独占欲
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「……なんで景ちゃんがいるの」
4人分の水とおしぼりをトレーに乗せて琴璃が向かったテーブルには、予想通りとそうでない人物が待ち構えていた。跡部が居るなんて、聞いてない。琴璃の顔にはそう書いてある。嫌だという態度を一切隠すことなく彼の存在を指摘した。
「フン、俺様は客だぜ?文句言われる憶えはねぇな」
そんな、嫌悪する彼女の態度を分かった上で跡部は高慢に答える。喧嘩の仲直りをしたくて来たんじゃなかったのか。余計に煽るなっつーの。もう見てられない。思わず丸井が割って入った。
「まままま、琴璃ちゃん。俺らいつもどおりスイーツ食いに来ただけだからさ。だからあんま気にすんなって」
と言われても。気にならないほうがおかしい。こんな場所に、この面子の中によく彼は現れたなと思う。甘いものなんてそんなに好きではないくせに。だから目的は自分にあるのだろうと琴璃は察しがついた。面子と言えば、1人琴璃が見たことない青年が混じっている。跡部の向かい側に座っている彼は最初から穏やかな表情だった。琴璃と目が合うと軽く首を傾けた。
「はじめまして。丸井と同じ学校の幸村です」
「あ、はじめまして。いらっしゃいませ」
「幸村くんは立海でテニス部の部長やってんだぜ」
丸井に紹介されて幸村はもう一度にこりと笑う。座っているけど隣の丸井よりも背が高いのが分かる。跡部と同じくらいとも言える。穏やかな雰囲気が漂っていて大人っぽい人だなと思った。
「キミが跡部の彼女の琴璃ちゃん?美男美女カップルでお似合いだね」
「あ、いえ」
返答に困った。きっと、普段なら照れながらもお礼くらい言えるはずなのに。今は跡部と喧嘩してるから褒め言葉を素直に受け取れない。喧嘩というか琴璃が一方的に怒っていただけなのだが。
「それで、琴璃ちゃんは跡部のどういう所が好きなの?」
「え?えっ……と、あの」
「跡部のどんなとこに惚れたの?」
あまりに唐突すぎて琴璃は分かりやすく面食らった。穏やかそうだと思った人が、いきなりこんなこと聞いてくるなんて。目も声も柔らかいまま。なのに、結構ぐいぐいくる人だな。にこやかな顔で質問してきて琴璃が答えるのを待っている。
「……その、あの」
どうしよう。スイーツ食べたい仲良し2人組は、そんなのお構いなしにメニュー表を見て盛り上がっているではないか。助けてくれそうにない。残りはもう、彼しかいない。思わず琴璃は跡部に目を向けてしまった。なのに、幸村とのやり取りを絶対聞いているはずなのに跡部は素知らぬ顔をして窓の外の景色を見ている。しかもその口元は僅かに釣り上がっているではないか。絶対、わざとだ。琴璃が困ってるのを分かってて、わざと無関心を気取っている。どこに惚れたか、なんて聞かれて琴璃がどう答えるのかを内心では楽しんでいるのだ。喧嘩をしていようが、琴璃が下手なことが言えないのを分かっているから。ついでに嘘がつけない性格だということも。
「うし決まった!琴璃ちゃん、これとこれ、で、Lサイズね。あとオレンジジュース」
「俺もー!オレンジ2つで」
「あ、はいっ」
「2人は?飲み物とか、なんもいいの?」
「俺はじゃあ、コーヒーにしようかな」
「オッケー。じゃ、跡部もコーヒーでいいよね。コーヒーも2つね、琴璃ちゃん」
良いタイミングで解放された。受けた注文を繰り返すことなく琴璃は足速に行ってしまった。
「おい幸村」
「なに?」
「あんまりアイツを困らせるなよ」
