淡恋と夏の大三角
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
土曜日の夕方。琴璃とは駅前で待ち合わせをし、電車に乗って隣の駅で降りた。いつもの、星を観測した小高い丘がある駅だ。だからてっきりまたあの丘に行くのかと思ったのに。
「違うの。今日はこっち」
「へ?」
琴璃はいつもとは反対の改札出口を指差し進んでゆく。丸井はその改札から外に出たことがなかった。というか、もともとこの駅であまり降りたりしないので、改札が2つあることすら気にしたことがなかった。
線路にそって歩くこと数十メートル先に、1軒のファミレスが建っていた。いつも琴璃と行っていたチェーン店とは別のもの。こんなとこにもあるんだなぁと思いながら歩いていたら、まさかの「ここです」と彼女が言うのでちょっと驚いた。とりあえず、今日呼び出した理由は課題の続きではないらしい。じゃあ、飯か?それならそうと言えばいいのに。
店に入り店員に通されて窓際の席に座る。世間的にはまだ夏休みのため、来店客は家族づれも多かった。琴璃はテーブル脇にセットされていたメニュー表を広げる。
「これを食べます」
と、彼女が見せてきた箇所はスイーツメニューのページで、指差したのはかき氷だった。この時期にだけ売り出している期間限定のメニューらしい。『夏のご褒美』という言葉がでかでかと描かれている。
「今日は、私の奢りだから遠慮しないでいいから」
「つうかよ、んなことより」
「いちごと抹茶とレモンとメロン、どれにする?」
「いや、聞けよ藤白」
「ほら、もうボタン押したから店員さん来るよ。決められないなら私が決めちゃうからね」
「メロンで」
丸井の即答の直後に店員が2人のもとへやって来た。
「お待たせいたしました。ご注文をお伺いします」
「メロンといちごのかき氷を1つずつ。あと……どりばもください。2つ」
ちょっと恥ずかしそうに注文をする琴璃。店員が下がると丸井を置いてさっさとドリンクバーコーナーへ行ってしまった。
「あいつ……」
どういうつもりなのか聞く暇さえ与えてくれなかった。つまりは、聞くなということか。分からないけど、とりあえず丸井も飲み物をとりに立ち上がる。琴璃がいろいろ目移りしてる隣で自分はジンジャーエールを選択して席に戻る。丸井が先に席に戻っても彼女はまだ悩んでいた。その横顔が、真剣な眼差しだったもんだから思わずひとりで笑ってしまった。なかなかドリンクバーを気に入っているようだ。だが、店員にまで略語で言わなくてもいいんだぜと後でこっそり教えてやろうと思った。
ほどなくして2人のテーブルにはこんもりとした氷の山ふたつが運ばれてきた。丸井が頼んだかき氷には大きくカットされたメロンが乗っている。琴璃の頼んだものにも、いちごと練乳のソースが皿から垂れ落ちそうなほどかかっていた。揃って甘いものが好きな2人は勝手に口角が上がってしまう。
「うんめぇ~」
「うん、美味しい」
「なんだよ藤白。うまいんならもっと感動しろよ」
「これでも充分感動してるんだけど」
「そうか?やたらクールにしてるふうに見えるぞ」
「丸井くんと違って、私は静かに美味しさを噛みしめてるの」
琴璃は顔色を変えることなく反論する。丸井はほっとした。可愛げの無い雰囲気がいつもの彼女である証拠である。そんな丸井の気持ちが伝わったのか、不意に琴璃が視線を丸井に向けた。
「こないだは急に取り乱したりしてごめんなさい。それと、丸井くん。大会お疲れ様」
琴璃のその言葉に丸井はパフェスプーンの手を止める。今の一言でなんとなく分かった。あの日のことや大会の結果を、こいつなりに色々考えてくれてたんだな、と。そして同時に仁王の話を思い出した。琴璃は実は決勝戦まで見に来てくれたこと。負けた結果に涙を流していたこと。テニスに興味なんてなかったのに、涙するくらい感情移入してくれたのか。聞きたかった。だけど琴璃はきっと、泣いた事実を指摘されてほしくないはずだ。だから丸井は黙っていた。折角の楽しい今の時間をぶち壊したくない。しんみりさせたくなくて、なるべく気丈に答えた。
