愛の叫び

ヒカルの碁 全巻一気読みの感想

2021/09/01 23:33
感想
今更ながら。
本当に今更ながら、ヒカルの碁を読みました。
なんで今?!というと、まあ感想関係ないので畳んどきます。
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まあ身の回りにはやっぱり好きって人も多く、なによりリア友がヒカ碁大好きなのでカラオケでしょっちゅう映像は見てて、刷り込みはバッチリ『気になるタイトル』リスト入りはとっくにしていたわけです。
そして。
漫画ばっか読んでるので、広告も漫画ばっかなわけです。
ヒカルの碁が出てきたのです。
これまでも何度か出てきてて、そのたびに似たようなところを読んでいましたが。
容量足りないし時間泥棒だしな!!!ってアプリインストールには至ってなかったわけです。

機種変更して容量が4倍になったんですよね。

読んだことない漫画一気読みするのがマイブームなんですよね。

インストールしちゃいましたね。

はい、無料分を読みました。
読みました。
ビギナーズお得課金しました。
読みました。
読み……読み足りねえ!!!!!(いつもの電子書籍ストアを開く俺)

いつもはお得な金曜日にしか買わないって決めてるんですが!
もうどうしても続きが読みたくて!
これが連載中の作品なら最新まで読んでも続き読みたい!って状況変わらんしな……で我慢できるんですが、完結作。
『最終巻』が存在する……!
そっそれにほらPayPayジャンボ今日までだしっ!と買ったのが昨日(そして当たらない)
空き時間全てを費やして読み切ったのが今日の昼休みです……


まあ要するに全ては縁、でしょうか。
別の漫画を全巻購入しようとチャージしていたPayPay残高が消えましたが悔いなし。

とにかく面白い。
全巻読了後の感想なので当然の如くネタバレへの配慮はございません。

ヒカ碁の主題って、おそらく最後に出てきた、
『過去から未来へと繋いでいく』(そのために生きている)
だと思うんですけど、それを描くのめちゃくちゃ上手いな〜!って思った。
何様?って感じの感想ですが。
こういうテーマって、有り難いお話感を演出してしまうとそもそも高尚な人しか読まない(≒自覚なき層、届いてほしい人まで届かない)気がするんです。
いかに『面白い漫画を読んだ!』と『学び(気づき)』を両立するか。
主題はあってないようなもの、実はこうかもしれないって読者が勝手に想像するものであるべきなんじゃないかと私は思います。

私も二次創作同人とは言えお話を考える身として、いかに主題をあからさまでなく織り込むかにいつも苦戦します。
ものすごく難しいんです。
私は解釈を練って練って練って、私から見た彼らはこんな子たち!を書きたい。それより性癖が先行してる作品の方が多いですが。
理想は番外編のような話です。
公式の味を真似たい。
まあ、二次創作の販売物としては公式に寄せすぎるのは危険ですが……。
それを表現するためにはどうしたらいいのかって言うと、そのまま『私から見た彼らはこんな子たち!』をそのまま言葉にしちゃうと理想から遠ざかる。
だって「それはお前の意見だろ」感すごくないですか? その通りだし。
結局描くのは『私から見た彼ら』でしかないんですが、本当は言葉で決めつけたくないんです。
説得力ねえ〜〜〜〜〜って作品ばっかな気もしますが(笑)
上手く書けた気がする!と思うのは最近書いた四季と千秋の話(→木漏れ日のスポットライト)ですかね。
状況を作って、比喩表現を置いて、2人の会話やリアクションから私なりの“彼ららしさ”を表現する。
実は書きたいと思ったのは一部の会話だけで、しっとりとしたお話を書こうと思って書き始めたわけではないのですが、主題ってハッキリ決めない方が日ごろ自分が大事にしている考えが滲むのかもしれないなあ、と思った作品でもあります。
ブレないために設定するのも大事だと思いますが、日ごろの考え方というものは些細な言葉選びに表れてしまうと思うので。
オリジナルの方がわかりやすいかな? 「こういうテーマが書きたい」とテーマ先行で考えると、キャラクターが死ぬんです。私の意見の代弁者に過ぎず、舞台装置でしかない。双六の駒です。
私には向いてない書き方なんだろうなって思います。論文じゃねえんだ小説は!

