“Sakura-saku”
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ソファにかけたスーツの上着の胸ポケットが光っている。点滅はしばらく続き、やがて消えた。おそらく電話だ。こんな時間帯にかけてくるのは海外のほうだろうか。
時間と言えば果たして今は何時なのか。頭上に手を伸ばしベッドサイドの腕時計を取る。午前0時をゆうに過ぎていた。それを確認してから、跡部は視線を落とす。腕の中で琴璃が穏やかな寝息を立てていた。春といえどまだ夜半は冷え込む季節。剥き出しになっていた肩が寒そうだったから布団を引き上げてやる。反動で琴璃は少し身じろぎしたものの、起きそうにはなかった。
シングルベッドで2人で寝ているのに、不思議と窮屈だとは思わなかった。狭いのは確かだが隙間0センチなことがこの上なく心地良い。自分のものじゃない体温を感じることが、今は至極落ち着く。
跡部は音も立てず起き上がって服を着る。シャツのボタンを留めながら携帯を確認すると、やはり先ほどの着信は仕事の関係者だった。着信はそれだけじゃなく何件もきていた。
本当は、夜が明けるまで一緒にいてやりたかったがそうもいかない。電話の向こうの彼らはどんな時でも放っておいてくれない。皆それだけ跡部景吾に期待をし、指示を仰ぎ、成果を望んでいる。多くの人間に必要とされているから、仕方がない。
着替えてからも暫く琴璃の寝顔を眺めていた。でも跡部の熱い視線虚しく彼女は動く気配がなく変わらず眠っている。今日は会ってからずっと浮かない顔ばかりしていたけど、この日1番の穏やかな彼女の顔がそこにあった。これで少しは信用してくれただろうか。確かめたいがそろそろタイムリミットだ。琴璃の耳元でそっと囁く。
「琴璃、琴璃」
「…………」
跡部の呼びかけにゆっくりと琴璃の瞳が開かれた。
「大丈夫か」
でも反応が薄かった。具合が悪いのではなく、ただ単に起きたてで頭が働いていないようだった。もう一度跡部が大丈夫かと聞くと、緩いながらも頭を縦に傾けた。
「悪いな。仕事に戻るようだ。俺が出て行ったら鍵をかけろよ。そしたらゆっくり休め」
琴璃はゆるゆると上体を起こしただけで何も言わない。自分が裸なことにもまだ気づいていない。ぼーっとした顔で跡部のことを見返していた。
「どうした」
「夢じゃ、ないですよね」
そう言うと途端に琴璃は泣きそうに顔を歪めた。震えたせいで肩から毛布が落ちる。露わになっても気にすることなく跡部のことをじっと見つめてきた。
「何言ってやがるんだ、お前は」
「だって」
とうとう琴璃は泣き出した。目が覚めたら跡部がいたことが夢なのか現実なのか、まだ頭の中でちゃんと理解できていないらしい。それだけ琴璃の中では今夜のことが想像の範疇を超える出来事だった。色々と衝撃が大きすぎたのだ。
だとしても。
夢まぼろしにされてたまるかと思った。跡部は取り乱す琴璃の肩を抱き寄せ、そっと耳元に唇を寄せた。
「俺に抱かれたことを、無かったことにするなよ」
囁くように言う。琴璃の肩が面白いくらいにびくりとはねた。少しは目が覚めただろうか。だが、名残惜しいとどれだけ感じても時は止まってはくれない。本当に、出来ることならこの夜は一緒にいたかった。けれどやはり、どうしても、立場上そうもいかないのだ。
「まだこんな時間だ。俺が帰ったらお前はまた寝てろ。いいな?」
「あの」
「どうした」
「また……連絡してもいいですか」
何を言い出すかと思えば。まだ夢なんじゃないかと1ミリくらいは疑っている。そんな、不安げな顔だった。離れたくないと思わせるには十分な表情を琴璃は見せる。もどかしい。独りにさせるのが心底辛い。離れる前に最後にもう一度ぎゅっと抱きしめてやった。ありったけの気持ちを込めて。これは夢じゃないと、俺はここに居ると伝わるように。
「いつでもしてこい」
今日だけは、仕事を恨まないわけにはいかなかった。後ろ髪を引かれる気持ちで彼女の部屋を出た。3月になってもまだ夜更けの外はとても寒かった。
真夜中の首都高は比較的運転しやすい。自分以外の車は数台しか走っていなかった。
マンションに着いたら早速Web会議の続きだろう。休む暇なんてない。さっきまで甘い時間を過ごしていたのに、もう現実に引き戻されてしまう。その温度差が激しすぎて、まるで先程の出来事は夢なのかと思いたくなる程。だから琴璃の気持ちも分からなくはない。
