack-o'-Lantern'' ってやつですね。
知ってますか? 本来はカボチャではなく、カブに目や口を彫って飾っていたらしいですよ。ハロウィンのお祭り自体、もともとは 古代ケルト人が1年の終わりに行っていた行事ですしね 」
『へぇ… バーボンは相変わらず博識多才だね』
「そんなことないですよ。
でも、そうですねぇ…。少しはハロウィンらしい事でもしてみようかと…」
『バーボンが? 仮装でもするの?』
まさか。そんな事するはずないでしょう?
「 ''Trick or treat.'' 」
『……え?』
「お菓子、持ってないですか?」
『今…? そんなの 持ってるわけ……』
「それは残念ですね。それならーーー」
赤信号で停車した隙に、彼女の座る助手席に身を乗り出す。
『!!』
「悪戯されても、文句は言えませんよね…」
強張る細い肩を抱き寄せ、顎に 優しく親指を添える。
瞳を閉じて、彼女の形の良い唇に自身のそれを近付ける。
あぁ… いっそこのままーー
ーー彼女との距離は、僅か数センチ…
「……クッ、はは」
『………へ?』
ぽかん と
効果音がつきそうな程 気の抜けた表情になり、崩れ落ちる彼女のポーカーフェイス。
しかし、直ぐに平生を取り戻し、眉間に皺を寄せ こちらを睨みつけるサファイアブルーの大きな瞳。
『……バーボンなんて、嫌い…』
顔を赤らめながら 拗ねたように拒絶の言葉を吐かれても、僕が傷付くはずもなく…
「ふふ、最後までして欲しかったのですか?」
『!? …もう知らないっ!』
プイと あちら側に顔を背けられる。
ちょっと、からかい過ぎたかな?
そう思いつつ、彼女の赤くなった耳を見て、シフトレバーに手をかけ アクセルを踏む。
ーーー このまま、時が止まってしまえばいいのに…
なんて、僕らしくもないことを 考えてしまった。
ー Fin. ー
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