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3. 監視
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「ふぁ~……」
白雪がハルカ侯爵からの嫌がらせを受けた翌朝、ミシャはいつも通り、自分の部屋を出た。
眠そうな顔で、伸びをしながら朝の空気を吸い込む。
(ん? ……この匂い、今日は夕方から……)
「お、出てきた出てきた」
「?」
いきなり声が聞こえた。
そちらを見やれば…
「やっほ~、ミシャ~」
監視対象・オビが、廊下の窓に腰掛け、手を振っていた。
ミシャはジト目でオビを見る。
「部屋の鍵、どうやって開けたんにゃ」
「ん~。それは企業秘密」
昨日、謎の男・オビは、名前と職業、昨日の一件に至るまでの経緯を、妙にあっさりと話した。
今は、空き部屋を1つあてがわれ、その部屋の鍵をミシャが持つことになっている。
「鍵開けられんにゃら、そのまま逃げればよかったにゃろ」
「そしたら、ミシャが怒られるだろ?」
「ミーのこと気にするんか?」
「当然」
オビはミシャに歩み寄り、指先に白金色の髪を絡めた。
「こ~んな可愛い子、気にするなって方が無理な話」
本心ではないと分かっているミシャは、半目でため息をついた。
「口説くにゃら
「あはは~」
ミシャは適当に、城内を歩き始めた。
急にゼンに仕事を止められ、暇なのだ。
ゆったりと歩くミシャの後ろを、オビもゆったりとついていく。
「そういえばさぁ、ミシャって言葉遣い面白いよねぇ。どこの方言?」
「どこでも関係にゃーろう」
「え~? …確か、どっか山沿いの……あぁそうだ、ラタニカって町で、そんな感じのを聞いたことがある」
「知ってんにゃら聞くにゃ」
「へ~、あの辺の出身なんだ。その方言、女の子が使ってると可愛いいよね~」
「……」
「けど、そこまで"にゃーにゃー"言う方言だったっけ?」
「……」
「ていうか、ラタニカって元は先住民族の自治領だったから、クラリネス傘下っていう意識薄いんだよね? 何でわざわざ城仕えしようと思ったわけ?」
「るっさいにゃ、お前。…ていうか、
ミシャが立ち止まって振り返ると、オビはへらっと笑った。
「だってミシャ、俺の監視しなきゃいけないんでしょ?」
「別に、城内で大人しくしててくれればそれでいいにゃ。どうせ匂いか音で、逃げてにゃーかどうか分かるんにゃから」
ミシャは適当に、廊下の手すりに座った。
オビもその隣に座る。
「ミシャって、ホントに人間?」
「人間以外の
「この辺に実は耳があったりして~」
「ひっ」
オビは両手でミシャの頭を探った。
さわさわと撫でるように触られ、くすぐったくて仕方ない。
「んにゃっ、やめろ! アホ!」
「はははっ」
ミシャはオビの腕を振りきり、涙目で息を切らせた。
オビはニヤリと笑みを浮かべる。
「何? くすぐられるの苦手?」
「知らにゃーっての!」
ぷいっとそっぽを向く小さな頭。
白い頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
オビはフっと微笑み、訊く。
「一体どうやって手に入れたんだい? その超人的な五感」
「知らにゃーもん」
「え~、教えてくれてもいいじゃん?」
ミシャはため息をつき、空を見上げた。
「ホントに知らにゃーの。いつの間にかこうにゃったから」
晴れ空には、綿のような白い雲が浮かんでいる。
…が、ミシャの目には、青と白がボヤボヤと入り混じっているようにしか見えない。
(…雲って、どんな形にゃっけ……)
ぼ~っと、空を見続け、遠い昔の記憶をさかのぼっていく。
オビはそれを、横目に見た。
緑色の瞳の中で、白い粒子のようなものが光っている。
「ミシャって、目が綺麗だね」
「?」
「目の中に星空が入ってるみたいでさ」
「……」
ミシャは、真顔でオビを見上げた。
やがて苦笑しながら
「…星空、にゃあ……」
「?」
オビはミシャの反応の意味がイマイチ分からず、首を傾げた。
「さてと」
ミシャは気を取り直すように立ち上がった。
ぐいっと伸びをして歩き出す。
「やっぱ仕事にゃーと暇にゃし、ゼンに外出許可もらいに行こっと」
「あれ、俺の監視は?」
「にゃから、お前も連れてくんにゃよ」
「?」
ミシャはオビを連れ、ゼンの部屋までやって来た。
「ゼ~ン」
"ガチャ"
ノックもなしに扉を開ける。
机で書類仕事をしていたゼンは、ジト目を向けてきた。
「お前な、ノックしろっていつも言ってるだろ」
「必要にゃーっしょ。ゼンが居るって分かってるし、他に客人が来てにゃーことも、今入っても大丈夫にゃことも、全部耳で分かってんにゃから」
「そういう問題じゃないだろ…。んで? どうした」
「やっぱヒマにゃ。外に出てきてい?」
「……は?」
「心配しにゃーでも、コイツの監視はちゃんとやるよ? 街に行くつもりにゃけど、コイツも連れてこうと思って」
「…大丈夫なのか?」
「逃がすにゃんてヘマはしにゃーよ」
「いや、それは信頼してるが……。そいつを連れていっていいのかって話だ」
「ガッツリ仕事するわけじゃにゃーから。
ゼンはちらりとオビを見て、小さくため息をついた。
「…分かった。許可しよう」
「ありがとにゃ〜ん」