何故、あんなにも自分と居る時間を夢じゃないかと疑うのか。少しだけ疑問に思ったけれど、それだけ琴璃にとっては日常とかけ離れすぎていて、大切で手の届かないものだと思っていたからだ。ある種自分は有名人みたいな位置にいるのだから。そんな人間と、憧れ程度だった気持ちから恋愛の相手にまで一気に距離を詰められたら、疑ってかかるのも仕方のないことではある。琴璃は浮かれて媚びてくるような女達とは全然違うことは分かっていた。けれど、ここまで用心深い性格なのもまた稀に見る人間だ。過去に相当ひどい恋愛をしたのかとも思ったが、多分、彼女の場合はその逆で恋愛の経験値がほとんど無い。なのに、いきなりその相手が生き方がまるで違うような人間では、必要以上に不審がるのも否めない。
マンションの地下駐車場に車を停めた時、ちょうど携帯がメッセージを受信した。琴璃からだった。早速来た連絡に跡部の口角が上がる。
『まだ着いてないですよね?』
文章はこれだけ。流石にいくら跡部でもこれだけでは彼女の言わんとしていることが推し量れなかったからそのまま折返しかける。
『もしもし』
「なんだ、早速もう夢かもしれないと不安になったか」
『いえ……あれ、運転中じゃないんですか?』
「今着いた」
跡部は携帯を耳に当てながら車を降りる。静まり返った地下に自分の足音だけが響く。
「それとも、もう俺に会いたくなったか」
『いえあの、そうじゃなく……は、ないんですけど』
もうだいぶん、別れる間際よりも琴璃は落ち着きを取り戻していた。跡部の揶揄いにもちゃんと反応をする。もう会いたい気持ちはあれど、どうやら琴璃の本当の用件は別にあるらしい。
『さっき、ポスト見たら郵便がきてて』
電話の向こうでカサカサという音が聞こえた。ついでに、琴璃の声音がもうワントーン上がる。さっきと比べて明らかに嬉しそうだ。
『こないだ最終選考まで進んだ企業から内定もらえました。よかったぁ』
あぁきっと。今の彼女は満面の笑顔で、なんなら今飛び跳ねでもしているんだろうか。内定を手にした嬉しさを共有したくて、それで連絡を寄越してきたのだ。
「良かったじゃねぇか。お前の日頃の努力が実を結んだんだな」
『はい!』
深夜の打ち合わせに少なからずうんざりしていたのに。琴璃の嬉しげな気持ちが伝染して穏やかな気分になる。電話ひとつで気分が良くなることなど早々無い。
琴璃は今まさに部屋の中を駆け回る勢いで喜んでいるに違いない。そんな想像が容易く浮かんだ。けど、まさかまだ裸のままじゃねぇだろうな。あり得る話だと思った。証拠に、琴璃が電話の向こうでタイムリーにくしゃみをした。着替えるのも忘れるくらい嬉しくて、それで思わず連絡をしてきたんだろう。でもいきなり電話じゃ運転しているかもしれないし悪いと思ってメッセージを送ってきた、といったところか。手に取るように一連の動作と思考が読める。単純明快すぎて笑ってしまいたくなるほどに。実際に笑っていたらしい。どうしたんですか?、と琴璃が聞いてきた。
『跡部さん?どうかしたんですか』
「なんでもねぇよ」
『でもなんか、今笑ってましたよね?』
「あぁ、そうだな」
高層階専用のエレベーターに乗る。地上からぐんぐん引き上げられてゆく。その箱の中から見下ろす東京の街は、深夜1時を過ぎてもそこら中に灯りが溢れていた。何故か今日だけは、見慣れた夜の景色が素直に美しいと思える。綺麗なものは見飽きたはずなのに不思議と今日は新鮮に目に映る。きっと隣に琴璃がいたのなら、声に出しても綺麗だと言っていたかもしれない。美しいものを見て、当たり前でなくいつまでも美しいと思えること。それは大事な感性だと思う。きっとこの先、彼女のそばにいるとそう感じる時が沢山訪れる。そんな気がする。
「どうやら俺の方らしい」
『え?』
「もうお前に会いたくなった」
彼女に聞いておいて、会いたくなったのは自分の方だった。数十分前まで抱き合っていたのに、どうして今こんなに触れたいと思うのか。不思議な感情。未だ嘗て感じたことはないから、悔しいというよりも寧ろ、きっとこれは嬉しいという感情に近いのだろう。嬉しくて、それでいて恋しい。
電話の向こうで琴璃が焦っているのが分かる。自分の言葉に大袈裟なほどに反応をする彼女。その動揺して真っ赤になっている顔に今すぐ触れられたなら。朝が来るまでずっと抱き締めていられたのなら良かったのに。欲をあげるならば幾らでも出てくる。それも愛しさ故なのか。
