09話:白い訪問者
これは、ロデオから聞いた話……というには、少々脚色しすぎているかも知れない。あくまでもロデオの話を聞いて僕なりに解釈をしたというだけであり、変な話ただの想像の産物である。
ロデオがことを起こしたのは、僕が仕事に出かけて二時間が経った頃のようだ。正確な時間こそ分からないが、とある人物がロデオを見つけ、僕がとある場所に駆けつけた時間を考えると概ねそのくらいだろう。
それまで、ロデオはベットがある窓際で日向ぼっこをしていたようで、何をするでもなく寝入ってしまっていたようだった。だがその穏やかな時間が過ぎ去るのは、何とも呆気なかった。急に窓が、バンバンと大きな音を立てて揺れ動いたのだ。窓ガラスが割れてしまうのではないかというようなその反動で、ロデオは思い切り飛び起きた。「な、なあに……?」辺りを見回し、視線はようやく窓ガラス越しに辿り着く。
「ねこさんだ……」
ロデオの視界に飛び込んできたのは、真っ白で綺麗な毛並みをした一匹の猫だった。ロデオが窓のすぐそばまで近づくと、白猫がもう一声上げ窓の手をかける。カリカリと、窓が傷付いてしまうのではないかと思うような擦れる音が続くと、窓が僅かに隙間をあけた。これは紛れもなく僕の落ち度だが、内から鍵がかかっていなかったのだ。
窓が傷つくからやめて欲しいものだが、白猫はどうにか家に侵入しようとその隙間を段々と広げていく。顔さえ侵入させてしまえば、隙間なんていうものは猫にとってはさして問題ではなくなってしまった。猫は軽々と僕のベットに身を落とすと、顔を左右に振り侵入する際に乱れた毛並みを整えた。
窓際にいたロデオは、ゆっくりと羽を動かして猫の居るベットへと落ちていく。音にもならない程度に、しかし紛れもなく宙に埃が舞った。
「か、かってに入ったら、いけないんだよ……?」
そうロデオが口にすると、猫はロデオにじゃれているのか飛びついてきたのだそうだ。
「わああっ……!」
「んにゃ」
余りの突然のことに、ロデオはようやくその猫の顔をまじまじと視界に入れる。すると、真っ白な毛並みの猫は、何かを言いたげにこちらをじっと見つめていたらしい。
「な、なあに……?」
ロデオは半泣きでそう問いかけ、白猫の顔を見つめ返した。
「……あれ?」
涙が溜まった大きな目をいっそう大きくさせ、ロデオはこう思ったのだそうだ。
「えーっと、しぇーる……しぇる? んん、名前なんだっけ……?」
ずっと昔に出会った、とある猫にそっくりだ、と。
白猫は、ひと鳴きしたかと思うと足を翻して窓の外へと駆け下りた。こちらを見上げ、再びロデオに語りかけるようにして声を上げたかと思うと、そのまま歩いて行ってしまった。一体何を言われたのか、ロデオはすっかり困り果ててしまった。なんだか機嫌がよかったらしい白猫の後ろ姿に、ロデオの気持ちは焦るばかりだ。
「ま、まって!」
そして無造作に開いた窓から、ロデオは白猫を追いかけて飛び出していったのだ。
ロデオがことを起こしたのは、僕が仕事に出かけて二時間が経った頃のようだ。正確な時間こそ分からないが、とある人物がロデオを見つけ、僕がとある場所に駆けつけた時間を考えると概ねそのくらいだろう。
それまで、ロデオはベットがある窓際で日向ぼっこをしていたようで、何をするでもなく寝入ってしまっていたようだった。だがその穏やかな時間が過ぎ去るのは、何とも呆気なかった。急に窓が、バンバンと大きな音を立てて揺れ動いたのだ。窓ガラスが割れてしまうのではないかというようなその反動で、ロデオは思い切り飛び起きた。「な、なあに……?」辺りを見回し、視線はようやく窓ガラス越しに辿り着く。
「ねこさんだ……」
ロデオの視界に飛び込んできたのは、真っ白で綺麗な毛並みをした一匹の猫だった。ロデオが窓のすぐそばまで近づくと、白猫がもう一声上げ窓の手をかける。カリカリと、窓が傷付いてしまうのではないかと思うような擦れる音が続くと、窓が僅かに隙間をあけた。これは紛れもなく僕の落ち度だが、内から鍵がかかっていなかったのだ。
窓が傷つくからやめて欲しいものだが、白猫はどうにか家に侵入しようとその隙間を段々と広げていく。顔さえ侵入させてしまえば、隙間なんていうものは猫にとってはさして問題ではなくなってしまった。猫は軽々と僕のベットに身を落とすと、顔を左右に振り侵入する際に乱れた毛並みを整えた。
窓際にいたロデオは、ゆっくりと羽を動かして猫の居るベットへと落ちていく。音にもならない程度に、しかし紛れもなく宙に埃が舞った。
「か、かってに入ったら、いけないんだよ……?」
そうロデオが口にすると、猫はロデオにじゃれているのか飛びついてきたのだそうだ。
「わああっ……!」
「んにゃ」
余りの突然のことに、ロデオはようやくその猫の顔をまじまじと視界に入れる。すると、真っ白な毛並みの猫は、何かを言いたげにこちらをじっと見つめていたらしい。
「な、なあに……?」
ロデオは半泣きでそう問いかけ、白猫の顔を見つめ返した。
「……あれ?」
涙が溜まった大きな目をいっそう大きくさせ、ロデオはこう思ったのだそうだ。
「えーっと、しぇーる……しぇる? んん、名前なんだっけ……?」
ずっと昔に出会った、とある猫にそっくりだ、と。
白猫は、ひと鳴きしたかと思うと足を翻して窓の外へと駆け下りた。こちらを見上げ、再びロデオに語りかけるようにして声を上げたかと思うと、そのまま歩いて行ってしまった。一体何を言われたのか、ロデオはすっかり困り果ててしまった。なんだか機嫌がよかったらしい白猫の後ろ姿に、ロデオの気持ちは焦るばかりだ。
「ま、まって!」
そして無造作に開いた窓から、ロデオは白猫を追いかけて飛び出していったのだ。