さっきまで何も言わないでいたのに、跡部は琴璃が居なくなってから幸村に釘を刺す。琴璃からの助けを求める視線を無視したくせに。
「キミも人が悪いよね。彼女、助けを求めてたのに」
「お前が困らせたんだろうが」
そんなこと言うくせに跡部の口元は笑っていた。慌てている琴璃を久しぶりに見られた。それは良い収穫だったと思う。今頃彼女は解放されて助かったとほっとしているだろう。おそらくもう、このテーブルにはやって来ないんじゃないだろうか。
だが、注文されたものを運んできたのは琴璃だった。本当はこの席に運ぶのは出来ればもう避けたかった。自分ではなく他のバイトの子に運んでもらえば良かったのだが、みんなちょうど慌ただしく動いていて代わりを頼める空気ではなかった。
オレンジジュース2つ、と苺のパンケーキに期間限定のパフェ、トッピングのアイスも追加。パンケーキはLサイズ。運ばれてきたそれらのメニューにジローと丸井は写真を撮って騒いでいる。自分より女子高生な2人を見て琴璃は唖然とする。奥の2人にはコーヒーのみ。同じテーブルなのにこの世界の違いは何だ。
「琴璃ちゃんはテニスが強い人が好き?」
「え?……まぁ、そうですね」
運んだらさっさと下がろうとしたのに。逃すまいと幸村からの質問責めが再開される。琴璃は内心でもう許してと嘆いていた。どういう意図の質問なんだか分からないけど、一応返事をする。
「そうだろうね、跡部は強いしね。まぁ、なんてったって王様だから、テニスに限らず何でもこなせちゃうんだろうね。苦手な分野って、無いんじゃない?」
「はは、まぁ、そうでしょうね」
それは目の前に本人が居るのだから直接聞けば良いだろうに。幸村は跡部のほうなんて一切見ずに琴璃に向かってそんなことを言う。もう、ここは曖昧に適当に答えてやり過ごすしかない。
「じゃあ、俺の試合見たら琴璃ちゃんは俺に惚れるかな?」
またあまりにも唐突だった。その一言で一斉にみんなが固まる。写真撮影と食べるのに夢中だった丸井とジローも手を止めて幸村を凝視している。コイツは一体何を言い出すんだ、と思った。その後に2人は揃って跡部の顔を伺い見る。相変わらず腕を組んで窓の方を見ているけど、今、彼はどんな感情なのか見た感じでは分からない。
「俺のテニス、強くて格好良いってよく言われるよ。たまに怖い、とかも言われたりするけど」
「えと、あの」
「琴璃ちゃんテニスが強い人がタイプなんでしょ?俺、跡部より強いからさ」
「聞き捨てならねぇな」
そこでようやく跡部が口を開いた。優雅に、足を反対に組み直しようやく視線を幸村に向ける。跡部に真正面から睨まれても幸村は笑顔のまま。
「ヘラヘラしながら堂々と嘘ついてんじゃねぇよ」
「ヘラヘラって、酷いなあ。でもホントのことだよ。キミは俺に勝てない」
幸村がこんなことを言うなんて珍しい。同じ立海の丸井だけは彼がいつもとちょっと違うと気付いた。普段はこんなふうに喧嘩を売るようなことは決してしない。自分が強いことを吹聴する真似だってしないというのに。
「そうだ。今度、氷帝が立海 と練習試合やる時あったら琴璃ちゃんも見に来ればいいよ。俺もの凄く強いから。そしたら俺のこと好きになっちゃうかもね」
「……あはは、ありがとうございます」
何がありがとうございますなんだか分からないけど。幸村のことを好きになるわけが無いのだけど、とりあえず当たり障りのない返事をしておく。
「気になってきた?」
「え?」
「俺のこと。好きになりそう?」
目の前に彼氏が居るのに幸村は琴璃を口説いている。しかもその彼氏があの跡部景吾だというのに。何を考えているんだ。信じられない光景を目の当たりにしている。もう丸井は気が気じゃなくなっていた。
