「今日は何をお探しで？」

なんて軽々しく言えるようになったのはヤクザさんに2、3回会ってから。

初めてここに来た時は、親父が借金でもしてたんかなって思って本当にビビった。

すみません親父が借金あったの知らなくて…と思わず口に出したら違うと睨まれた。ちなみに隣にいたチンピラみたいなやつもいた。

話を聞くと、ただのお客さんだった。その時、ほかのお客さんもビビって動けなくなっちゃっていたけど。

「あの生地が足りなくなってしまってな。」

「あぁ、なるほど。まだまだありますよ。待っててください。」

奥に行って前に買った生地を引っ張り出す。



「おっと…わわっ！」

「…おい、大丈夫か…」

呆れた顔でこっちを見ていた。

…やはり片付けをするべきか。

「すみません、お待たせしました。」

苦笑いしながらいくつかの色を並べる。

「無地でいいんですよね？」

「あぁ。白と茶、黒を。」

「ありがとうございます！いつもの長さですか？」

「頼む。…おい、迫田。」

「アイアイサー！」

目の前に現れた。

「これら運んどけ。」

「わっかりやしたー！」

そして嵐のように去っていったチンピラくん。

「…あのチンピラくん、どこに隠れてたんですか。」

「外待機だ。」

すごく可哀想。

「いつも悪いな。また来る。」

「いえ、俺も嬉しいんで。また来てください。」

あんな見た目だけど笑うんだなーヤクザさん。謝った姿とか似合わな…





ところであの人、いつもたくさん布買ってるけど何やってる人なんだろ。