「暖かくしてよく休めよ」
真っ黒い空に浮かぶ月が綺麗だった。
おやすみ、と言うとやや上ずった声で同じ言葉が返ってきた。幸せな夜だと思った。
時間と言えば果たして今は何時なのか。頭上に手を伸ばしベッドサイドの腕時計を取る。午前0時をゆうに過ぎていた。それを確認してから、跡部は視線を落とす。腕の中で琴璃が穏やかな寝息を立てていた。春といえどまだ夜半は冷え込む季節。剥き出しになっていた肩が寒そうだったから布団を引き上げてやる。反動で琴璃は少し身じろぎしたものの、起きそうにはなかった。
シングルベッドで2人で寝ているのに、不思議と窮屈だとは思わなかった。狭いのは確かだが隙間0センチなことがこの上なく心地良い。自分のものじゃない体温を感じることが、今は至極落ち着く。
跡部は音も立てず起き上がって服を着る。シャツのボタンを留めながら携帯を確認すると、やはり先ほどの着信は仕事の関係者だった。着信はそれだけじゃなく何件もきていた。
本当は、夜が明けるまで一緒にいてやりたかったがそうもいかない。電話の向こうの彼らはどんな時でも放っておいてくれない。皆それだけ跡部景吾に期待をし、指示を仰ぎ、成果を望んでいる。多くの人間に必要とされているから、仕方がない。
着替えてからも暫く琴璃の寝顔を眺めていた。でも跡部の熱い視線虚しく彼女は動く気配がなく変わらず眠っている。今日は会ってからずっと浮かない顔ばかりしていたけど、この日1番の穏やかな彼女の顔がそこにあった。これで少しは信用してくれただろうか。確かめたいがそろそろタイムリミットだ。琴璃の耳元でそっと囁く。
「琴璃、琴璃」
「…………」
跡部の呼びかけにゆっくりと琴璃の瞳が開かれた。
「大丈夫か」
でも反応が薄かった。具合が悪いのではなく、ただ単に起きたてで頭が働いていないようだった。もう一度跡部が大丈夫かと聞くと、緩いながらも頭を縦に傾けた。
「悪いな。仕事に戻るようだ。俺が出て行ったら鍵をかけろよ。そしたらゆっくり休め」
琴璃はゆるゆると上体を起こしただけで何も言わない。自分が裸なことにもまだ気づいていない。ぼーっとした顔で跡部のことを見返していた。
「どうした」
「夢じゃ、ないですよね」
そう言うと途端に琴璃は泣きそうに顔を歪めた。震えたせいで肩から毛布が落ちる。露わになっても気にすることなく跡部のことをじっと見つめてきた。
「何言ってやがるんだ、お前は」
「だって」
とうとう琴璃は泣き出した。目が覚めたら跡部がいたことが夢なのか現実なのか、まだ頭の中でちゃんと理解できていないらしい。それだけ琴璃の中では今夜のことが想像の範疇を超える出来事だった。色々と衝撃が大きすぎたのだ。
だとしても。
夢まぼろしにされてたまるかと思った。跡部は取り乱す琴璃の肩を抱き寄せ、そっと耳元に唇を寄せた。
「俺に抱かれたことを、無かったことにするなよ」
囁くように言う。琴璃の肩が面白いくらいにびくりとはねた。少しは目が覚めただろうか。だが、名残惜しいとどれだけ感じても時は止まってはくれない。本当に、出来ることならこの夜は一緒にいたかった。けれどやはり、どうしても、立場上そうもいかないのだ。
「まだこんな時間だ。俺が帰ったらお前はまた寝てろ。いいな?」
「あの」
「どうした」
「また……連絡してもいいですか」
何を言い出すかと思えば。まだ夢なんじゃないかと1ミリくらいは疑っている。そんな、不安げな顔だった。離れたくないと思わせるには十分な表情を琴璃は見せる。もどかしい。独りにさせるのが心底辛い。離れる前に最後にもう一度ぎゅっと抱きしめてやった。ありったけの気持ちを込めて。これは夢じゃないと、俺はここに居ると伝わるように。
「いつでもしてこい」
今日だけは、仕事を恨まないわけにはいかなかった。後ろ髪を引かれる気持ちで彼女の部屋を出た。3月になってもまだ夜更けの外はとても寒かった。
真夜中の首都高は比較的運転しやすい。自分以外の車は数台しか走っていなかった。
マンションに着いたら早速Web会議の続きだろう。休む暇なんてない。さっきまで甘い時間を過ごしていたのに、もう現実に引き戻されてしまう。その温度差が激しすぎて、まるで先程の出来事は夢なのかと思いたくなる程。だから琴璃の気持ちも分からなくはない。
