独占欲
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「……あの。そろそろ勉強教えてほしいです」
今の今までずっとソファの上で抱き締められたままだった。ここに来た目的は仲直りだけどちゃんと勉強も教わる気でいた。
「勉強だぁ?お前、本気でやるつもりだったのかよ」
「本気だよ!でも、昼休みもうあと10分しかないよう」
なのに跡部は腕の力を解こうとしない。教えてくれると言ったくせに。彼にはもう全然その気がない。琴璃の申し出に背くようにぎゅっと抱き締める。
「断る。まだ全然、お前が足りない」
「なにそれ……もう」
「お前は1週間も俺を放ったらかしにしたんだ。ごめんと謝るくらいならその責任をとれよ」
いつの間にか普段の調子に戻っている。上から物を言うその姿勢は、普通の人だったら物怖じして怯んでしまいそうだ。けれど琴璃は普通じゃないから。特別な存在だから。彼女に高圧的に迫るのは決して嫌がらせじゃない。逆だ。彼女に甘えている時にこそこうなる。
「でも……これじゃドイツ語分かんないままだよ」
「Halte mich fest.」
「え?」
「Egal was kommt, ich werde dich nie verlassen.」
「……何て言ったの」
「ちょうどいい。勉強になるだろ?意味が答えられたら放してやるよ」
「えー分かんないよそんなの!難しすぎるってば」
「ま、分かったところでそうするんだが」
楽しげに口元をつり上げる跡部。琴璃は少しも笑えない。罰ゲームを受けているような気分だ。
「な、なんかヒント」
「さっき言ったぜ」
「え?」
「俺はお前にしか愛を囁かない」
そんなセリフを耳元で言われては平常心でいられない。しかもわざとウィスパーボイスで。これのどこがヒントになるのか琴璃にはちっとも分からなかった。けれど早く答えないと時間も無くなってしまう。
「えと、えと、愛の言葉なの?……好きだ、とか?あれ、でももっと長かったよね?さっきの言葉」
うんうん唸って絞り出した答え。当たっているとは思えない。そもそもこんなの当たるわけがない。だから琴璃は観念するしか選択はない。
「降参か?」
「しない、異議あり!」
「あん?」
「だって、愛の言葉なら、相手にちゃんと伝わらないと意味ないよね?これじゃ私に伝わらないよ」
だからノーカウントだよ、と抗ってみた。無理矢理な言い訳だけど筋は通っていると思ったから、跡部は腕の力を緩めた。
「成る程。お前の言うことは一理有るな」
「そうでしょ、だから、」
「なら別の手段を使うとしよう。ドイツ語が駄目なら、さて、どうやってお前の心に愛を刻もうか」
「えと」
「つっても……残り時間はあと5分か」
跡部は腕時計を見て時間を確認する。間もなく予令が鳴る頃。どっちみちもう勉強することは叶わない。
「残り5分じゃ愛を伝えるにはあまりにも短すぎるな」
「そ、そうだよ、無理だよ。だからとりあえず教室、戻ろ?」
「だがお前は俺からの愛が欲しいと言った」
言ってない。そんなことを言った覚えは全くない。強引な解釈の仕方に琴璃は1人おたおたする。こうなってはもう、何を言っても無駄な抵抗にしかならない。抱き締められるのも甘い言葉を贈られるのも当然嬉しいのだけれど。でもそれが学校の中だというのにはまだ慣れてない。たとえここが2人しかいない空間だとしても、やっぱりどこか気を抜けない。でも跡部のほうはそんなこと微塵も思っていないらしい。琴璃が困るからしないだけで人前でも彼女の肩を抱ける。誰も居ない生徒会室に連れてきたのは琴璃の為でもあるが自分の為でもあった。ここでなら人目がないから思いのまま琴璃に触れられる。
「やはり手っ取り早く伝えるのは言葉じゃ補えないな」
「す、好きって言えばいい話じゃないのかな」
「お前はそれで満足するか?」
「う、うん……する、よ」
「俺はしない」
「そうなの?」
「たった二文字で、お前への想いを推し量られてしまうのがもどかしい」
意外だった。受け手の琴璃には充分に伝わっているのに、与える側の彼はもどかしさを感じていたのか。そんなふうには見えなかった。それもそのはずで怒りと同様に歯痒さなんてナンセンスな感情を彼が見せるわけがない。
「そんなこと……ないと思うよ。だって私、景ちゃんに愛されてるなあ、って思うもん。好きって言われるのは嬉しいけど、言われなくても、そうだなあって思うもん。言葉が無くても、気持ちは分かるから」
跡部はいつも沢山の愛をくれる。けどそれは目に見えないから、それがどれくらいの大きさなのかは表現できないけれど足りないなんて思ったことはない。
「愛に言葉は要らない、か。その解釈には同感だな。だが時として字面 だけでは情熱は伝えきれない。お前もそう思うだろ?」
「まぁ、そうだよね。でも文字や言葉以外に伝えられる方法ってあるのかな」
「最高に良いフリじゃねぇか、琴璃」
「え」
何故跡部はそんな勝ち誇った顔をしているのか。琴璃には理解できなかった。でも何だか楽しそう。珍しく景ちゃんの機嫌が良いな。そんなふうに思っていたら体が反転した。広いソファに倒された自分の上で跡部がニヤリと笑っている。
「お望みどおり、言葉以外でお前に愛を伝えよう」
どうやって。琴璃が聞く前に跡部がその口を塞ぐ。触れるだけの優しいキスが次第に深くなってゆく。それは彼の愛の深さと比例するように。だとするとこの程度では全然済まない。きっともっと、深くなる。
彼の言う通り、ここから先はもう言葉なんて要らないのだと分かった。
=====================================================
