独占欲
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「なんで跡部がいんの?」
「なんで幸村がいるんだよ」
2人の声が見事に被った。そこにやんわり新たな声が加わる。
「まぁまぁ。いいじゃないか、俺も仲間に入れてよ」
1人だけ何故か朗らかで。彼、幸村精市は笑いながらそう言って跡部の車の後部座席に遠慮なく乗り込んできた。ついでジローが勢いよく乗り込む。押された幸村が跡部のほうへ詰めてくるから一気に車内が狭くなる。拾うのが丸井だけなら、2人を後ろにして自分が助手席にでも乗れば良いと跡部は思っていたのに。その丸井は悠々と1人助手席に乗り込んだ。振り返って後ろに座る男3人にウィンク付きの笑顔を向ける。
「ま、よく分かんねぇけど乗せてってくれるんなら、シクヨロ」
「オッケー!しゅっぱーつ」
「お前の車じゃねぇだろ。……ったく。出せ」
ジローの掛け声ではなく、跡部の指示で4人の青年を乗せた車が動き出す。すげー、とか、さすが金持ちの車だな、とか若干2名が特にうるさい。やたら賑やかになった車内のせいで、跡部は琴璃に会いに行くという目的を忘れそうになった。
今から数十分前、部活から上がった丸井はジローに電話をかけたのだが聞こえてきたのはやる気のない声だった。やはり彼は寝ていたようだ。まぁそんなことだろうとは思ったけど。でも予定通り店に行くと言うので丸井も向かう準備をする。だが電話を切って少ししてから、再びジローから『立海の前まで迎えに行くね』と謎のメールが送られてきた。行先はいつものカフェなのに何故ここまで来るのか。氷帝から立海までジローがわざわざ来て、そこから一緒に店に向かうのでははっきり言って手間じゃないか。なのにそんなことを言うから、コイツはまだ寝ぼけてんのか、と思った。現地集合でいいぜ、と送る前に『高速のったからあと15ふんくらい』とまたしてもわけの分からないメッセージが届いた。なんだかんだで着替えたり帰る準備をしていたら10分は経ってしまった。本当にジローが宣言したとおりに立海に着くのならもうそろそろだ。部室から出ようとした時、
「珍しいね、まだ丸井が残ってるなんて」
「幸村くんじゃん」
一足遅れて首にタオルをかけた幸村が部室に戻ってきた。
「今日はとことん打っとこうかと思ったんだけどさ。考えたら今度の週末どっかの学校と練習試合だったよね、確か」
「んー、あー……そうだっけ?」
「あれ、違った?そうだと思ったから、あんまりやり過ぎるのもどうかと思ってこの辺にしといたんだけど」
2人とも2日以上先の予定なんて気にしちゃいなかった。丸井はともかく部長である幸村でさえもちゃんと把握していない。それもそのはずで大抵が柳と真田で練習試合の予定を組んでいるからだ。まぁいっか、と言って練習からあがった幸村は自分のロッカーを開ける。
「これから氷帝の芥川と会うことになっててさ。だから少し時間に余裕があったってわけ」
「へぇ、仲がいいんだね」
「幸村くんももう帰るっしょ?門まで行こーぜ」
その自然な流れで2人で正門まで歩いていった。目的地まで行くと1台の黒塗りの車が止まっているのに気付く。後部座席の窓がスライドして、見えた顔はジローだった。丸井に向かってにこにこしながら手を振ってきた。
「丸井くーん」
「マジかよ本当にここまで来たのかよ。つーか……なんだ、あの車?」
車から降りたジローは丸井たちのほうへ駆け寄ってくる。開けっ放しのドアの向こうに見えた人物に丸井は眉根を寄せる。
「なんで跡部がいんの?」
「なんで幸村がいるんだよ」
そうして、冒頭に至る。
跡部はジローと丸井の2人を乗せて行ってやるつもりでいた。でもまさか幸村がいるなんて思いもよらなかった。跡部の姿を確認した幸村が丸井の横で、俺も行こうかなぁ、なんて呟いた。それは丸井にしか聞こえなかった。そして、跡部に色々聞かれる前に、幸村はさっさと車に乗り込んでしまった。別に文句は無いけれど何故この男もついてきたのか。理解しかねる。こんな、スイーツを食べに行く奴らとつるむようには到底見えないから。それを言うならまさしく自分だってそうなのだが。
