a little story
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019ナポリタン(幸村)
12時を半分も過ぎると学食はなかなか混雑している。空席を探すのも一苦労だ。今日は蓮二も真田も委員会とやらで居ないから珍しく1人の昼休み。購買で適当に買ったは良いものの、どこに座ろうか席を探していた時だった。
「幸村くん、ここ空いてるよ」
「……琴璃ちゃん?」
彼女は友達と2人で食べ終ったところのようだった。友達はこの後用事があるそうで、その空いた席を譲ってくれた。残された彼女の隣に有り難く座る。
「久しぶりだね。こうやって話すの」
彼女はにっこり笑って言う。去年まではクラスメイトだったからそれなりに話したけど、3年になってクラスが離れてからは特に接点も無いから会話することもなかった。
「そうだね。久しぶりだ」
彼女に答えながら買ってきた野菜ジュースにストローをさした。
「なんか幸村くん、変わったなー」
「そう?」
「うん。なんていうか逞しくなったように見える」
そんなに俺は貧弱に映っていたのかな。でも確かに、去年よりは練習量増やしたりジムに通う日も多くなったから、あながち否定できない。
「キミは、変わらないね」
「そう?」
「うん。いつもにこにこしている所とか、話しやすい雰囲気も変わらない」
「そんな……照れるよ」
素直に喜ぶ所も。きっと心が純粋なんだと思う。
「あ」
あともう1つ、決定的に変わってない所見つけた。
「こうやって久しぶりに喋るのって、なんか楽しいね。同じ学校の中なのに」
「そうだね。クラスが違うとなかなか会えないからね」
「また話せるかなぁ」
「明日も話せるよ。キミは俺に用があるから」
「え?どーゆう事?」
「それはね、」
ポケットから出したハンカチ。それで彼女の口許を優しく拭ってやる。水色の布地に鮮やかなオレンジの色素がついた。
「お昼ご飯は、美味しかった?」
「わ、わ、わ……」
「それ、使っていいから」
彼女は真っ赤になった顔を、必死に俺のハンカチで隠す。可愛らしくて思わず笑ってしまった。
「……ありがと」
「どういたしまして」
キミのそういう、隙だらけな部分も変わらない所の1つだ。明日も笑って話せるといいね。
020天の邪鬼(向日)
アイツが風邪ひいた。昨日の夜から調子悪かったらしく、今日は休むねって朝イチにメールがきた。
……別にいーし。今朝はお前ん家に寄らなくて良くなったから、むしろ好都合だし。宿題の確認も、昼メシ何食うかも、昨日最終回だったクイズ番組の話もしなくていいから助かるわ、ほんと。
「なんや岳人、元気ないやん」
「……は?なんで。別にふつーだし」
「にしし。忍足、岳人はね、大好きな幼馴染の子が今日お休みで寂しいの」
「なっ!ジロー!テメエふざけんな!」
「ちょお、それホンマ?なんで今まで教えてくれなかったん」
「だからちげーって!」
「え~じゃあ寂しくないの?」
「……んぐっ……」
「寂しいんやん」
「うるせー!俺は嘘がつけねぇんだよ!悪いか!」
なんだよこのヤロ寄ってたかって人をからかいやがって!こうなったのもお前が風邪で休んだせいだ。ついでに、今日の数学の授業で答えられなかったのも学食でたらこスパゲティ売り切れだったのもお前のせいだ。お前がいればこんな事にならなかったのに。クソクソ!
