a little story
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061伝えるきっかけ(切原)
良いんだか悪いんだかここまで親しい仲になるとさ、思ってること素直に言えなくなってくるわけ。
けど、肝心なことはちゃんと言葉にして伝えてほしい、って、アンタは言うだろ?
そーゆうの、俺、得意じゃないって知ってるくせに。なんで女って好きとか言われないと不安がるかね?そんなに俺って信用できない?
……あーハイハイ分かりましたよ。ったく。
つーか、ただ言うだけじゃん、って何。そんな軽い感じで言ってほしいわけ?あのさ、いつも言い慣れてるわけじゃないんだからそんなオテガル感覚で強要してくんなっつうの。
言い慣れてねーよ、当たり前だろ。そんなの、誰彼かまわず言うもんじゃねぇし。つか、もしそうだったらアンタ傷つくっしょ?
もーいいや。
じゃあ言うよ?
アンタが好き。アンタの代わりは誰もいない。だからずっと大事にしたいと思ってる。
これで分かってくれた?……って、何その顔。なんでそこで泣くわけ。言えってすごんできたくせになんでそうなるんだよ。
はーあ。やっぱオンナゴコロって分かんね。いや別に、言って損したなんて思っちゃいねーけど。だってホントのことだし。けどここは喜んで笑うとこだろが。俺が泣かせたみたいじゃんかよ。……え?嬉し涙?分かりづらっ。
まーいーや。腹減ったからなんか食いに行こうぜ。泣かしたお侘びに好きなもん奢りますよ、おじょーさん。
062最後のチャンス(不二)
“考えない”って思うことは最早考えてるようなものなんだな。頭の中からキミが消えてくれない。浮かんでくる考えは後悔ばかり。もう少し早く話し合えたら、とか、あの時ちゃんと聞いてあげてたら、とか。そうなる前にどうして僕はキミの声をちゃんと聞いてあげられなかったんだろうか。キミが僕にくれたいろんなものの、せめて半分程度は何か返せていただろうか。後悔してもしきれないよ。いつでも僕は貰ってばかりだった。愛とか優しさとか、かたちのないものばかりをいつも。
今ならまだ間に合うのかな。ごめんとありがとうと愛してるをどうしても伝えたくて指先1つでキミの番号を表示させる。出てくれるかな。まだ僕のこと、見捨てちゃいないと願うしかない。心臓だけがうるさい中、10コールほど鳴ったあとに懐かしいキミの声が応答した。
『……もしもし』
「ごめん」
開口一番謝るのもどうかと思ったけど。今の僕のありのままの気持ちを伝えさせてくれないか。勿論、謝罪だけじゃない。キミに伝えたいことは両手じゃ数え切れないほど沢山ある。今になってそれに気づいた。本当に馬鹿だよね、僕って。
『……どうしたの?』
「ありがとう、愛してる」
『なんなの……もう』
一方的に言われたキミはきっと電話の向こうで面食らってる。この期に及んで一体何なの。そんなふうに思われても仕方が無い。薄っぺらい5文字じゃそんな簡単には伝わらないよな。今すぐ会って抱き締めたいよ。キミのこと、もう傷つけないって誓うから。
「今から会えないかな」
情けでもなんでもいい。だからどうか、お願いだ。僕にもう一度チャンスを。
063たまには(幸村)
おかえり。
コート脱いでおいで。一緒にご飯食べよう。
え?そうだよ?たまには俺だって家のことやるよ。……って言っても少し作っただけで、料理の半分はウーバーさんに頼りました。
いいのいいの。君の仕事を減らすことが目的だから。たまにはゆっくり話そうよ。ご飯食べてさ、お風呂入ったら一緒に映画見ない?ほら、こないだ見たいねって話してたやつ。たまには映画鑑賞するのもいいかなーって。ツマミとワインも買っといたよ。君が好きな銘柄。なかなか見つからなくてふた駅隣の店まで行っちゃったよ。まあ、たまにはこんなのもいいかなって。
なんだか、“たまには”なことが意外とあるもんだね。いつもの日常が当たり前のように思えてしまってるのかもしれない。幸せに慣れすぎるってあんまり良くないと思うんだよね、俺は。普通に暮らしてると有り難みをついつい忘れかけてしまうから。でも、だからって幸せが減るのは嫌だよ。むしろ君との時間は今以上に増やしたい。君の笑顔は見慣れちゃってるけど、君が笑うたびに幸せ感じてるのは今も同じだよ。いつもありがとう。たまには、感謝の気持ちを言葉にして伝えないとね。あ、また“たまには”だ。
え?それはたまにじゃなくて毎日でいい?なんでさ。たまに言うから嬉しいんじゃないの。
毎日聞きたいって、それはどうしようかなあ。愛の言葉は、“たまには”でいいじゃない?そのほうが新鮮さを保てるよ?だって、毎日ありがとうと愛してるを言うのはいくら俺でも……そりゃ恥ずかしいよ。やっぱりたまにでいいんじゃない?