少し疲れが溜まっていた。色々とやることが重なってしまった。

劇団の小道具作りは昨日終わらせて、大学のレポートを今完成したところだ。これからいづみの買い物の付き合いもする。

冷蔵庫から取り出したペットボトルを談話室のテーブルに置き、ソファにドカッと座る。体を倒して横になると自然と目が閉じた。

時々、何も考えたくないと思う時がある。ごちゃごちゃ考えすぎるのは俺の悪い癖だ。

いづみの出かける時間まではまだ余裕がある。少し寝よう。ここで寝るのも申し訳ないが、動く気力がない。ごめんね。





ガチャ、と扉の開く音が聞こえ目が覚めた。誰かが帰ってきたらしい。また目を閉じた俺を許して欲しい。それか無理矢理起こして。


「…あ、」

この声を聞いて心臓が跳ね上がった。マジか嘘だろ。まさか真澄くんだとは思わないよ普通。

足音が俺のところまで来て顔に影が出来た。目を閉じていても感じられる動き。もしかして、覗き込んでる、とか？

真澄くんに限ってそんなことするわけない。俺だとわかったら興味がなくなって去っていくでしょ。

「ハル…」

近くで声がした。幻聴だろうか。俺の名前を真澄くんの口から紡がれるなんて。

「寝てる。」

ごめんね、寝たフリだよ。起きるべきか迷った。でも少しでも俺に気を向けてくれているのが嬉しい。

真澄くんが顔にかかった俺の前髪に触れた。

「監督に、そっくり…」

そう言い残して去っていった。





「…あー、クソ。」

期待した俺が馬鹿だった。