「幸村くんさ、」
「でも」
もうその辺にしとけよ、と丸井が口を挟もうとした。それよりも琴璃のほうが早かった。
「幸村さんがすごく強くても、景ちゃんは負けないと思います」
トレーを胸の前で両手で抱きしめて琴璃が言った。小さい声だったのにやたら通った。3人の視線が集中する。跡部だけはやっぱり窓の向こうを見ながら、口元に笑みを浮かべている。それでいい、というような顔。きっと彼までもが見つめたら琴璃は間違いなく頭がパンクしていた。
「…………は。あの、えっと、では、ごゆっくりどうぞ」
自分の言った言葉をようやく理解して、琴璃はまたも逃げるように引っ込んだ。
「わー。可愛いなぁ琴璃ちゃん。真っ赤だった」
「あんだよー。つか、何言い出すんだよ幸村くん。ビックリすんだろ」
「だってさ。良かったね」
2人は胸を撫で下ろし、幸村は向い側の跡部ににこやかに話し掛ける。跡部は冷めかけたコーヒーを黙って飲んでいた。
「え、無視?なんかあるでしょ、今の気持ち」
「別に。アイツは当然のことを言ったまでだろうが」
「うーわ、跡部かっこつけてるー。うれしーくせに」
「なんかあれだな、思ってたより跡部って愛されてんだなー」
どういう意味だと思ったが、いちいち野次馬相手に突っ込まなかった。言いたい放題の2人は再び食べ始める。心做しかさっきよりも食べ方が豪快だ、というか汚い。幸村くんも食べようぜ、とチョコで口を汚した丸井が幸村にフォークを渡す。それを受け取りながらも幸村は溜息を吐いた。
「はーあ、あんなあまーいノロケ聞いたあとで食べれるかな、これ」
「心配すんなぃ、幸村くん。食えなかったら俺が手伝ってやるよ」
「丸井はそろそろ節制したほうがいいよ」
笑いながら言って、受け取ったばかりのフォークを置いて幸村は席を立つ。
「ん?どこ行くの?」
「ちょっとトイレ」
4人分の水とおしぼりをトレーに乗せて琴璃が向かったテーブルには、予想通りとそうでない人物が待ち構えていた。跡部が居るなんて、聞いてない。琴璃の顔にはそう書いてある。嫌だという態度を一切隠すことなく彼の存在を指摘した。
「フン、俺様は客だぜ?文句言われる憶えはねぇな」
そんな、嫌悪する彼女の態度を分かった上で跡部は高慢に答える。喧嘩の仲直りをしたくて来たんじゃなかったのか。余計に煽るなっつーの。もう見てられない。思わず丸井が割って入った。
「まままま、琴璃ちゃん。俺らいつもどおりスイーツ食いに来ただけだからさ。だからあんま気にすんなって」
と言われても。気にならないほうがおかしい。こんな場所に、この面子の中によく彼は現れたなと思う。甘いものなんてそんなに好きではないくせに。だから目的は自分にあるのだろうと琴璃は察しがついた。面子と言えば、1人琴璃が見たことない青年が混じっている。跡部の向かい側に座っている彼は最初から穏やかな表情だった。琴璃と目が合うと軽く首を傾けた。
「はじめまして。丸井と同じ学校の幸村です」
「あ、はじめまして。いらっしゃいませ」
「幸村くんは立海でテニス部の部長やってんだぜ」
丸井に紹介されて幸村はもう一度にこりと笑う。座っているけど隣の丸井よりも背が高いのが分かる。跡部と同じくらいとも言える。穏やかな雰囲気が漂っていて大人っぽい人だなと思った。
「キミが跡部の彼女の琴璃ちゃん?美男美女カップルでお似合いだね」
「あ、いえ」
返答に困った。きっと、普段なら照れながらもお礼くらい言えるはずなのに。今は跡部と喧嘩してるから褒め言葉を素直に受け取れない。喧嘩というか琴璃が一方的に怒っていただけなのだが。