でも授業サボるようなことしないし、ちゃんと理性きく人だから、この後ふつーに「戻るか」って言う。
今の今までずっとソファの上で抱き締められたままだった。ここに来た目的は仲直りだけどちゃんと勉強も教わる気でいた。
「勉強だぁ?お前、本気でやるつもりだったのかよ」
「本気だよ!でも、昼休みもうあと10分しかないよう」
なのに跡部は腕の力を解こうとしない。教えてくれると言ったくせに。彼にはもう全然その気がない。琴璃の申し出に背くようにぎゅっと抱き締める。
「断る。まだ全然、お前が足りない」
「なにそれ……もう」
「お前は1週間も俺を放ったらかしにしたんだ。ごめんと謝るくらいならその責任をとれよ」
いつの間にか普段の調子に戻っている。上から物を言うその姿勢は、普通の人だったら物怖じして怯んでしまいそうだ。けれど琴璃は普通じゃないから。特別な存在だから。彼女に高圧的に迫るのは決して嫌がらせじゃない。逆だ。彼女に甘えている時にこそこうなる。
「でも……これじゃドイツ語分かんないままだよ」
「Halte mich fest.」
「え?」
「Egal was kommt, ich werde dich nie verlassen.」
「……何て言ったの」
「ちょうどいい。勉強になるだろ?意味が答えられたら放してやるよ」
「えー分かんないよそんなの!難しすぎるってば」
「ま、分かったところでそうするんだが」
楽しげに口元をつり上げる跡部。琴璃は少しも笑えない。罰ゲームを受けているような気分だ。
「な、なんかヒント」
「さっき言ったぜ」
「え?」
「俺はお前にしか愛を囁かない」
そんなセリフを耳元で言われては平常心でいられない。しかもわざとウィスパーボイスで。これのどこがヒントになるのか琴璃にはちっとも分からなかった。けれど早く答えないと時間も無くなってしまう。
「えと、えと、愛の言葉なの?……好きだ、とか?あれ、でももっと長かったよね?さっきの言葉」
うんうん唸って絞り出した答え。当たっているとは思えない。そもそもこんなの当たるわけがない。だから琴璃は観念するしか選択はない。
「降参か?」
「しない、異議あり!」
「あん?」
「だって、愛の言葉なら、相手にちゃんと伝わらないと意味ないよね?これじゃ私に伝わらないよ」
だからノーカウントだよ、と抗ってみた。無理矢理な言い訳だけど筋は通っていると思ったから、跡部は腕の力を緩めた。
「成る程。お前の言うことは一理有るな」
「そうでしょ、だから、」
「なら別の手段を使うとしよう。ドイツ語が駄目なら、さて、どうやってお前の心に愛を刻もうか」
「えと」
「つっても……残り時間はあと5分か」
跡部は腕時計を見て時間を確認する。間もなく予令が鳴る頃。どっちみちもう勉強することは叶わない。
「残り5分じゃ愛を伝えるにはあまりにも短すぎるな」
「そ、そうだよ、無理だよ。だからとりあえず教室、戻ろ?」
「だがお前は俺からの愛が欲しいと言った」
言ってない。そんなことを言った覚えは全くない。強引な解釈の仕方に琴璃は1人おたおたする。こうなってはもう、何を言っても無駄な抵抗にしかならない。抱き締められるのも甘い言葉を贈られるのも当然嬉しいのだけれど。でもそれが学校の中だというのにはまだ慣れてない。たとえここが2人しかいない空間だとしても、やっぱりどこか気を抜けない。でも跡部のほうはそんなこと微塵も思っていないらしい。琴璃が困るからしないだけで人前でも彼女の肩を抱ける。誰も居ない生徒会室に連れてきたのは琴璃の為でもあるが自分の為でもあった。ここでなら人目がないから思いのまま琴璃に触れられる。
「やはり手っ取り早く伝えるのは言葉じゃ補えないな」
「す、好きって言えばいい話じゃないのかな」
「お前はそれで満足するか?」
「う、うん……する、よ」
「俺はしない」
「そうなの?」
「たった二文字で、お前への想いを推し量られてしまうのがもどかしい」
意外だった。受け手の琴璃には充分に伝わっているのに、与える側の彼はもどかしさを感じていたのか。そんなふうには見えなかった。それもそのはずで怒りと同様に歯痒さなんてナンセンスな感情を彼が見せるわけがない。
「そんなこと……ないと思うよ。だって私、景ちゃんに愛されてるなあ、って思うもん。好きって言われるのは嬉しいけど、言われなくても、そうだなあって思うもん。言葉が無くても、気持ちは分かるから」
跡部はいつも沢山の愛をくれる。けどそれは目に見えないから、それがどれくらいの大きさなのかは表現できないけれど足りないなんて思ったことはない。
「愛に言葉は要らない、か。その解釈には同感だな。だが時として
「まぁ、そうだよね。でも文字や言葉以外に伝えられる方法ってあるのかな」
「最高に良いフリじゃねぇか、琴璃」
「え」
何故跡部はそんな勝ち誇った顔をしているのか。琴璃には理解できなかった。でも何だか楽しそう。珍しく景ちゃんの機嫌が良いな。そんなふうに思っていたら体が反転した。広いソファに倒された自分の上で跡部がニヤリと笑っている。
「お望みどおり、言葉以外でお前に愛を伝えよう」
どうやって。琴璃が聞く前に跡部がその口を塞ぐ。触れるだけの優しいキスが次第に深くなってゆく。それは彼の愛の深さと比例するように。だとするとこの程度では全然済まない。きっともっと、深くなる。
彼の言う通り、ここから先はもう言葉なんて要らないのだと分かった。
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でも授業サボるようなことしないし、ちゃんと理性きく人だから、この後ふつーに「戻るか」って言う。
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