I can't stop falling in love.
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跡部はそう言って、座っているソファから琴璃のいるベッドの方へと移動した。琴璃は退こうと思ってベッドの真ん中から端っこに座り直した。
「なんでそんな端に座るんだよ」
「だって、」
跡部は自分の座ったすぐ隣をぽんと叩いて促す。おずおず寄ってきた琴璃の肩を引き寄せる。そして、今度こそ正面から琴璃の身体を抱き締めた。琴璃はもう抵抗しなかった。そのまま持ち上げて自分の膝の上に座らせた。
「ひゃ」
「そうだろうとは思っていたが、やっぱり軽いな」
「そんなこと、ないとは思うんですけど……」
加減を間違えたら折れそうだ。落ち着かない彼女の顔を下から覗き込んだ。まだ少し物憂げな顔をしている。
「そろそろ笑えよ」
「は……はい」
と言って、見せてきたのはなんともぎこちない笑顔だった。まあこんな状況で笑うのもなかなか難しいか。今の琴璃の体勢は、ベッドの上で跡部に抱え上げられ、腰に手をまわされ、トドメと言わんばかりに上目遣いで見つめられている。そんな中で微笑む余裕はなかった。跡部の青い瞳の中に、素振りの落ち着かない己の姿が映っている。これはまた夢なのか。判断がつかずぼーっと見てしまっていた。はっと気づいた時、青い瞳はもうすぐそこにあった。
「なんてツラしてんだ」
言った後徐ろに跡部は琴璃の唇を塞ぐ。最初の時よりも優しくてちょっと深いキスをしながら跡部は琴璃の髪を梳くように撫でた。その動作に反応して琴璃から切ない声が漏れる。
「っ、んぅ――」
唇が離れてから見た琴璃の顔は少し上気していた。潤んだ瞳で跡部を見つめている。いつもの、少しあどけなさの残る表情ではなくて、今はちゃんと女の顔をしていた。扇情的で、跡部の気を駆り立てるには充分だった。
「あんまり煽るなよ」
「ち、ちが」
無駄だと言うのに必死に琴璃は跡部の胸を押し返す。泣きそうな顔で、尋常じゃない数のまばたきをしながら、まるで追い詰められた獲物のような目をしているではないか。その様子が可笑しすぎて跡部は吹き出してしまった。
「安心しろ」
「へ」
「お前がそんなにビビってるのに容易く手を出したりしねえよ」
自分の上から琴璃を下ろしてから、ぽんと彼女の頭の上に手を置く。反対の手で腕時計を見た。もうすぐ深夜と呼ばれる時間帯になる。思ったより長居してしまった。
「もう大分いい時間だな。今日は疲れただろう。なるべく早く寝ろよ」
今日のところは帰ろうと、立ち上がろうとしたその時だった。
「出されたいっ」
「ッグ」
琴璃が、跡部のネクタイを思いきり引っ張った。そのせいで重力に負けて跡部は後ろに倒れ込む。琴璃を潰しはしなかったが、なかなかの力で不意打ちすぎたせいもあって2人諸共にベッドに倒れ込んだ。
「……お前なァ」
「ごごごめんなさい、大丈夫ですか?」
「首がイカレたかと思った」
「すいません……」
跡部は後頚部を押さえながら起き上がる。
「夢だと思ってたんです」
静かな部屋の中で声が控えめに響く。跡部は隣を見た。琴璃がまた浮かない表情に戻っていた。
「跡部さんに会えたことも全部夢なんだって。だからいつかは醒めるから、夢は醒めるものだから、本気にしちゃいけないって。でも、分かってても夢ならまだ醒めないでって思う自分がいて。もう少しこの夢を見てたいなって、時間が経つにつれてどんどんそう思っちゃって」
琴璃の目に再び光るものが見えだす。