「それで、琴璃ちゃんは跡部のどういう所が好きなの?」
「え?えっ……と、あの」
「跡部のどんなとこに惚れたの?」
あまりに唐突すぎて琴璃は分かりやすく面食らった。穏やかそうだと思った人が、いきなりこんなこと聞いてくるなんて。目も声も柔らかいまま。なのに、結構ぐいぐいくる人だな。にこやかな顔で質問してきて琴璃が答えるのを待っている。
「……その、あの」
どうしよう。スイーツ食べたい仲良し2人組は、そんなのお構いなしにメニュー表を見て盛り上がっているではないか。助けてくれそうにない。残りはもう、彼しかいない。思わず琴璃は跡部に目を向けてしまった。なのに、幸村とのやり取りを絶対聞いているはずなのに跡部は素知らぬ顔をして窓の外の景色を見ている。しかもその口元は僅かに釣り上がっているではないか。絶対、わざとだ。琴璃が困ってるのを分かってて、わざと無関心を気取っている。どこに惚れたか、なんて聞かれて琴璃がどう答えるのかを内心では楽しんでいるのだ。喧嘩をしていようが、琴璃が下手なことが言えないのを分かっているから。ついでに嘘がつけない性格だということも。
「うし決まった!琴璃ちゃん、これとこれ、で、Lサイズね。あとオレンジジュース」
「俺もー!オレンジ2つで」
「あ、はいっ」
「2人は?飲み物とか、なんもいいの?」
「俺はじゃあ、コーヒーにしようかな」
「オッケー。じゃ、跡部もコーヒーでいいよね。コーヒーも2つね、琴璃ちゃん」
良いタイミングで解放された。受けた注文を繰り返すことなく琴璃は足速に行ってしまった。
「おい幸村」
「なに?」
「あんまりアイツを困らせるなよ」
さっきまで何も言わないでいたのに、跡部は琴璃が居なくなってから幸村に釘を刺す。琴璃からの助けを求める視線を無視したくせに。
「キミも人が悪いよね。彼女、助けを求めてたのに」
「お前が困らせたんだろうが」
そんなこと言うくせに跡部の口元は笑っていた。慌てている琴璃を久しぶりに見られた。それは良い収穫だったと思う。今頃彼女は解放されて助かったとほっとしているだろう。おそらくもう、このテーブルにはやって来ないんじゃないだろうか。
だが、注文されたものを運んできたのは琴璃だった。本当はこの席に運ぶのは出来ればもう避けたかった。自分ではなく他のバイトの子に運んでもらえば良かったのだが、みんなちょうど慌ただしく動いていて代わりを頼める空気ではなかった。
オレンジジュース2つ、と苺のパンケーキに期間限定のパフェ、トッピングのアイスも追加。パンケーキはLサイズ。運ばれてきたそれらのメニューにジローと丸井は写真を撮って騒いでいる。自分より女子高生な2人を見て琴璃は唖然とする。奥の2人にはコーヒーのみ。同じテーブルなのにこの世界の違いは何だ。
「琴璃ちゃんはテニスが強い人が好き?」
「え?……まぁ、そうですね」
運んだらさっさと下がろうとしたのに。逃すまいと幸村からの質問責めが再開される。琴璃は内心でもう許してと嘆いていた。どういう意図の質問なんだか分からないけど、一応返事をする。
「そうだろうね、跡部は強いしね。まぁ、なんてったって王様だから、テニスに限らず何でもこなせちゃうんだろうね。苦手な分野って、無いんじゃない?」
「はは、まぁ、そうでしょうね」
それは目の前に本人が居るのだから直接聞けば良いだろうに。幸村は跡部のほうなんて一切見ずに琴璃に向かってそんなことを言う。もう、ここは曖昧に適当に答えてやり過ごすしかない。
