第四訓
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「おかわりヨロシ?」
ご飯を頬張りながら空の茶碗を差し出す神楽
「てめっ何杯目だと思ってんだ。ウチは定食屋じゃねーんだっつーの」
茶碗を差し出されたお登勢はというとあからさまに険しい表情を浮かべカウンター席に座る神楽を睨む
「ここは酒と健全なエロをたしなむ店…親父の聖地スナックなんだよ。そんなに飯食いてーならファミレス行ってお子様ランチでも頼みな!!」
「ちゃらついたオカズに興味ない。たくあんでヨロシ」
「食う割には嗜好が地味だなオイ」
質より量を求める神楽に突っ込むとお登勢は奥のテーブル席に座る銀時達に叫ぶ
「ちょっとォ!!銀時!!何だいこの娘!!もう5合も飯食べてるよ!!どこの娘だい!!」
「5合か…まだまだこれからですね」
『そうそう。俺達の戦いはこれからだよ』
「もうウチには砂糖と塩しかねーもんな」
しかし返ってきた返事の内ストローでジュースを飲みながらいつも通りの抑揚のない口調で答える才花とは異なり俯く銀時と新八二人の声には力はなく顔もひどく憔悴している
「なんなんだいアイツら。
あんなに憔悴しちまって…ん?」
二人の様子に首を傾げるお登勢はふとカウンターにいた神楽を見ると神楽は炊飯器を軽々と持ち上げ直接口へとかきこんでいた
「ってオイぃぃぃ!!まだ食うんかいィィ!!ちょっと誰か止めてェェェ!!」
お登勢の悲鳴が店に響いた
―――⋯⋯
しばらくしてお腹いっぱいになった神楽はカウンターでジュースを飲んでいた
「ヘェ~じゃああの娘も出稼ぎで地球(ここ)に。金欠で故郷に帰れなくなったところをアンタが預かったわけ…」
その間にテーブル席にお登勢も座り神楽の身の上話を聞く
「バカだねぇアンタも家賃もロクに払えない身分のクセに」
『ねーバカだよねー。私だって給料貰ったことないのにさー』
「確かにコイツはバカだけどそんなバカに見切りをつけずにいつまでつるんでるアンタも大概だからね」
『あらーこれは手厳しい』
「…であんな大食いどうすんだい?言っとくけど家賃はまけねぇよ」
「オレだって好きで置いてる訳じゃねぇよ。あんな胃拡張娘」
ガシャン
そう答える銀時の頭に空になったグラスが直撃し白目を向いてテーブルに倒れる銀時
「なんか言ったアルか?」
グラスを投げたのは神楽
「「『言ってません』」」
お登勢、新八、才花は声を揃えて言う
「いだだだ」
「アノ大丈夫デスカ?」
痛む頭を抑える銀時のところへ一人の女性が片言でハンカチを差し出し声をかけてくる
「コレデ頭冷ヤストイイデスヨ」
「あら?初めて見る顔だな。新入り?」
「ハイ。今週カラ働カセテイタダイテマスキャサリン言イマス」
キャサリンと名乗る中年の女性はおかっぱ頭に猫耳を生やしており見たところ天人のようだ
「キャサリンも出稼ぎで地球(ここ)に来たクチでねェ。実家に仕送りするため頑張ってんだ」
「たいしたもんだ。どっかの誰かなんて己の食欲を満たすためだけに…」
ガシャン
銀時の言葉はまたも頭に直撃したグラスに遮られる
「なんか言ったアルか?」
「「「『言ってません』」」」
犯人は勿論神楽
ガララ
「すんませーん」
そこへ営業時間外にも関わらず店の扉が開く
「あのこーゆもんなんだけどちょっと捜査に協力してもらえない?」
そう言い店に入って来たのは警官のようで警察手帳を見せてきた
「なんかあったんですか」
「うんちょっとね。このへんでさァ店の売り上げ持ち逃げされる事件が多発しててね。なんでも犯人は不法入国してきた天人らしいんだが。この辺はそーゆー労働者多いだろ。なんか知らない?」
「知ってますよ。犯人はコイツです」
ボキッ