「友達にも散々、跡部さんは琴璃とは住む世界が違う人だよって、傷つく前に離れなよって言われて。でもそんなこと、できなくて。なのに、赤いリップを見つけた時、今度は夢なら醒めてって思っちゃったんです。……信じたくなくて」
夢を見たいのか夢から醒めたいのか。どっちなのかも最早分からない状態だった。夢と現実の狭間で、琴璃の気持ちはいつも揺れ動いていた。
「まだお前は、今は夢の中だと思っているのか?」
「……そうなの、かも。でも正直、今は頭の中がぐるぐるしてて追いつかないです」
「なら俺は、これが夢じゃないとお前に教えてやれば良いんだな?」
こくりと頷く琴璃。そこに迷いはなかった。しかしこんな様子の琴璃を抱いてもいいものか。ついさっきまで気持ちが不安定で泣いていたというのに。琴璃がそれを望んでいるとしても、決して勢いや感情任せでそんなふうに扱いたくない。心優しい彼女だからこそ、大事にしたい。
「お前は俺に、もうガキじゃないと言う。俺ももうお前を子供扱いしない。だからお前にキスをした。結果、もっとお前が欲しいと思った。だがお前はこれが夢じゃないかと疑い、否定しようとしている」
「否定とか、そんな」
「証拠に今日はちっとも笑いやしねぇ。俺に会えて嬉しいんじゃないのか?」
「嬉しいけど……その、会ってていいのかな、って思っちゃう」
「それは少なからずまだ夢だと疑ってやまないからだろう」
琴璃は黙ってしまう。跡部の言う通りだと自覚した。
「ならば、これは夢じゃないと俺がちゃんと教えてやる。さっき、俺が帰ろうとしたのにお前は引き留めた。その意味とこの後の展開をお前はちゃんと分かっているな?」
「……私もう、子供じゃないんですから」
これまでずっと気弱な顔をしていた彼女が、今日初めて凛とした表情を見せた。“ 子供扱いしないで”。そう言ってる気がしたから跡部も敢えて追求しなかった。今もまた尋常じゃないほどのまばたきをしていることを。可愛いヤツ。それも思ったが、直接伝えるのは後でいいだろう。
跡部は腕時計を外しサイドテーブルに置いた。次いでネクタイを解いてスーツの上着を脱ぐ時、胸ポケットに入っているものをベッドサイドに置く。昼間、お節介の旧友から貰ったそれ。
「ったく」
余計な横槍だと思っていたが本当に使うことになるなんて。まさかあの男がこうなることを読んでいただなんて、どうしても認めたくない。
「まさかお前は持ってるわけねぇよな?」
「何をですか?」
「……ハ、想像通りの反応でほっとしたぜ」
「でも、あの」
思案していたら琴璃が跡部に耳打ちしてきた。2人の他には誰も居ないと言うのに跡部にしか聞こえないようひそひそと話す。琴璃のその内緒話を聞かされて、跡部は特にリアクションすることなく、ただ「そうか」とだけ言った。
「……それだけ、ですか」
怪訝な顔で琴璃が跡部に問う。
「もっと、なんか思わないですか」
「例えば?」
「……めんどくさいとか、思ったりしないのかなって」
まあ確かに豪語する内容ではないが。そうだろうと思っていたから別に何ら驚くこともなかったのが本音だ。
「面倒くさい、ねぇ」
呟きながら跡部は、落ち着かない琴璃の頬に手を滑らせる。琴璃の挙動不審さに拍車がかかる。
「俺としちゃ、お前がさっきのように未だ見たことのない顔をするのが愉しみではあるな」
跡部のその言葉を聞いて、琴璃の丸い瞳がより一層大きくなる。次第に、直視するのが恥ずかしくなり俯きたくなってしまう。それを跡部は許さない。琴璃は顎に手を添えられ上を向かされる。青い瞳からはもう、逃げられなかった。
「お前は何も考えなくていい。考えるくらいなら感じてろ」
ベッドサイドにあったリモコンを押す。部屋は暗闇に包まれた。