何故、あんなにも自分と居る時間を夢じゃないかと疑うのか。少しだけ疑問に思ったけれど、それだけ琴璃にとっては日常とかけ離れすぎていて、大切で手の届かないものだと思っていたからだ。ある種自分は有名人みたいな位置にいるのだから。そんな人間と、憧れ程度だった気持ちから恋愛の相手にまで一気に距離を詰められたら、疑ってかかるのも仕方のないことではある。琴璃は浮かれて媚びてくるような女達とは全然違うことは分かっていた。けれど、ここまで用心深い性格なのもまた稀に見る人間だ。過去に相当ひどい恋愛をしたのかとも思ったが、多分、彼女の場合はその逆で恋愛の経験値がほとんど無い。なのに、いきなりその相手が生き方がまるで違うような人間では、必要以上に不審がるのも否めない。
マンションの地下駐車場に車を停めた時、ちょうど携帯がメッセージを受信した。琴璃からだった。早速来た連絡に跡部の口角が上がる。
『まだ着いてないですよね?』
文章はこれだけ。流石にいくら跡部でもこれだけでは彼女の言わんとしていることが推し量れなかったからそのまま折返しかける。
『もしもし』
「なんだ、早速もう夢かもしれないと不安になったか」
『いえ……あれ、運転中じゃないんですか?』
「今着いた」
跡部は携帯を耳に当てながら車を降りる。静まり返った地下に自分の足音だけが響く。
「それとも、もう俺に会いたくなったか」
『いえあの、そうじゃなく……は、ないんですけど』
もうだいぶん、別れる間際よりも琴璃は落ち着きを取り戻していた。跡部の揶揄いにもちゃんと反応をする。もう会いたい気持ちはあれど、どうやら琴璃の本当の用件は別にあるらしい。
『さっき、ポスト見たら郵便がきてて』
電話の向こうでカサカサという音が聞こえた。ついでに、琴璃の声音がもうワントーン上がる。さっきと比べて明らかに嬉しそうだ。
『こないだ最終選考まで進んだ企業から内定もらえました。よかったぁ』
あぁきっと。今の彼女は満面の笑顔で、なんなら今飛び跳ねでもしているんだろうか。内定を手にした嬉しさを共有したくて、それで連絡を寄越してきたのだ。
「良かったじゃねぇか。お前の日頃の努力が実を結んだんだな」
『はい!』
深夜の打ち合わせに少なからずうんざりしていたのに。琴璃の嬉しげな気持ちが伝染して穏やかな気分になる。電話ひとつで気分が良くなることなど早々無い。
琴璃は今まさに部屋の中を駆け回る勢いで喜んでいるに違いない。そんな想像が容易く浮かんだ。けど、まさかまだ裸のままじゃねぇだろうな。あり得る話だと思った。証拠に、琴璃が電話の向こうでタイムリーにくしゃみをした。着替えるのも忘れるくらい嬉しくて、それで思わず連絡をしてきたんだろう。でもいきなり電話じゃ運転しているかもしれないし悪いと思ってメッセージを送ってきた、といったところか。手に取るように一連の動作と思考が読める。単純明快すぎて笑ってしまいたくなるほどに。実際に笑っていたらしい。どうしたんですか?、と琴璃が聞いてきた。
『跡部さん?どうかしたんですか』
「なんでもねぇよ」
『でもなんか、今笑ってましたよね?』
「あぁ、そうだな」
高層階専用のエレベーターに乗る。地上からぐんぐん引き上げられてゆく。その箱の中から見下ろす東京の街は、深夜1時を過ぎてもそこら中に灯りが溢れていた。何故か今日だけは、見慣れた夜の景色が素直に美しいと思える。綺麗なものは見飽きたはずなのに不思議と今日は新鮮に目に映る。きっと隣に琴璃がいたのなら、声に出しても綺麗だと言っていたかもしれない。美しいものを見て、当たり前でなくいつまでも美しいと思えること。それは大事な感性だと思う。きっとこの先、彼女のそばにいるとそう感じる時が沢山訪れる。そんな気がする。
「どうやら俺の方らしい」
『え?』
「もうお前に会いたくなった」
彼女に聞いておいて、会いたくなったのは自分の方だった。数十分前まで抱き合っていたのに、どうして今こんなに触れたいと思うのか。不思議な感情。未だ嘗て感じたことはないから、悔しいというよりも寧ろ、きっとこれは嬉しいという感情に近いのだろう。嬉しくて、それでいて恋しい。
電話の向こうで琴璃が焦っているのが分かる。自分の言葉に大袈裟なほどに反応をする彼女。その動揺して真っ赤になっている顔に今すぐ触れられたなら。朝が来るまでずっと抱き締めていられたのなら良かったのに。欲をあげるならば幾らでも出てくる。それも愛しさ故なのか。
「暖かくしてよく休めよ」
真っ黒い空に浮かぶ月が綺麗だった。
おやすみ、と言うとやや上ずった声で同じ言葉が返ってきた。幸せな夜だと思った。