「じゃあ、俺の試合見たら琴璃ちゃんは俺に惚れるかな?」
またあまりにも唐突だった。その一言で一斉にみんなが固まる。写真撮影と食べるのに夢中だった丸井とジローも手を止めて幸村を凝視している。コイツは一体何を言い出すんだ、と思った。その後に2人は揃って跡部の顔を伺い見る。相変わらず腕を組んで窓の方を見ているけど、今、彼はどんな感情なのか見た感じでは分からない。
「俺のテニス、強くて格好良いってよく言われるよ。たまに怖い、とかも言われたりするけど」
「えと、あの」
「琴璃ちゃんテニスが強い人がタイプなんでしょ?俺、跡部より強いからさ」
「聞き捨てならねぇな」
そこでようやく跡部が口を開いた。優雅に、足を反対に組み直しようやく視線を幸村に向ける。跡部に真正面から睨まれても幸村は笑顔のまま。
「ヘラヘラしながら堂々と嘘ついてんじゃねぇよ」
「ヘラヘラって、酷いなあ。でもホントのことだよ。キミは俺に勝てない」
幸村がこんなことを言うなんて珍しい。同じ立海の丸井だけは彼がいつもとちょっと違うと気付いた。普段はこんなふうに喧嘩を売るようなことは決してしない。自分が強いことを吹聴する真似だってしないというのに。
「そうだ。今度、氷帝が
「……あはは、ありがとうございます」
何がありがとうございますなんだか分からないけど。幸村のことを好きになるわけが無いのだけど、とりあえず当たり障りのない返事をしておく。
「気になってきた?」
「え?」
「俺のこと。好きになりそう?」
目の前に彼氏が居るのに幸村は琴璃を口説いている。しかもその彼氏があの跡部景吾だというのに。何を考えているんだ。信じられない光景を目の当たりにしている。もう丸井は気が気じゃなくなっていた。
「幸村くんさ、」
「でも」
もうその辺にしとけよ、と丸井が口を挟もうとした。それよりも琴璃のほうが早かった。
「幸村さんがすごく強くても、景ちゃんは負けないと思います」
トレーを胸の前で両手で抱きしめて琴璃が言った。小さい声だったのにやたら通った。3人の視線が集中する。跡部だけはやっぱり窓の向こうを見ながら、口元に笑みを浮かべている。それでいい、というような顔。きっと彼までもが見つめたら琴璃は間違いなく頭がパンクしていた。
「…………は。あの、えっと、では、ごゆっくりどうぞ」
自分の言った言葉をようやく理解して、琴璃はまたも逃げるように引っ込んだ。
「わー。可愛いなぁ琴璃ちゃん。真っ赤だった」
「あんだよー。つか、何言い出すんだよ幸村くん。ビックリすんだろ」
「だってさ。良かったね」
2人は胸を撫で下ろし、幸村は向い側の跡部ににこやかに話し掛ける。跡部は冷めかけたコーヒーを黙って飲んでいた。
「え、無視?なんかあるでしょ、今の気持ち」
「別に。アイツは当然のことを言ったまでだろうが」
「うーわ、跡部かっこつけてるー。うれしーくせに」
「なんかあれだな、思ってたより跡部って愛されてんだなー」
どういう意味だと思ったが、いちいち野次馬相手に突っ込まなかった。言いたい放題の2人は再び食べ始める。心做しかさっきよりも食べ方が豪快だ、というか汚い。幸村くんも食べようぜ、とチョコで口を汚した丸井が幸村にフォークを渡す。それを受け取りながらも幸村は溜息を吐いた。
「はーあ、あんなあまーいノロケ聞いたあとで食べれるかな、これ」
「心配すんなぃ、幸村くん。食えなかったら俺が手伝ってやるよ」
「丸井はそろそろ節制したほうがいいよ」
笑いながら言って、受け取ったばかりのフォークを置いて幸村は席を立つ。
「ん?どこ行くの?」
「ちょっとトイレ」