第八訓
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―――⋯⋯
二人が戻った屋根の上には同じ作業服を着た雇い主である大工の男もおり三人で屋根の修理を行っている最中
「バカヤロー
金槌はもっと魂こめてうつんだよ」
「おめーの頭にだったら魂こめてうちこんでやるよハゲ」
男から金槌の打ち方を指摘される銀時だがやる気無さげに軽口を叩く
『じゃあ私は銀時の頭に魂こめてうちこんだらいい?』
「お前はワニワ◯パニックでもしてろ」
ドスッ
『いでっ』
その隣で作業する才花が真似して呟くと銀時からツッコミとチョップを食らう
「コノヤロー。人材不足じゃなかったらてめーらなんて使わねーのによォ。銀さんそこは大体終わったからあとは才花ちゃんに任せてアンタはこっちを頼むよ」
男に呼ばれた銀時は才花を残して棟を挟んだ屋根の反対側へ行く
「そこちゃんとやっとけよ才花」
『オメーもな天パ』
互いに軽口を交わし一人残された才花が黙々と作業を進めていると
「爆弾処理の次は屋根の修理か?」
『ん?』
ハシゴを使い才花のいる屋根に土方が登ってきた
「節操のねェ野郎だ
一体何がしてーんだてめェらは」
『あれ?多串君。屋根上がる時はヘルメットしないと危ないよ』
「多串じゃねェ!!さっきから一体誰と勘違いしてんだ!!」
『え?多串君じゃないの?あのバカみたいにデッカい金魚飼ってた……』
「バカみたいにデッカい金魚なんか知るか!俺は真選組副長の土方だ!」
“真選組”という単語を聞きふと池田屋での騒動が才花の脳裏に蘇った
『真選組……あ!あの時のご臨終してた人』
「どういう覚え方してんだ」
『成仏出来なくてさ迷ってるんですか?でも私お経言えない。寿限無なら言えるけどそれでいいですか?』
「誰が寿限無なんぞで成仏するか!!大体人を勝手に殺すな」
『それはそれは失敬』
青筋を浮かべながらツッコミを入れる土方に対して才花はというと悪びれた様子もなくただ抑揚のない声で淡々と返事をする
そして何事もなかったように仕事に戻ろうとする才花だがその腰に下げられたあるモノが土方の目に留まり険しかった表情がさらに厳しいものになる
「オイちょっと待て。お前が腰に差してるそいつはなんだ」
『ん?』
才花は土方が指差す視線を辿って見下ろし自分の腰を見ると鍔のない黒鞘に収められた小太刀があった
「廃刀令の御時世にしかも女の身で帯刀なんざ一体どういうつもりだ。事と次第によっちゃぶった斬る」
廃刀令を蔑ろにして平然と刀を下げている才花に警戒心を露わにする土方は先程沖田から拝借した刀を持つ手に軽く力を込め身構える
両者の間に不穏な空気が流れる……かと思いきや
『アクセサリーです』
「嘘つけ!そんなゴツいアクセサリーあるか!」
殺気を向けられておきながらも才花から返ってきた答えはかなり拍子抜けするものでまたも土方のツッコミが飛ぶ
『よくお土産屋さんに龍とかの飾りがある剣のキーホルダーがあるっしょ。それです』
「知ってる!修学旅行先とかで男子が買っちゃうヤツ!」
『お!その反応…さては買っちゃったことある感じですかい?』
「誰が買うか!」
土方からの詰問に終始飄々とした態度で受け流す才花
それに対して掴みどころのない才花の返答に振り回されっぱなしの土方は立て続けのツッコミで僅かに息が上がっている
自分を落ち着けるため一呼吸を置いてから改めて冷静に才花に問う
「……とにかく帯刀してる以上見過ごすワケにはいかねぇ。選べ。痛い目に遭わずに大人しく刀(そいつ)を差し出すか…それとも今ここで叩っ斬られるか」
『………』
「……」
『じゃあ“屋根の修理を終わらせる”で』
「んな選択肢はねェ!勝手に増やすな!」
『えーだって痛いのは嫌だしこれもただのアクセサリーだし』
そう言いながら腰に差していた刀を鞘ごと抜き呟く
「もういい。お前とは話すだけ無駄なようだ。こうなったら実力行使でいかせてもらう。悪く思うなよ」
最後の一言を言うや否や屋根の瓦を蹴り才花に向かって行く土方
一気に間合いを詰めると素早い動作で抜かれた刀が無防備に立っている才花へ走る
『うお…っ!』
だがすんでのところで脇へと転がり土方の刀をかわした才花
「チッ…」
土方は小さく舌打ちをすると続け様に刀を振るい才花へ斬りかかる
一方才花は次々と来る土方の攻撃を手にしている刀で応戦することはおろか防ぐこともせずただ軽い身のこなしで全てかわしていく
「(何故刀を抜かねぇ…)」
刀を持ったそれも自分より体格が優っている年上の男を相手にしていながらそんな余裕綽々とも取れるような才花の立ち回りに苛立ちを覚える土方
するとー
ズルっ
『あ…っ』
「(そこだ!)」
瓦で僅かに足を滑らせた才花がバランスを崩した
勿論その隙を見逃さない土方は膝を着いた才花の頭上目掛け刀を振り下ろす
ガキィィン
避けることが出来ない才花は反射的に手に持っていた小太刀を鞘から僅か5センチ程だけ抜き土方の斬撃を受け止めた
ズリ…ッ
『……!!』
だが土方の攻撃はそこで止まることはなく刀が受け止められるとそのまま自身の刀を才花の持つ小太刀の刃の上を沿うように横へ滑らせその勢いで小太刀の鞘を強引に取っ払った
鞘を遠くに飛ばされ無理やり刀を抜かされる形となった才花にそれを目で追う間も与えることなく土方の攻撃が来る
ガキィィン!
再び刀の刃と刃がぶつかり合う甲高い音が響く
鍔迫り合いの中才花は何も言わず土方を見つめ対する土方はそんな才花を眼光鋭く睨んでいたがある事にふと気付き目線が才花の持つ小太刀に移る
「オイ…何だお前のその刀は」
そう呟き土方が懐疑の目で見つめる才花の小太刀は刃の至るところが欠けた刃こぼれだらけの斬れ味など無に等しい鈍刀だった
『………っ!』
グイッ
土方の問いに対し才花はほんの僅かに眉間にシワを寄せると何も答えずただ力任せに土方の刀を押し返した
「!!」
思わぬ才花の抵抗に不意を突かれた土方は体勢を崩しかけたが後ろに飛び退き才花から一旦距離を取ることで回避
即座に追撃に備えて臨戦体勢を取るのも忘れない
『………』
しかし才花はというとその場からは動かず小太刀を構えて土方をいつになく鋭い目をして見つめる
『これは……』
.