銀時は神楽を指差し即答するが神楽にその指を逆方向に曲げられる
「おまっ…お前何さらしてくれとんじゃァァ!!」
「下らない冗談嫌いネ」
『今すっごい良い音した。もう一回して』
「てめェ故郷に帰りたいって言ってたろーが!!この際強制送還でもいいだろ!!つか才花てめェふざけんなよ。お前の指を全部折るぞ!」
珍しく嬉々とした声でさらっと恐ろしいことを
言う才花に銀時は彼女の頬を鷲掴みにして怒る
「そんな不名誉な帰国御免こうむるネ。いざとなれば船にしがみついて帰る。こっち来る時も成功した。なんとかなるネ」
「不名誉どころかお前ただの犯罪者じゃねーか」
「…なんか大丈夫そーね」
「ああもう帰っとくれ。
ウチはそんな悪い娘雇ってな…」
ブォン ブォン
騒ぐ銀時達を見つめながら警官と話すお登勢だったが店の外から突如聞こえてきたエンジン音に遮られる
「アバヨ。腐レババア」
外へ目を向けると荷台に色んな荷物を積んだ銀時の原付に跨るキャサリンの姿があった
「キャ…キャサリン!!」
驚くお登勢は慌てて店の入り口まで飛び出すがすでに原付は走り去ってしまっていた
「まさかキャサリンが…」
「お登勢さん
店の金レジごとなくなってますよ!!」
唖然とするお登勢に新八が叫ぶ
「あれ俺の原チャリもねーじゃねーか」
「あ…そういえば私の傘もないヨ」
『ねぇ私って今日刀持ってきてたっけ?無いんだけど』
各々そう呟きながら銀時、神楽、才花の三人もお登勢に続いて店先へ出てくると遠くに見える銀時の原付に跨ったキャサリンを見た
「あんのブス女(あま)ァァァァァ!!」
「血祭りじゃァァァァ!!」
『あららら』
表情一つ変えず棒読みで声を上げる才花とは対照的に青筋を浮かべ怒りを露わに叫ぶ銀時と神楽
そして三人は店の前に停まってたパトカーに勝手に乗り込みだす
「ちょっ…何やってんの!?どこいくの!?」
新八は戸惑いつつも思わず三人を追う中つられてパトカーに乗り込む
「おいィィィちょっと待ってェェ!!それ俺達の車なんすけど!!」
ブロロ ゴオォオ
「ちょっとォォォ!!」
警官が慌てて銀時達を止めるがそれを無視して運転席に座る神楽はアクセルを踏み車を出す
「おいいっちゃったよォ!!」
「どーすんの!?」
パトカーを拝借され取り残された警官二人は途方に暮れる
そんな中お登勢は四人が飛び出して行ったほうをただ黙って見つめていた
―――⋯⋯
ゴォォォォオオ
猛スピードでパトカーを走らせキャサリンを追う銀時達
「ねェ!とりあえずおちつこうよ三人とも。僕らの出る幕じゃないですってコレ。たかが原チャリや刀や傘でそんなにムキにならんでもいいでしょ」
後部座席に座る新八は三人にそう言うと隣に座る才花が口を開く
『いやー私は別に刀とかどーでもいいんだよ。あんなの盗んだってしょうがないし』
「だったらこの二人を止めてよ!何で乗ったの!?」
『風を感じたくて』
「んなの自力で走って感じてろ!」
『風に~なり~たい~』
「やかましいわ!!」
窓を開けてどこかで聞いたことのある曲のフレーズを歌い出す才花に突っ込むと次は助手席に座る銀時が口を開いた
「新八俺もなぁ原チャリなんてホントはどーでもいいんだ」
「!」
「そんなことよりなァシートに昨日借りたビデオ入れっぱなしなんだ。このままじゃ延滞料金がとんでもない事になる。どうしよう」
「アンタの行く末がどうしようだよ!!」
「延滞料金なんて心配いられないネ。もうすぐレジの金がまるまる手に入るんだから」
「お前はそのキレイな瞳のどこに汚い心隠してんだ!!」
銀時に続きパトカーを運転する神楽はというと傘を取り返すことよりもレジの金を奪う気満々の様子
誰一人盗まれた原チャリ、刀、傘の事など気にしていなかった