「お前、最後の日も見に来てくれたんだな。まぁ、負けちまったんだけどよ」
「うん、でも、すごく感動したよ」
「そう言ってもらえるんならよかった。けど、ま、負けは負けだからな」
「そうかも……しれないけど」
やっぱりどうしても言葉尻に悔しさが滲む。負けたことの事実がどうしたって悔しい。
とうとう琴璃もスプーンを置くと、顔色を伺うように丸井を見つめてきた。その瞳が今にも泣きそうなくらいに大きく揺れていた。丸井は思わずたじろぐ。
「おいおい、もうそこまで引きずってねーって。悔しいけどしょうがねぇ。次の大会にぶつけるまでだ」
「うん……」
そのあとは2人でかき氷黙々と食べた。結構なサイズなのに、丸井はともかく琴璃も音を上げることなく最後まで完食した。いつの間にか太陽は沈んでいた。
今日は望遠鏡もないけど。帰りに、課題をやってた時みたいにまた、星を見ていかないか。
丸井の提案に琴璃は微笑んで了承した。ファミレスから今度は踏切を渡って反対側の道へ行く。今日も日中は暑く雲ひとつなかった。夜になった今も雲はなく、小さな瞬きがところどころに見えた。やっぱり肉眼じゃあまり分からないけれど、夏の大三角形はすぐに分かった。
「今日はね、大会お疲れ様ってことで丸井くんにごちそうしたかったんだよ。ほら、課題が終わった時も丸井くんが私にかき氷ごちそうしてくれたでしょ」
隣を歩く琴璃が口を開く。ここにきてようやく、今日呼び出した理由を打ち明けてくれた。そんなふうに考えてくれてたなんて思いも寄らず丸井は横を見る。
「マジ?優しいじゃんお前」
「それと、お礼も兼ねて」
「礼って、なんの礼だよ」
「丸井くんに根暗じゃないって言われて……嬉しかったから」
丘に着いた。なのに丸井は、星ではなく琴璃のことをずっと見つめていた。目の前の彼女はさっきから世話しなく瞬きを繰り返している。声は電話をかけてきてくれた時のように上ずっていた。ならあの時もきっと、電話の向こうではこんな顔をしてたんだな。こんな必死に、目をしばたかせて一生懸命言葉を見つけていたんだろうな。
「私のこと肯定してくれて嬉しかったの。初めてちゃんと友達ができたって思えたの。だから……ありがとう」
泣きそうな顔をして琴璃が言った。気持ちを素直に伝えるのが苦手な彼女が、真っすぐな思いを丸井にぶつけてきた。言葉と一緒に必死さと真剣さが同時に伝わってきた。彼女は自分を友達だと思っていることも。その事実を今知ったわけだが、どうにもそのことは腑に落ちなかった。それどころか、全力で否定したくて仕方ない。
「やだね」
「へっ」
「俺は、お前とは友達にはならない」
「丸井くん……」
もはや半べそ顔の琴璃に強く主張する。
「だって、友達じゃ好きになれねーじゃん」
「え」
「俺はお前のこと、もっと知りたいなって思う。お前のこと今よりもっと笑わせたり、喜ばせたいって思ってる。そんなのは別に、友達であってもできることだけどよ。けど……それじゃ嫌なんだよ」
琴璃と電話をしたあの後、丸井はひたすら考えていた。どうしてこいつのことを考えれば考えるほど、こんなに頭は冴えるんだ、と。答えが出ないまま会う日を迎えて、今日琴璃の優しさに触れた時。相当な難問だと思っていたが、今、答えが分かった。気持ちいいくらいに納得のいく、至ってシンプルな答えだった。
部活の休みの日を俺ではなくこっそり別の奴に聞き出して。こないだ格好つけてかき氷を奢ってやったことを彼女は覚えていて。今度は逆に同じことをして俺を元気づけようだなんて。可愛いこと考えてくれるじゃんか。
「俺は、何にも遠慮しないでお前に会いたい。何も理由がなくたって、夜に星見に行きたいし電話もしたい。こないだはお前からいきなり電話かかってきてマジでびっくりしたけど、それ以上に嬉しかった。一瞬、関東大会で負けた悔しさ飛んだくらいだぜ?」
「……丸井くん」
「だから俺、お前にすげー感謝してるし、お前のことがすげー好きなの」
「な、なんで?そんな、急に?」
「俺でも分かんねぇよ。けどさ、こーゆうのってさ、理屈とかじゃないんじゃねぇの?」
「まぁ、うん、そうだね……」