「で、なんでジロ君、跡部も一緒なわけ?」
車が発進するやいなや丸井は振り向いてジローに話し掛ける。
「ニシシ。跡部ね、琴璃ちゃんに会いたいんだって。ケンカしたから」
「マジ?おいー何やってんだよ跡部」
「おいジローテメェ。余計なことをベラベラ喋るんじゃねぇ」
琴璃に会いにゆくという事実は話しても良いがその理由を喋るのは許してるわけがなかった。それに断じて喧嘩ではないのだが、もうそのへんはこの際どうでもいい。余計な情報をこれ以上与えないほうが賢明だ。だからいちいち否定をしなかった。その代わりに跡部はジローを睨む。だが、2人の間に座っている幸村と目が合う。何が楽しいのか、彼はにこりと跡部に笑いかけてきた。
「その琴璃ちゃんって子は、これから行くお店にいるの?もしかして、跡部の彼女?」
「そだよー。そこでバイトしてんだ」
「んなことより。何故お前までついて来ている」
「え?なんか面白そうだったから」
本当ならば幸村は立海の前で丸井と別れて帰るつもりだった。けれどそこに現れたのがジローはともかく跡部だったから。なんかおもしろそう。直感的にそう思った。別に幸村は跡部と友人と呼べるような仲じゃない。だから本当に、ただの好奇心でここまでついて来たのだ。
「どんな子なの?跡部の彼女」
「お前に答える義務はねぇな」
「んとねー、可愛くて、優しくて、めっちゃ良い子」
代わりにジローが答えてやった。跡部との間に幸村が座っているのを良いことに勝手に答えている。今日は自分が有利だと分かって、調子に乗りまくっている。
「へぇ。それは会うのが楽しみだな」
跡部はもう何の反応もしなかった。どうせ何を言っても聞かないだろうから。腕を組み、目的地に着くまで視線は窓の向こうに向けていた。とりあえず、幸村 が居ると確実に邪魔だな、とは思っていた。
「なんで幸村がいるんだよ」
2人の声が見事に被った。そこにやんわり新たな声が加わる。
「まぁまぁ。いいじゃないか、俺も仲間に入れてよ」
1人だけ何故か朗らかで。彼、幸村精市は笑いながらそう言って跡部の車の後部座席に遠慮なく乗り込んできた。ついでジローが勢いよく乗り込む。押された幸村が跡部のほうへ詰めてくるから一気に車内が狭くなる。拾うのが丸井だけなら、2人を後ろにして自分が助手席にでも乗れば良いと跡部は思っていたのに。その丸井は悠々と1人助手席に乗り込んだ。振り返って後ろに座る男3人にウィンク付きの笑顔を向ける。
「ま、よく分かんねぇけど乗せてってくれるんなら、シクヨロ」
「オッケー!しゅっぱーつ」
「お前の車じゃねぇだろ。……ったく。出せ」
ジローの掛け声ではなく、跡部の指示で4人の青年を乗せた車が動き出す。すげー、とか、さすが金持ちの車だな、とか若干2名が特にうるさい。やたら賑やかになった車内のせいで、跡部は琴璃に会いに行くという目的を忘れそうになった。
今から数十分前、部活から上がった丸井はジローに電話をかけたのだが聞こえてきたのはやる気のない声だった。やはり彼は寝ていたようだ。まぁそんなことだろうとは思ったけど。でも予定通り店に行くと言うので丸井も向かう準備をする。だが電話を切って少ししてから、再びジローから『立海の前まで迎えに行くね』と謎のメールが送られてきた。行先はいつものカフェなのに何故ここまで来るのか。氷帝から立海までジローがわざわざ来て、そこから一緒に店に向かうのでははっきり言って手間じゃないか。なのにそんなことを言うから、コイツはまだ寝ぼけてんのか、と思った。現地集合でいいぜ、と送る前に『高速のったからあと15ふんくらい』とまたしてもわけの分からないメッセージが届いた。なんだかんだで着替えたり帰る準備をしていたら10分は経ってしまった。本当にジローが宣言したとおりに立海に着くのならもうそろそろだ。部室から出ようとした時、
