「…はぁ。」

今日は一応UNDEADのレッスン日だ。帰っていいかな。放課後でガヤガヤとうるさい教室の中で沈んだ雰囲気を出しているのは僕だけだろう。

「冬雅ちゃーん！」

「なぁに、嵐。」

スキップで机の前まで来て僕の目線より下になるように屈んだ。うさぎの耳が見える。

「今日、UNDEADのレッスン？」

「え？うーん、まぁ。本当はそうなんだけど…」

なしにすることを伝えたら手を叩いて笑顔を見せた。

「それじゃあKnightsのフォーメーション確認してくれない？王さまが来てて全員揃ったのよ！」

あぁ、レオさん来たのか。珍しい。Knightsの全員揃ったのは久々かも。レオさん来ただけで格段に完成度が上がるからな…興味ある。

「いいよ、今から…」
「駄目だ。」

後ろから僕の声を遮った人がいた。嵐がじっとその人の方を見ていた。この声は知っている。よく聞いていた。

「今日は俺らの日だからな。」

「えっ、ちょ…」

振り返ると同時に無理やり立たされ腕を引っ張られながら教室を出た。その時に嵐が手を振っていた。この状況も理解出来ていない。

されるがままになって、アドニスくんが立ち止まったところはレッスン室だった。

「どうしたの。」

掴まれた手首を擦る。強く握られて少し赤くなっていた。なんで怒ってるのさ。僕に背を向けて無言のままだ。

「…帰るね。」

「待て。」

「何。」

「…また踊りを教えてくれ。」

目を合わせて口を開いたと思えば、なにそれ。

「もう大丈夫だよ。アドニスくんは完璧だから。」

「は…」

「僕教えることないや。」

実際本当のことだった。それでも一緒に踊ってたのは理由があって。それに気づかないほど馬鹿ではない。


「隣にいたい。」

アドニスくんはいつも面白いことを言う。ダンスでもそうだ。複雑だったり直球だったり。

「それはどういう意味。」

ゆっくり歩み寄っていくと困った顔をする。ごちゃごちゃ考えすぎだよ。

「冬雅がほしい。」

このストレートな発言に笑ってしまった。慣れてない感じが可愛らしかった。

「鳴上からお前を奪う。」

「嵐？」

「絶対俺を見るようにさせる。負けない。」

なんでここに嵐が出てくる。なんか勘違いしたようだけど、頑張れって言っておいた。

この日からアドニスくんのアピールが始まっていく。その姿が可愛くてしばらく秘密にしておこうと思う。