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⚠次話はR18的な内容になりますご注意ください。
NGな方は、すっ飛ばしてもらって大丈夫です。
「なんでそんな端に座るんだよ」
「だって、」
跡部は自分の座ったすぐ隣をぽんと叩いて促す。おずおず寄ってきた琴璃の肩を引き寄せる。そして、今度こそ正面から琴璃の身体を抱き締めた。琴璃はもう抵抗しなかった。そのまま持ち上げて自分の膝の上に座らせた。
「ひゃ」
「そうだろうとは思っていたが、やっぱり軽いな」
「そんなこと、ないとは思うんですけど……」
加減を間違えたら折れそうだ。落ち着かない彼女の顔を下から覗き込んだ。まだ少し物憂げな顔をしている。
「そろそろ笑えよ」
「は……はい」
と言って、見せてきたのはなんともぎこちない笑顔だった。まあこんな状況で笑うのもなかなか難しいか。今の琴璃の体勢は、ベッドの上で跡部に抱え上げられ、腰に手をまわされ、トドメと言わんばかりに上目遣いで見つめられている。そんな中で微笑む余裕はなかった。跡部の青い瞳の中に、素振りの落ち着かない己の姿が映っている。これはまた夢なのか。判断がつかずぼーっと見てしまっていた。はっと気づいた時、青い瞳はもうすぐそこにあった。
「なんてツラしてんだ」
言った後徐ろに跡部は琴璃の唇を塞ぐ。最初の時よりも優しくてちょっと深いキスをしながら跡部は琴璃の髪を梳くように撫でた。その動作に反応して琴璃から切ない声が漏れる。
「っ、んぅ――」
唇が離れてから見た琴璃の顔は少し上気していた。潤んだ瞳で跡部を見つめている。いつもの、少しあどけなさの残る表情ではなくて、今はちゃんと女の顔をしていた。扇情的で、跡部の気を駆り立てるには充分だった。
「あんまり煽るなよ」
「ち、ちが」
無駄だと言うのに必死に琴璃は跡部の胸を押し返す。泣きそうな顔で、尋常じゃない数のまばたきをしながら、まるで追い詰められた獲物のような目をしているではないか。その様子が可笑しすぎて跡部は吹き出してしまった。
「安心しろ」
「へ」
「お前がそんなにビビってるのに容易く手を出したりしねえよ」
自分の上から琴璃を下ろしてから、ぽんと彼女の頭の上に手を置く。反対の手で腕時計を見た。もうすぐ深夜と呼ばれる時間帯になる。思ったより長居してしまった。
「もう大分いい時間だな。今日は疲れただろう。なるべく早く寝ろよ」
今日のところは帰ろうと、立ち上がろうとしたその時だった。
「出されたいっ」
「ッグ」
琴璃が、跡部のネクタイを思いきり引っ張った。そのせいで重力に負けて跡部は後ろに倒れ込む。琴璃を潰しはしなかったが、なかなかの力で不意打ちすぎたせいもあって2人諸共にベッドに倒れ込んだ。
「……お前なァ」
「ごごごめんなさい、大丈夫ですか?」
「首がイカレたかと思った」
「すいません……」
跡部は後頚部を押さえながら起き上がる。
「夢だと思ってたんです」
静かな部屋の中で声が控えめに響く。跡部は隣を見た。琴璃がまた浮かない表情に戻っていた。
「跡部さんに会えたことも全部夢なんだって。だからいつかは醒めるから、夢は醒めるものだから、本気にしちゃいけないって。でも、分かってても夢ならまだ醒めないでって思う自分がいて。もう少しこの夢を見てたいなって、時間が経つにつれてどんどんそう思っちゃって」
琴璃の目に再び光るものが見えだす。
「友達にも散々、跡部さんは琴璃とは住む世界が違う人だよって、傷つく前に離れなよって言われて。でもそんなこと、できなくて。なのに、赤いリップを見つけた時、今度は夢なら醒めてって思っちゃったんです。……信じたくなくて」