さてさて、私が勝手に受け取った主題の方ですが。
『過去から未来へと繋いでいく』というのは、棋士に限らず全ての生き物に言えることだと思います。
種の繁栄、存続、絶えないために生きている。
人間に照準を合わせると、それって文明というものじゃないかな、と思います。
過去から未来へと、託すものがいるからこそ発展していく。
そうした大きな枠の中に、一人ひとり個人の命がある。人生が、想いが、物語がある。
それを伝えられるのは同じ種族のものだけで、繋いでいくことで大きな枠を作っていく。
明言って私は避けるべきなのかなって思うんですけど、あの時あの場所でヒカルが佐為のことを明かさずに語るにはああいう表現が適切だった。
『遠い過去と遠い未来をつなげるために』
そうして言葉で言われると、そんなのみんなそうだってわかる。
ハッとする言葉だと思う。
自分はいつでも未来へ向かって生きていく人間で、いつか過去になる人間なんだな、って。
最後の院生の子どもたちがよりそう思わせてくれた。
佐為は未来のあるヒカルを羨んだ。あくまで過去の存在である自分が悔しかった。
でも、ヒカルもいつか、過去になる。未来を育むための過去になる。
佐為がそうであったように。
ヒカルたちの実績は既に過去のもので、それに影響された子たちの存在は眩しくて、それで終わるラストはもうこんなん☆☆永遠★STAGE☆☆じゃん……ってなる(突然のスタミュ)
えーでもスタミュもそうじゃん?!?!?! いつかのステージが誰かの憧れになって、目指した夢が道標になるんですよおおおお涙涙涙
(割愛)

そしてこの言葉が、平安の世から時を超えて佐為が現れた理由の全ての説明になると思う。
『突如現れた幽霊に取り憑かれ、全然興味のなかった囲碁をやることになっちゃった少年』っていうなんだそれ面白そ〜笑な構図が、興味を惹くだけのものじゃなかったんだとハッキリ思わせてくれるというか。
いやはや、いろいろ天才なんですよね。
囲碁ってやっぱり馴染みがあまりないじゃないですか。
だからテーマにすることで、その分野にいる普段は読者じゃない層も取り込むことができる。
そしてヒカルが囲碁について無知だから、本来の読者層である少年たち、おそらくほとんどが囲碁なにそれお爺ちゃん?な認識のままでも入りやすい。
しかも、どうして無知なのに囲碁なんて始めたの?は全部『佐為のせい』で済ませることができる。
根本的な疑問を持たなくていいから、話に集中できる。
ヒカルがきちんと囲碁をやろうという気になってからも、見据えているのはライバルだけだからタイトルとか無知でもそらそうよね〜って読者はつっこまなくて済む。
どうしたって必要な説明が不自然じゃないってとても大事なことだと思います。

あと、ジャンプの三大原則「友情、努力、勝利」もきっちり満たしてる。
個人的には、院生はみんなライバルかなって思うので中学の話が『友情』
三谷くんとの話、めっちゃ好きです。
お互い素直じゃなくて、なかなか和解らしい和解はできなかったけれど、わだかまりがハッキリあるわけでもなくて、それぞれ囲碁を続けているっていうのがどこか交われる友情なんだろうなって思う。
そして『努力』
天才棋士にあぐらかいて全部自分の手柄にするってこともできたかもしれない、でもそれをしなかった。できなかった。
自分の実力で向かってくる本気に対して、他人の力で戦うことはしたくないと足掻いた。
これがまた、『追われる者』であり『追う者』であるという構図を生む。
お前に勝ったのはオレじゃなくて佐為だ、でも、次に勝つのはオレだ。そんな努力。
ヒカルに限らず、ヒカルの周りではみんな自分のために努力していて、熱くていいなあと思った。
その努力に伴うのが『勝利』
圧勝だったり辛勝だったり、はたまた相手サイドの勝利だったり。
本気と本気のぶつかり合いってやっぱいいよなあ!って思う。
こんなの本気じゃねーしなんて逃げ道作らないで、全力でぶつかる。
なかなかできることじゃないからこそ惹かれる。
一つと言わず、この三大原則を全部無理なく盛り込んでるんだよなあ。

佐為との別れも、『ずっと一緒にいられるものだと信じ切っていた相手との突然の別れ』という、自分にもいつか訪れるかもしれない経験の描写になる。
幽霊である以上、既に死人だから、読者には『いつか消えるかもしれない』と匂わせておいて、ヒカルには全然そんな発想がないっていうのも頷ける。
何せ百四十年前の実績があるから。また時を超えて次があるだろっていう。
ある保証なんて、どこにもないのに。
それってこの二人の関係だけじゃなくて、誰にでもそうだよなあって思う。
つい不変を信じてしまうけど、そんなことないんだよね。
いつか失われてしまう。でもその日を想像できない。
言ってしまえば『死』なんだけども。
消えてしまった佐為がどこにいるか、それは『ヒカルの碁』だっていう回答めっちゃくちゃ好きなんですよね。
佐為とのコミュニケーションは全て囲碁だった、一緒に碁を打ってきた、佐為の碁を見てきた、だから自分の碁には佐為がいる。
『亡くなった人はいつまでも自分の中で生きてる』なんてありがちな立ち直りの言葉を、比喩で語るあのシーンがとても好き。
その立ち直りの言葉は、実感が伴わないと「そんなこと言ったってあいつがいないのは変わらないだろ」になってしまう。
ヒカルにしか、当人にしかわからない感覚なのだろうと思う。
『こうなることがわかってたらもっと碁を打たせてやるんだった』という後悔、全部やらせればよかった、これからはお前にしか打たせないからオレはもう打たないから、帰ってきてという願い。
どんなに願っても帰ってこないのが、故人というもの。
佐為、帰ってきてほしかった。でも最後まで消えたきりっていうのがやっぱり『死』なんだなあと思う。
しかし頑なに『もう“オレ”は碁を打たない』と閉ざしていたヒカルを動かしたのが後悔の一局だっていうのが……最高なんだよな……
ヒカルは伊角さんだから冷静でいられて、伊角さんだから喧嘩して追い出すようなことにならなかったし、伊角さんだから『あの日の後悔』の続きができた。
ズルをしてしまった、なかったことにして続けてしまおうか、という弱さ。
ズルを見てしまった、指摘して確実な勝ちを手に入れたい、という弱さ。
次も引きずるほどの後悔を、このタイミングで回収するのズルイよなあ……!

