4月24日
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至さんが、いつだったか、私のことを金魚だといった。その時は意味が分からなくて、最近やってるゲームにでも影響されたのかななんて思った。至さんのことだから、あんまり意図はないのかもしれない。左腕を疼かせるような人だし、そういうことだと思っておく。当の本人を横目で見れば、至さんは悪態をつきながらゲームに夢中になっている。あの、コントローラーを動かす至さんの手。あの手に触れられると、その部分は熱くて、まるで溶けるような、そんな感覚に陥ることを思い出していたたまれなくなった。至さんはずるい。ゲームをしていたかと思えば、いつの間にか私のそばに来ていて「何を見てんの?」だなんて分かりきったことを聞く。
「至さんのこと見てた」
「知ってる」
至さんは私の髪を掬い、頬をなでる。やっぱり、じんじんと熱い。
「熱い」
「…お前、いつも言うねそれ。金魚じゃん」
「至さんもまた言ったそれ、いまいちわかんない」
「金魚って例えたこと?」
ゆっくり首を縦に振ると、至さんは声を出して笑った。お前文系なのに、とか関係ないと思う。人を金魚に例えるなんて、誉さんの芸術性でも移ったのだろうか?そのうち至さんも片目をおさえてポエムでも詠むのだろうか。ちょっとみてみたい、ような気もする。いや、やっぱ嫌かな。
「かえで、失礼なこと考えてない?」
「…」
「まあいいけど。それで、金魚の例えだけど」
至さんはゆっくりと私を押し倒す。この顔を至さんがしているときは、大抵夜は眠れない。瞳の奥の、その欲は、私をショートさせるから困ったものだ。まあ、受け入れてしまう私も私、だけど。
「金魚ってさ、人が素手で触ると火傷するんだよね」
太腿に片手を這わせて、そっとその足に口づける。
「かえでって、いつも俺が触ると熱いっていうから」
つまり、私は人間に素手で触られて火傷をしている金魚、ということか。なんか、からかわれてる気がする。羞恥心に襲われてる私を見て、優越感に浸って、面白いな、ってみてるわけだ。意地が悪いな。
「私を殺す気なの」
「まあ、広い意味でとるとそう、かな」
急に視界に影。至さんが覆いかぶさってきたのだ。整った顔を近くに感じる。
「広い意味、って」
「はは、大丈夫。殺すっていっても、天国に連れてくってことだし」
至さんは私の首元にゆっくり顔を埋めて、そのままリップ音を立てる。痕、つけられたんだろう。それにしても、天国、って。
「たくさん気持ち良くなって…二人で天国みよ」
そういった至さんは、最高にむかつく顔をしていた。
私はきっと、一生この熱で火傷を負う。
金魚と熱
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