そこで話が途切れ微妙な沈黙が漂う。丸井は琴璃の顔を覗き込む。明らかに動転している表情だった。
「なんかもしかして俺、逃げ場塞いでる?」
「ううん、そんなことない。でも、うまく言葉が見つからなくて。……本当に私、自分の思ってることを口にするのがへたくそで」
「あー、それは俺も知ってるわ。そのくせ思ってもないことを言うもんな、お前って」
「うん……」
「別に、ぶつ切れでも言ってみりゃいいんじゃね?ああしたいこうしたいって、上手くなくても相手に伝われば問題ないだろ。伝えるのは、俺なんだし」
「うん……」
大げさと思えるくらい大きな深呼吸をしてから、琴璃は口を開いた。
「私も。丸井くんと課題以外で星見たり、ファミレスでご飯食べに行きたい。楽しくしゃべりたい。丸井くんがテニスしてるところ見たい。毎日電話したい」
「毎日?」
「……え、引いてる?」
「いんや。大歓迎」
丸井は笑って答えてやる。そこでようやく琴璃の顔色から緊張が消えた。ほっとしたように胸をなでおろし、
「えっと。じゃあ……これからも、よろしくお願いします」
そろりと右手を丸井の前に差し出してきた。それは握手の意味らしい。仰々しくて、でもそういうところがやっぱり彼女らしくて。丸井は思わずぶはっと笑ってしまった。
「そんなんで、いーの?」
「え?」
その右手を強く引っ張り、倒れ込んできた彼女を抱きしめる。案の定琴璃は感電したのかというほどに身体を強張らせた。こんな反応を見せるのは分かっていた。分かっていて敢えて、実行したのだ。これくらいなら意地悪にはならないだろ、と丸井は彼女に気付かれないようにこっそり笑う。
「ハグは友達のままじゃできないもんな」
好きな子ほどいじめたくなる、という感覚は成る程こういうものなのかとひとり納得する。そんな、幸せ絶頂な彼と恥ずかし気に俯く彼女の様子を、夏の星たちだけが宙から見ていた。
===============================================================
主人公の性格が思ってた以上に気難しくなってしまったのだが、丸井くんはそれさえも容易く取っ払っちゃうほどきらきらしてる男の子だと思う。彼氏になってくれ
「違うの。今日はこっち」
「へ?」
琴璃はいつもとは反対の改札出口を指差し進んでゆく。丸井はその改札から外に出たことがなかった。というか、もともとこの駅であまり降りたりしないので、改札が2つあることすら気にしたことがなかった。
線路にそって歩くこと数十メートル先に、1軒のファミレスが建っていた。いつも琴璃と行っていたチェーン店とは別のもの。こんなとこにもあるんだなぁと思いながら歩いていたら、まさかの「ここです」と彼女が言うのでちょっと驚いた。とりあえず、今日呼び出した理由は課題の続きではないらしい。じゃあ、飯か?それならそうと言えばいいのに。
店に入り店員に通されて窓際の席に座る。世間的にはまだ夏休みのため、来店客は家族づれも多かった。琴璃はテーブル脇にセットされていたメニュー表を広げる。
「これを食べます」
と、彼女が見せてきた箇所はスイーツメニューのページで、指差したのはかき氷だった。この時期にだけ売り出している期間限定のメニューらしい。『夏のご褒美』という言葉がでかでかと描かれている。
「今日は、私の奢りだから遠慮しないでいいから」
「つうかよ、んなことより」
「いちごと抹茶とレモンとメロン、どれにする?」
「いや、聞けよ藤白」
「ほら、もうボタン押したから店員さん来るよ。決められないなら私が決めちゃうからね」
「メロンで」
丸井の即答の直後に店員が2人のもとへやって来た。
「お待たせいたしました。ご注文をお伺いします」
「メロンといちごのかき氷を1つずつ。あと……どりばもください。2つ」
ちょっと恥ずかしそうに注文をする琴璃。店員が下がると丸井を置いてさっさとドリンクバーコーナーへ行ってしまった。
「あいつ……」
