「…ねぇ瑠璃川くん、月岡さん。」

2人は不思議そうに俺の顔を見る。

「俺、古市さんに何か怒らせるようなことしましたか…」

店内はズーンと暗い雰囲気が漂っていた。

「あーはは…きっと忙しいんじゃないのかな？きっと…」

もう何週間も会っていない。いつもなら週2、3回来てくれていたのに！忙しくても週に１回は来てくれていたのに！

他のお客さんがホッと安心したように入ってくるのがなんか気に食わない。

「最近お金だけ渡してこの範囲で衣装作れって言うんだよね。まぁここで買えば余裕だし、正直ありがたいけど。」

「ちょ、幸ちゃん…」

「ま、」

まじですか。思わず頭を抱えてしまった。

「そ、それはたまたまだよ！多分！理由があるのかも！裕くん関係以外で！」

一生懸命にフォローしてくれているのが逆に辛い。その隣で呆れたように見てくる瑠璃川くんにもグサッとくる。


「…生地が高い？」

「それはない。」

瑠璃川くん反応早すぎ。

「種類が少ない？」

「多すぎて迷うくらい。」

「古すぎてボロボロ？」

「アクションシーンでも破れない。」

「……。」

すげぇ褒めてくれる。涙でそう。

俺や生地以外の理由。


『他に良い店を見つけた』

「裕くん？」

それは、なんとなく…いや、かなり…

「おにーさん生きてる？」

…嫌だなぁ。

「今、古市さんどこにいるか分かりますか。」

「…今日は部屋で溜まってる本読むって言ってた。」

へぇ。そうか、なるほど。


「今から古市さんに会いに行ってきます。」