だから、文句言いに乗り込んでやる。別に見舞いとかじゃねーよ、勘違いすんな。
部活とっとと終わらせて、本当は氷帝からお前ん家まで30分かかるのを10分近く短縮させて来たってのに。
「ごめんね岳ちゃん。琴璃まだ熱が下がらなくて寝てるの」
「あ……そう、なんだ」
「せっかく来てくれたのにごめんね。元気になったらまた来てね」
おばさんが言うんじゃしょうがねえ。今日のところは大人しく帰るよ。けどこれで終わったと思うな。風邪が治ったらちゃんと言わしてもらうかんな。お前が居なかったせいで今日1日がどれだけ散々だったか。言うことたんまりあるんだからさっさと良くなれバカ。
「……あーくそ」
そこから5分以内で着く俺ん家。夕飯のいい匂いがするけど、あんまテンション上がらねぇ。
今日喋らなかったから、今夜のテレビ何やるか知らねぇや。再来週のテスト範囲も聞こうと思ってたのに。アイツ明日は来るのかな。熱まだ下がらないって言ってたな。でも今日中に下がれば明日来れるって事かな。
つーかなんでこんなに考えてんだ俺は。風邪なんだから、ゆっくり休めって思えばいいじゃんか。お大事に、って、おばさんになんで言えなかったよ。
「……ぐっ、……うあー!寂しいよ、わりーか!」
お前が居なくて、むちゃくちゃ寂しいよ。だから早く元気になれ。そしたらまた、俺と喋りながら登校するんだかんな。
021うちの豪快ナイチンゲール(赤也)
「はい、膝見せて」
いつもはどっかフワフワしててど天然な先輩が今は別人だ。右手にマキロン、左手にガーゼを持って俺を追い詰めてくる。
「早くしないとバイ菌入っちゃうよ」
「わぁーってますって!今、心の準備してんの」
「そんなに恐がることかなぁ」
「恐がってんじゃなくて、ビビってんの!」
「え?それ同じ事だよ、赤也くん」
やれやれ、と言った顔で先輩はベンチに座った。いつまでもやってらんないから、俺も観念して向き合うように椅子に座る。
発端は今から十数分前。テニスの練習中に怪我した……わけじゃなく、部室につく目前の階段で。3段飛ばしで身軽にかけ降りてたんだけど、最後の1段を失敗したというだせぇ結末。コンクリートの上に転げ落ちた時点で、これまずいなとは思ったんだけど。俺がすっ転ぶのをちょうど目撃してた副部長に、試合に支障をきたすなたわけ者、ってグーパンされた(こっちの方がきたすっつーの)。その後萎え萎えで部室に入ったら、先輩がもう救急箱を持って待ち構えてた。
「大丈夫?」
って言われて初めて自分の膝見たら、擦りむけ皮剥け血だらけでなかなかヤバい感じになってた。気付いた途端に痛くなるから不思議だよな。
「はい、傷見せて」
「ういっ……ス」
「じゃあ消毒液かけるね」
「痛い?痛くない?」
「大丈夫、最初だけだから」
「いや答えになってねぇ」
俺がなんでさっきからこんなにビビってるのかというと。
「うおっ!ちょ、もういいんじゃない!?」
「動かないで、また血が出てきちゃう」
「だってもうびっしゃびしゃッスよ!こんなにかけなくてもよくない!?」
ドリンクも旨いし洗濯も綺麗だし毎日のルーティンも完璧なのに。この人は傷の手当てがイマイチ……なんだよなぁ。だったら怪我しなきゃいい話なんだけど。
「あんまり派手な動きしないようにね。もうすぐ大会もあるんだから」
「……へーい」
手当てしてもらってコートに行くと、両膝ぐるぐる巻きにされた俺を見て、丸井先輩に泣くほど大爆笑された。めっちゃムカついたからケツにスマッシュぶつけてやったわ。
12時を半分も過ぎると学食はなかなか混雑している。空席を探すのも一苦労だ。今日は蓮二も真田も委員会とやらで居ないから珍しく1人の昼休み。購買で適当に買ったは良いものの、どこに座ろうか席を探していた時だった。
「幸村くん、ここ空いてるよ」
「……琴璃ちゃん?」
彼女は友達と2人で食べ終ったところのようだった。友達はこの後用事があるそうで、その空いた席を譲ってくれた。残された彼女の隣に有り難く座る。
「久しぶりだね。こうやって話すの」
彼女はにっこり笑って言う。去年まではクラスメイトだったからそれなりに話したけど、3年になってクラスが離れてからは特に接点も無いから会話することもなかった。
「そうだね。久しぶりだ」
彼女に答えながら買ってきた野菜ジュースにストローをさした。
「なんか幸村くん、変わったなー」
「そう?」
「うん。なんていうか逞しくなったように見える」
そんなに俺は貧弱に映っていたのかな。でも確かに、去年よりは練習量増やしたりジムに通う日も多くなったから、あながち否定できない。
「キミは、変わらないね」
「そう?」
「うん。いつもにこにこしている所とか、話しやすい雰囲気も変わらない」
「そんな……照れるよ」
素直に喜ぶ所も。きっと心が純粋なんだと思う。
「あ」
あともう1つ、決定的に変わってない所見つけた。
「こうやって久しぶりに喋るのって、なんか楽しいね。同じ学校の中なのに」
「そうだね。クラスが違うとなかなか会えないからね」
「また話せるかなぁ」
「明日も話せるよ。キミは俺に用があるから」
「え?どーゆう事?」
「それはね、」
ポケットから出したハンカチ。それで彼女の口許を優しく拭ってやる。水色の布地に鮮やかなオレンジの色素がついた。
「お昼ご飯は、美味しかった?」
「わ、わ、わ……」
「それ、使っていいから」
彼女は真っ赤になった顔を、必死に俺のハンカチで隠す。可愛らしくて思わず笑ってしまった。
「……ありがと」
「どういたしまして」
キミのそういう、隙だらけな部分も変わらない所の1つだ。明日も笑って話せるといいね。
020天の邪鬼(向日)
アイツが風邪ひいた。昨日の夜から調子悪かったらしく、今日は休むねって朝イチにメールがきた。
……別にいーし。今朝はお前ん家に寄らなくて良くなったから、むしろ好都合だし。宿題の確認も、昼メシ何食うかも、昨日最終回だったクイズ番組の話もしなくていいから助かるわ、ほんと。
「なんや岳人、元気ないやん」
「……は?なんで。別にふつーだし」
「にしし。忍足、岳人はね、大好きな幼馴染の子が今日お休みで寂しいの」
「なっ!ジロー!テメエふざけんな!」
「ちょお、それホンマ?なんで今まで教えてくれなかったん」
「だからちげーって!」
「え~じゃあ寂しくないの?」
「……んぐっ……」
「寂しいんやん」
「うるせー!俺は嘘がつけねぇんだよ!悪いか!」
なんだよこのヤロ寄ってたかって人をからかいやがって!こうなったのもお前が風邪で休んだせいだ。ついでに、今日の数学の授業で答えられなかったのも学食でたらこスパゲティ売り切れだったのもお前のせいだ。お前がいればこんな事にならなかったのに。クソクソ!