「珍しいね、まだ丸井が残ってるなんて」
「幸村くんじゃん」
一足遅れて首にタオルをかけた幸村が部室に戻ってきた。
「今日はとことん打っとこうかと思ったんだけどさ。考えたら今度の週末どっかの学校と練習試合だったよね、確か」
「んー、あー……そうだっけ?」
「あれ、違った?そうだと思ったから、あんまりやり過ぎるのもどうかと思ってこの辺にしといたんだけど」
2人とも2日以上先の予定なんて気にしちゃいなかった。丸井はともかく部長である幸村でさえもちゃんと把握していない。それもそのはずで大抵が柳と真田で練習試合の予定を組んでいるからだ。まぁいっか、と言って練習からあがった幸村は自分のロッカーを開ける。
「これから氷帝の芥川と会うことになっててさ。だから少し時間に余裕があったってわけ」
「へぇ、仲がいいんだね」
「幸村くんももう帰るっしょ?門まで行こーぜ」
その自然な流れで2人で正門まで歩いていった。目的地まで行くと1台の黒塗りの車が止まっているのに気付く。後部座席の窓がスライドして、見えた顔はジローだった。丸井に向かってにこにこしながら手を振ってきた。
「丸井くーん」
「マジかよ本当にここまで来たのかよ。つーか……なんだ、あの車?」
車から降りたジローは丸井たちのほうへ駆け寄ってくる。開けっ放しのドアの向こうに見えた人物に丸井は眉根を寄せる。
「なんで跡部がいんの?」
「なんで幸村がいるんだよ」
そうして、冒頭に至る。
跡部はジローと丸井の2人を乗せて行ってやるつもりでいた。でもまさか幸村がいるなんて思いもよらなかった。跡部の姿を確認した幸村が丸井の横で、俺も行こうかなぁ、なんて呟いた。それは丸井にしか聞こえなかった。そして、跡部に色々聞かれる前に、幸村はさっさと車に乗り込んでしまった。別に文句は無いけれど何故この男もついてきたのか。理解しかねる。こんな、スイーツを食べに行く奴らとつるむようには到底見えないから。それを言うならまさしく自分だってそうなのだが。
「で、なんでジロ君、跡部も一緒なわけ?」
車が発進するやいなや丸井は振り向いてジローに話し掛ける。
「ニシシ。跡部ね、琴璃ちゃんに会いたいんだって。ケンカしたから」
「マジ?おいー何やってんだよ跡部」
「おいジローテメェ。余計なことをベラベラ喋るんじゃねぇ」
琴璃に会いにゆくという事実は話しても良いがその理由を喋るのは許してるわけがなかった。それに断じて喧嘩ではないのだが、もうそのへんはこの際どうでもいい。余計な情報をこれ以上与えないほうが賢明だ。だからいちいち否定をしなかった。その代わりに跡部はジローを睨む。だが、2人の間に座っている幸村と目が合う。何が楽しいのか、彼はにこりと跡部に笑いかけてきた。
「その琴璃ちゃんって子は、これから行くお店にいるの?もしかして、跡部の彼女?」
「そだよー。そこでバイトしてんだ」
「んなことより。何故お前までついて来ている」
「え?なんか面白そうだったから」
本当ならば幸村は立海の前で丸井と別れて帰るつもりだった。けれどそこに現れたのがジローはともかく跡部だったから。なんかおもしろそう。直感的にそう思った。別に幸村は跡部と友人と呼べるような仲じゃない。だから本当に、ただの好奇心でここまでついて来たのだ。
「どんな子なの?跡部の彼女」
「お前に答える義務はねぇな」
「んとねー、可愛くて、優しくて、めっちゃ良い子」
代わりにジローが答えてやった。跡部との間に幸村が座っているのを良いことに勝手に答えている。今日は自分が有利だと分かって、調子に乗りまくっている。
「へぇ。それは会うのが楽しみだな」
跡部はもう何の反応もしなかった。どうせ何を言っても聞かないだろうから。腕を組み、目的地に着くまで視線は窓の向こうに向けていた。とりあえず、