夢を見たいのか夢から醒めたいのか。どっちなのかも最早分からない状態だった。夢と現実の狭間で、琴璃の気持ちはいつも揺れ動いていた。
「まだお前は、今は夢の中だと思っているのか?」
「……そうなの、かも。でも正直、今は頭の中がぐるぐるしてて追いつかないです」
「なら俺は、これが夢じゃないとお前に教えてやれば良いんだな?」
こくりと頷く琴璃。そこに迷いはなかった。しかしこんな様子の琴璃を抱いてもいいものか。ついさっきまで気持ちが不安定で泣いていたというのに。琴璃がそれを望んでいるとしても、決して勢いや感情任せでそんなふうに扱いたくない。心優しい彼女だからこそ、大事にしたい。
「お前は俺に、もうガキじゃないと言う。俺ももうお前を子供扱いしない。だからお前にキスをした。結果、もっとお前が欲しいと思った。だがお前はこれが夢じゃないかと疑い、否定しようとしている」
「否定とか、そんな」
「証拠に今日はちっとも笑いやしねぇ。俺に会えて嬉しいんじゃないのか?」
「嬉しいけど……その、会ってていいのかな、って思っちゃう」
「それは少なからずまだ夢だと疑ってやまないからだろう」
琴璃は黙ってしまう。跡部の言う通りだと自覚した。
「ならば、これは夢じゃないと俺がちゃんと教えてやる。さっき、俺が帰ろうとしたのにお前は引き留めた。その意味とこの後の展開をお前はちゃんと分かっているな?」
「……私もう、子供じゃないんですから」
これまでずっと気弱な顔をしていた彼女が、今日初めて凛とした表情を見せた。“ 子供扱いしないで”。そう言ってる気がしたから跡部も敢えて追求しなかった。今もまた尋常じゃないほどのまばたきをしていることを。可愛いヤツ。それも思ったが、直接伝えるのは後でいいだろう。
跡部は腕時計を外しサイドテーブルに置いた。次いでネクタイを解いてスーツの上着を脱ぐ時、胸ポケットに入っているものをベッドサイドに置く。昼間、お節介の旧友から貰ったそれ。
「ったく」
余計な横槍だと思っていたが本当に使うことになるなんて。まさかあの男がこうなることを読んでいただなんて、どうしても認めたくない。
「まさかお前は持ってるわけねぇよな?」
「何をですか?」
「……ハ、想像通りの反応でほっとしたぜ」
「でも、あの」
思案していたら琴璃が跡部に耳打ちしてきた。2人の他には誰も居ないと言うのに跡部にしか聞こえないようひそひそと話す。琴璃のその内緒話を聞かされて、跡部は特にリアクションすることなく、ただ「そうか」とだけ言った。
「……それだけ、ですか」
怪訝な顔で琴璃が跡部に問う。
「もっと、なんか思わないですか」
「例えば?」
「……めんどくさいとか、思ったりしないのかなって」
まあ確かに豪語する内容ではないが。そうだろうと思っていたから別に何ら驚くこともなかったのが本音だ。
「面倒くさい、ねぇ」
呟きながら跡部は、落ち着かない琴璃の頬に手を滑らせる。琴璃の挙動不審さに拍車がかかる。
「俺としちゃ、お前がさっきのように未だ見たことのない顔をするのが愉しみではあるな」
跡部のその言葉を聞いて、琴璃の丸い瞳がより一層大きくなる。次第に、直視するのが恥ずかしくなり俯きたくなってしまう。それを跡部は許さない。琴璃は顎に手を添えられ上を向かされる。青い瞳からはもう、逃げられなかった。
「お前は何も考えなくていい。考えるくらいなら感じてろ」
ベッドサイドにあったリモコンを押す。部屋は暗闇に包まれた。
===============================================================
⚠次話はR18的な内容になりますご注意ください。
NGな方は、すっ飛ばしてもらって大丈夫です。