第一訓
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ピピィー
「ハイハイちょっとどけてェ!!」
そこへ十手を持った役人が二人店へやって来た
「あっ!!いたいた!!お前か木刀振り回して暴れてる侍は!!」
「おーし動くなよ」
「ちょっ…待って違いますって!!」
「オイ弥七!!中調べろ!!」
何故かやって来た役人に犯人扱いされる新八は咄嗟に両手を上げ否定するが話を聞かず役人は店の中を見る
「あーあ茶斗蘭星の大使でさァ。こりゃ国際問題になるぜ…。エライ事してくれたな」
「だから僕は違いますって!!犯人はもうとっくに逃げたの!!」
「ハイハイ犯人はみんなそう言うの。言い訳は凶器隠してから言いなさいよ」
役人のその言葉を聞いて自分の腰を見るとさっき銀時が振り回していた血の付いた木刀がいつの間にか新八の腰に差さっていた
「よしじゃあ調書とるから署まで来て」
「…アレ?」
「あれェェェェ!?」
――――⋯⋯⋯
ブロロロ…
その頃店を出た銀時と才花は原付に乗り移動していた
『ダメじゃない?』
後ろに乗る才花がふと尋ねた
「あ~やっぱダメだなオイ。糖分とらねーとなんかイライラする……」
『じゃなくてさっき……』
「おいィィィィ!!」
『あ、来た』
すると才花の声を遮る叫び声が原付の後方から聞こえてきた
「よくも人を身代わりにしてくれたなコノヤロー!!アンタのせいでもう何もかもメチャクチャだァ!!」
二人が振り向くと木刀を手に必死な形相を浮かべ原付を追い掛けてくる新八の姿があった
「律儀な子だな。木刀返しに来てくれたの。いいよあげちゃう。どうせ修学旅行で浮かれて買った奴だし」
「違うわァァ!!役人からやっとこさ逃げてきたんだよ!!」
「違うって言ってんのに侍の話なんて誰も聞きゃしないんだ!!しまいにゃ店長まで僕が下手人だって」
「切られたなそりゃ。レジも打てねェ店員なんて炒飯作れねェ母ちゃんくらいいらねーもんな」
『確かにねぇ…』
「アンタら母親なんだと思ってんだ!!」
鼻をほじりながら言う銀時とそれに同感する才花に新八は突っ込む
「バイトクビになったくらいでガタガタうる…」
「今時侍雇ってくれる所なんてないんだぞ!!明日からどーやって生きてけばいいんだチクショー!!」
怒りを込め新八が木刀を銀時に振り下ろそうとしたその時ー
キィィイィ
『ごふっ』
ゴッキン
「ゔっ!!」
銀時が突然急ブレーキをかけ原付を止めると才花は銀時の背中に鼻をぶつけ、新八は原付の車体に局部をぶつけた
「ギャーギャーやかましいんだよ腐れメガネ!!自分だけが不幸と思ってんじゃねェ!!」
『銀時鼻痛い』
「世の中にはなァダンボールをマイホームと呼んで暮らしてる侍もいんだよ!!お前そーゆーポジティブな生き方できねーのか!?」
「あんたポジティブの意味わかってんのか!?」
『鼻血出てない?』
言い合う銀時と新八の脇で鼻を赤くした才花が呑気に尋ねていると
「あら?新ちゃん」
目の前のスーパーから一人の女性が出てきた
「こんな所で何をやってるの?お仕事は?」
「げっ!!姉上!!」
「あ…どーも」
『どーも』
キレイなこの女性はどうやら新八の姉のようだ
「仕事もせんと何プラプラしとんじゃワレボケェェ!!」
「ぐふゥ!!」
だがキレイな笑顔を見せていたものほんの短い間で次の瞬間鬼のような形相で新八へ強烈な跳び蹴りをする
「今月どれだけピンチかわかってんのかてめーはコラァ!!」
「がふっ」
「アンタのチンカスみたいな給料もウチには必要なんだよ!!」
「げふっ」
そして馬乗りになりひたすら弟をたこ殴りにする新八の姉の姿に青ざめる銀時
『あーあ』
一方才花は隣で鼻をおさえながら表情一つ変えず抑揚のない声を上げる
ボソッ…
「……オイ逃げんぞ才花」
『ねぇ鼻痛い。鼻血出てない?』
「何でオメーはそんな呑気なんだよ!んなの後で帰ったら冷やしてやるから早く乗れ」
「まっ…待ってェ姉上!!こんな事になったのはあの二人のせいで…あ゙ー!!待てオイ!!」
新八は銀時と才花を指差して慌てて弁解するが背を向けた銀時はすでに原付に跨りエンジンをかけていた
「ワリィ俺コイツの鼻冷やして夕方からドラマの再放送見たいか…ら」
そう言い銀時は去り際に振り向くが原付の後ろには何故か才花ではなく新八の姉が乗って笑顔を浮かべていた
――――⋯⋯⋯
「いやあのホント…スンマセンでした」
『スイマセンでした』
その後新八の姉にボコボコに殴られた銀時と鼻の赤みが引いた才花は彼女達の実家である恒道館道場で正座し謝罪していた
「俺もあの…登場シーンだったんでちょっとはしゃいでたっていうか…調子に乗ってました。スンマセンでした」
「ゴメンですんだらこの世に切腹なんて存在しないわ。アナタのおかげでウチの道場は存続すら危ういのよ」
新八の姉ー志村妙は短刀を手に笑顔で話す
「鎖国が解禁になって二十年…方々の星から天人が来るようになって江戸は見違える程発展したけど一方で侍や剣…旧きに権勢を誇った者は今次々に滅んでいってる」
「ウチの道場もそう…廃刀令のあおりで門下生は全て去り。今では姉弟二人でバイトしてなんとか形だけ取り繕ってる状態。それでも父の遺していったこの道場護ろうと今まで二人で必死に頑張ってきたのに…」
「お前のせいで全部パーじゃボケェェ!!」
「おちつけェェ姉上!!」
『そーだよ。おちつけ姉上~』
「アンタは登場した時からどうしてそんなに呑気なんだァァ!!」
短刀を手に銀時へ斬りかかろうとするお妙を必死に止めつつ全く棒読みで緊張感などがない呑気な才花に突っ込む新八
「新八君!!君のお姉さんゴリラにでも育てられたの!!待て待て待ておちつけェェ!!切腹はできねーが俺だって尻(ケツ)ぐらいもつってホラ」
「?」
身の危険を感じた銀時は慌ててお妙の目の前に一枚の紙を差し出す
「…なにコレ?名刺…万事屋坂田銀時?」
『じゃ…私も』
「万事屋坂田才花?」
銀時に続いて才花も同じく差し出したのは名刺だった
「こんな時代だ。仕事なんて選んでる場合じゃねーだろ。頼まれればなんでもやる商売兄妹でやっててなァ」
「この俺万事屋銀さんがなんか困った事あったらなんでも解決してや…」
「だーからお前に困らされてんだろーが!!」
「仕事紹介しろ仕事!!」
カッコ良く決めた銀時だったが原因が自分であるだけに志村姉弟の怒りはおさまるはずもなく今度は二人してボコボコにされる
「おちつけェェ!!仕事は紹介できねーが!!バイトの面接の時緊張しないお呪いなら教えてや…」
「いらんわァァ!!」
バキ!
最後に重い一撃を食らった銀時は鼻血を流し床に伸びる