どういうつもりなのか聞く暇さえ与えてくれなかった。つまりは、聞くなということか。分からないけど、とりあえず丸井も飲み物をとりに立ち上がる。琴璃がいろいろ目移りしてる隣で自分はジンジャーエールを選択して席に戻る。丸井が先に席に戻っても彼女はまだ悩んでいた。その横顔が、真剣な眼差しだったもんだから思わずひとりで笑ってしまった。なかなかドリンクバーを気に入っているようだ。だが、店員にまで略語で言わなくてもいいんだぜと後でこっそり教えてやろうと思った。
ほどなくして2人のテーブルにはこんもりとした氷の山ふたつが運ばれてきた。丸井が頼んだかき氷には大きくカットされたメロンが乗っている。琴璃の頼んだものにも、いちごと練乳のソースが皿から垂れ落ちそうなほどかかっていた。揃って甘いものが好きな2人は勝手に口角が上がってしまう。
「うんめぇ~」
「うん、美味しい」
「なんだよ藤白。うまいんならもっと感動しろよ」
「これでも充分感動してるんだけど」
「そうか?やたらクールにしてるふうに見えるぞ」
「丸井くんと違って、私は静かに美味しさを噛みしめてるの」
琴璃は顔色を変えることなく反論する。丸井はほっとした。可愛げの無い雰囲気がいつもの彼女である証拠である。そんな丸井の気持ちが伝わったのか、不意に琴璃が視線を丸井に向けた。
「こないだは急に取り乱したりしてごめんなさい。それと、丸井くん。大会お疲れ様」
琴璃のその言葉に丸井はパフェスプーンの手を止める。今の一言でなんとなく分かった。あの日のことや大会の結果を、こいつなりに色々考えてくれてたんだな、と。そして同時に仁王の話を思い出した。琴璃は実は決勝戦まで見に来てくれたこと。負けた結果に涙を流していたこと。テニスに興味なんてなかったのに、涙するくらい感情移入してくれたのか。聞きたかった。だけど琴璃はきっと、泣いた事実を指摘されてほしくないはずだ。だから丸井は黙っていた。折角の楽しい今の時間をぶち壊したくない。しんみりさせたくなくて、なるべく気丈に答えた。
「お前、最後の日も見に来てくれたんだな。まぁ、負けちまったんだけどよ」
「うん、でも、すごく感動したよ」
「そう言ってもらえるんならよかった。けど、ま、負けは負けだからな」
「そうかも……しれないけど」
やっぱりどうしても言葉尻に悔しさが滲む。負けたことの事実がどうしたって悔しい。
とうとう琴璃もスプーンを置くと、顔色を伺うように丸井を見つめてきた。その瞳が今にも泣きそうなくらいに大きく揺れていた。丸井は思わずたじろぐ。
「おいおい、もうそこまで引きずってねーって。悔しいけどしょうがねぇ。次の大会にぶつけるまでだ」
「うん……」
そのあとは2人でかき氷黙々と食べた。結構なサイズなのに、丸井はともかく琴璃も音を上げることなく最後まで完食した。いつの間にか太陽は沈んでいた。
今日は望遠鏡もないけど。帰りに、課題をやってた時みたいにまた、星を見ていかないか。
丸井の提案に琴璃は微笑んで了承した。ファミレスから今度は踏切を渡って反対側の道へ行く。今日も日中は暑く雲ひとつなかった。夜になった今も雲はなく、小さな瞬きがところどころに見えた。やっぱり肉眼じゃあまり分からないけれど、夏の大三角形はすぐに分かった。
「今日はね、大会お疲れ様ってことで丸井くんにごちそうしたかったんだよ。ほら、課題が終わった時も丸井くんが私にかき氷ごちそうしてくれたでしょ」
隣を歩く琴璃が口を開く。ここにきてようやく、今日呼び出した理由を打ち明けてくれた。そんなふうに考えてくれてたなんて思いも寄らず丸井は横を見る。
「マジ?優しいじゃんお前」
「それと、お礼も兼ねて」
「礼って、なんの礼だよ」
「丸井くんに根暗じゃないって言われて……嬉しかったから」
丘に着いた。なのに丸井は、星ではなく琴璃のことをずっと見つめていた。目の前の彼女はさっきから世話しなく瞬きを繰り返している。声は電話をかけてきてくれた時のように上ずっていた。ならあの時もきっと、電話の向こうではこんな顔をしてたんだな。こんな必死に、目をしばたかせて一生懸命言葉を見つけていたんだろうな。
「私のこと肯定してくれて嬉しかったの。初めてちゃんと友達ができたって思えたの。だから……ありがとう」