それにしても、ヒカルの碁って一貫して『過去から未来へ』なんだなって改めて気がつく。
大人たちがどっしり構えてタイトルを守る世界に、新しい世代の風が吹く。
これも過去から未来へ、だと思う。
大人たちも昔は新しい世代。大人になって、新しい世代を迎え討ち、そしてまたその新しい世代が大人になって、新しい世代が出てきて。その繰り返しと成長を思わせる。
中学の囲碁部だって、囲碁部を作った筒井さんがいて、それに続いた人がいて、これからも続く人がいる。過去から未来へ進んでいく。
真摯に向き合うことって人を変えるエネルギーがあるよなって思う。
感化されるものだから。な、北原(突然のスタミュ)
過去から未来へ、繋いでいく。
進んでいくばかりじゃなくて、繋がっているから、振り返ったっていい。
振り返ることが次へ進む糧になることもある。
それが検討でもあるかな〜って思う。ここの手がこうだったから、ああだったから、じゃあこうすれば、ああすれば。振り返って次に繋げる。
囲碁の世界では当然かもしれないことのおかげで振り返ることの大事さもわかるなあ。

いろいろ語ったけれど、何より一番すごいのは、
読んでいる時はこんなこと一切考えず、ただただ続きが読みたい・もっとこの話に触れていたい・止めたくない、それだけだったこと。
だと思う。
最後まで読んで、『遠い過去から遠い未来へ繋げる』というフレーズが出てきて、子どもたちのラストを経て、ようやくこれまで語ったようなことを考えた。
素人ながら話作りをするせいか、見てると『この演出すごいな〜』とか『この描写上手いな〜』とか『漫画上手いな〜』とかそういう話の内容そのもの以外の余計なことを考えがちなんですが(感想がまさにそういう観点ですが)、読んでる時は本当に続きが読みたい一心だった。
これって週刊連載(週刊に限らず商業全般か)に一番必要なことだと思うんですよね。
私はリアタイじゃないのでなんとも正確な感覚はわかりませんが。
続きが読みたい、早く読みたい、そんな作品が一つでもあったら、雑誌を手に取るじゃないですか。
やっぱりテーマとか細かいこととか二の次で、話を読みたいと思わせる物語こそが私の好きな作品だなあと思う。まあ、テーマが自分に合わないと面白いと思えないからテーマは大事なんですが……(………)

ちなみに、一回通り読んでみた時点での一番好きなシーンは、『秀策に対して強いこだわりを見せるヒカルに迫ろうとして、『お前にはいつか話す』というヒカルの言葉を思い出し、ヒカルを信じてぐっと飲み込んだアキラくん』です。
どこか掴みかけているけれど、知りたくて仕方ないけれど、ヒカル自身が語ってくれるその日まで待とうと飲み込んでくれるところがとても好き。
なんかこう……暁先輩みたいで……(突然のスタミュ)
まあ平安棋士でかつての秀策であった人物が憑依してたなんて突飛な発想なかなかできないから、暁先輩よりは確信には欠けるんだけども。
どちらも、語るその日のことの描写がないのがいいよなって思う。
好きに考えていいよって言われてる気がして(スタミュはこの調子だとありそうな気もするが……)。
ヒカルはいつか話すなーんて言ったことうっかり忘れてるかもしれないし、しっかり覚えていて実は作中の時間内で語った日があったのかもしれないし、アキラくんもついそれとなく催促しちゃうようなこともあるかもしれないし、何も言わず冷静に待っているのかもしれないし。
ああ、こんなにも話は綺麗にまとまっているのに、未来への余韻のおかげで読了直後真っ先の感想が「えっっっ続きが読みたいんですが?!?!」だった。
最後まで描かれていない人たちの余韻も多いから、想いを馳せ放題……。
公式スピンオフ作品とかあるのかなあ。

私の二次創作の原動力はやっぱり『続きが読みたい・もっと読みたい』なんだな〜と再確認しつつ。
読み返しつつ、アニメも見てみようと思います!
まだ一回しか読んでないから読み返したら他にもいろんな気づきがあるんだろうな〜楽しみ。

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