だから、文句言いに乗り込んでやる。別に見舞いとかじゃねーよ、勘違いすんな。
部活とっとと終わらせて、本当は氷帝からお前ん家まで30分かかるのを10分近く短縮させて来たってのに。
「ごめんね岳ちゃん。琴璃まだ熱が下がらなくて寝てるの」
「あ……そう、なんだ」
「せっかく来てくれたのにごめんね。元気になったらまた来てね」
おばさんが言うんじゃしょうがねえ。今日のところは大人しく帰るよ。けどこれで終わったと思うな。風邪が治ったらちゃんと言わしてもらうかんな。お前が居なかったせいで今日1日がどれだけ散々だったか。言うことたんまりあるんだからさっさと良くなれバカ。
「……あーくそ」
そこから5分以内で着く俺ん家。夕飯のいい匂いがするけど、あんまテンション上がらねぇ。
今日喋らなかったから、今夜のテレビ何やるか知らねぇや。再来週のテスト範囲も聞こうと思ってたのに。アイツ明日は来るのかな。熱まだ下がらないって言ってたな。でも今日中に下がれば明日来れるって事かな。
つーかなんでこんなに考えてんだ俺は。風邪なんだから、ゆっくり休めって思えばいいじゃんか。お大事に、って、おばさんになんで言えなかったよ。
「……ぐっ、……うあー!寂しいよ、わりーか!」
お前が居なくて、むちゃくちゃ寂しいよ。だから早く元気になれ。そしたらまた、俺と喋りながら登校するんだかんな。
021うちの豪快ナイチンゲール(赤也)
「はい、膝見せて」
いつもはどっかフワフワしててど天然な先輩が今は別人だ。右手にマキロン、左手にガーゼを持って俺を追い詰めてくる。
「早くしないとバイ菌入っちゃうよ」
「わぁーってますって!今、心の準備してんの」
「そんなに恐がることかなぁ」
「恐がってんじゃなくて、ビビってんの!」
「え?それ同じ事だよ、赤也くん」
やれやれ、と言った顔で先輩はベンチに座った。いつまでもやってらんないから、俺も観念して向き合うように椅子に座る。
発端は今から十数分前。テニスの練習中に怪我した……わけじゃなく、部室につく目前の階段で。3段飛ばしで身軽にかけ降りてたんだけど、最後の1段を失敗したというだせぇ結末。コンクリートの上に転げ落ちた時点で、これまずいなとは思ったんだけど。俺がすっ転ぶのをちょうど目撃してた副部長に、試合に支障をきたすなたわけ者、ってグーパンされた(こっちの方がきたすっつーの)。その後萎え萎えで部室に入ったら、先輩がもう救急箱を持って待ち構えてた。
「大丈夫?」
って言われて初めて自分の膝見たら、擦りむけ皮剥け血だらけでなかなかヤバい感じになってた。気付いた途端に痛くなるから不思議だよな。
「はい、傷見せて」
「ういっ……ス」
「じゃあ消毒液かけるね」
「痛い?痛くない?」
「大丈夫、最初だけだから」
「いや答えになってねぇ」
俺がなんでさっきからこんなにビビってるのかというと。
「うおっ!ちょ、もういいんじゃない!?」
「動かないで、また血が出てきちゃう」
「だってもうびっしゃびしゃッスよ!こんなにかけなくてもよくない!?」
ドリンクも旨いし洗濯も綺麗だし毎日のルーティンも完璧なのに。この人は傷の手当てがイマイチ……なんだよなぁ。だったら怪我しなきゃいい話なんだけど。
「あんまり派手な動きしないようにね。もうすぐ大会もあるんだから」
「……へーい」
手当てしてもらってコートに行くと、両膝ぐるぐる巻きにされた俺を見て、丸井先輩に泣くほど大爆笑された。めっちゃムカついたからケツにスマッシュぶつけてやったわ。