泣きそうな顔をして琴璃が言った。気持ちを素直に伝えるのが苦手な彼女が、真っすぐな思いを丸井にぶつけてきた。言葉と一緒に必死さと真剣さが同時に伝わってきた。彼女は自分を友達だと思っていることも。その事実を今知ったわけだが、どうにもそのことは腑に落ちなかった。それどころか、全力で否定したくて仕方ない。
「やだね」
「へっ」
「俺は、お前とは友達にはならない」
「丸井くん……」
もはや半べそ顔の琴璃に強く主張する。
「だって、友達じゃ好きになれねーじゃん」
「え」
「俺はお前のこと、もっと知りたいなって思う。お前のこと今よりもっと笑わせたり、喜ばせたいって思ってる。そんなのは別に、友達であってもできることだけどよ。けど……それじゃ嫌なんだよ」
琴璃と電話をしたあの後、丸井はひたすら考えていた。どうしてこいつのことを考えれば考えるほど、こんなに頭は冴えるんだ、と。答えが出ないまま会う日を迎えて、今日琴璃の優しさに触れた時。相当な難問だと思っていたが、今、答えが分かった。気持ちいいくらいに納得のいく、至ってシンプルな答えだった。
部活の休みの日を俺ではなくこっそり別の奴に聞き出して。こないだ格好つけてかき氷を奢ってやったことを彼女は覚えていて。今度は逆に同じことをして俺を元気づけようだなんて。可愛いこと考えてくれるじゃんか。
「俺は、何にも遠慮しないでお前に会いたい。何も理由がなくたって、夜に星見に行きたいし電話もしたい。こないだはお前からいきなり電話かかってきてマジでびっくりしたけど、それ以上に嬉しかった。一瞬、関東大会で負けた悔しさ飛んだくらいだぜ?」
「……丸井くん」
「だから俺、お前にすげー感謝してるし、お前のことがすげー好きなの」
「な、なんで?そんな、急に?」
「俺でも分かんねぇよ。けどさ、こーゆうのってさ、理屈とかじゃないんじゃねぇの?」
「まぁ、うん、そうだね……」
そこで話が途切れ微妙な沈黙が漂う。丸井は琴璃の顔を覗き込む。明らかに動転している表情だった。
「なんかもしかして俺、逃げ場塞いでる?」
「ううん、そんなことない。でも、うまく言葉が見つからなくて。……本当に私、自分の思ってることを口にするのがへたくそで」
「あー、それは俺も知ってるわ。そのくせ思ってもないことを言うもんな、お前って」
「うん……」
「別に、ぶつ切れでも言ってみりゃいいんじゃね?ああしたいこうしたいって、上手くなくても相手に伝われば問題ないだろ。伝えるのは、俺なんだし」
「うん……」
大げさと思えるくらい大きな深呼吸をしてから、琴璃は口を開いた。
「私も。丸井くんと課題以外で星見たり、ファミレスでご飯食べに行きたい。楽しくしゃべりたい。丸井くんがテニスしてるところ見たい。毎日電話したい」
「毎日?」
「……え、引いてる?」
「いんや。大歓迎」
丸井は笑って答えてやる。そこでようやく琴璃の顔色から緊張が消えた。ほっとしたように胸をなでおろし、
「えっと。じゃあ……これからも、よろしくお願いします」
そろりと右手を丸井の前に差し出してきた。それは握手の意味らしい。仰々しくて、でもそういうところがやっぱり彼女らしくて。丸井は思わずぶはっと笑ってしまった。
「そんなんで、いーの?」
「え?」
その右手を強く引っ張り、倒れ込んできた彼女を抱きしめる。案の定琴璃は感電したのかというほどに身体を強張らせた。こんな反応を見せるのは分かっていた。分かっていて敢えて、実行したのだ。これくらいなら意地悪にはならないだろ、と丸井は彼女に気付かれないようにこっそり笑う。
「ハグは友達のままじゃできないもんな」
好きな子ほどいじめたくなる、という感覚は成る程こういうものなのかとひとり納得する。そんな、幸せ絶頂な彼と恥ずかし気に俯く彼女の様子を、夏の星たちだけが宙から見ていた。
===============================================================
主人公の性格が思ってた以上に気難しくなってしまったのだが、丸井くんはそれさえも容易く取っ払っちゃうほどきらきらしてる男の子だと思う。彼氏になってくれ
10/10ページ
