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11. 守りたいもの
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ラジとの話を終え、白雪とオビは、女中の案内で部屋へと向かった。
「隣がお付きの方のお部屋でございます。私どもは部屋の外におりますので、何か御用がございましたら、何なりとお申し付けください。…それでは」
"キィィ……パタン"
簡単に挨拶だけすると、女中はすぐに去っていった。
荷物は全て部屋に運び込まれている。
「ふう…」
白雪は、やっと肩の力を抜くことが出来た。
すると…
"コンコン"
「お嬢さ~ん」
部屋の出入り口とは違う扉から、オビの声がした。
「あ、は~い、どうぞ!」
答えると、扉が開く。
「やったね、便利だ。続き部屋だよ?」
「凄いね。ミシャの部屋は、オビの部屋の隣だっけ?」
「そ。この扉みたいに、俺の部屋から繋がってる。…ていうか、ここに並んでる5つの部屋、全部繋がってるみたいだよ?」
「5つ全部って……何のためなんだろうね、あはは…」
「さぁねぇ。…ま、とにかく、何かあったら呼んでね? お嬢さん」
「うん。オビもね!」
「ははっ、了解。…んじゃ、俺はミシャの様子見てくるかな」
「凄かったね、ミシャ。乗り物酔いしてたのに、それを億尾にも出さずに」
「今は緊張の糸が切れて、ヘタってるかもしれないけどね」
「すごく具合が悪そうだったら、呼んで? 薬とか、いくつか持ってきてるから」
「了解。それじゃ、また後でね」
「うん」
オビは笑顔で手を振って、白雪の部屋を後にした。
"キィィ……パタン"
扉を閉めると、踵を返し、反対側の扉へと向かう。
"コンコン"
「ミシャー、大丈夫か~?」
声を掛けると、細い返事が来た。
「……入っていーにゃ」
こりゃだいぶ弱ってるな、と苦笑しつつ、オビは扉を開ける。
「失礼~?」
すると、大きなベッドの端っこに、横向きで丸まっているミシャが居た。
「あらら、完全にオフモード…」
いつも寝間着にしている、ノースリーブのカットソーに、ショートパンツ姿。
整髪料を落とすべく髪を洗ったのか、頭はタオルに覆われていた。
顔はタオルに隠れて見えない。
「ちゃんと髪拭かないと、風邪ひくよ?」
オビは呆れたような笑みを浮かべて、ミシャの傍へ寄った。
そっとタオルをめくれば、閉じていた目蓋が薄く開かれる。
緑の瞳が、横目に見上げてきた。
「大丈夫?」
「……にゃわけにゃーろぉ…」
オビは指の背で、ミシャの頬に触れた。
「あらら、こんなに冷えちゃって」
頭を覆っていたタオルで、濡れた髪を拭いてやる。
ミシャは心地よさそうに目を閉じた。
「お嬢さんから、薬貰ってこようか?」
「……いい。……それよりも」
「?」
ゆるりと持ち上がった手が、オビの服の裾を引っ張る。
「…ここ、来て」
「ん、座ればいいの?」
オビは戸惑い気味に、ミシャの頭の近くへ座る。
すると、ミシャはずるずると体を動かして、オビの膝に頭を乗せた。
「!」
「…しばらく、することにゃーろ? …雪ちゃんも、部屋から出にゃーろうし…」
「まぁ、そうだけど…」
「…ちょっとでいいにゃ。…ちょっとにゃけ、こうしてて…」
「……」
オビは何度かまばたきを繰り返し、フっと微笑んだ。
半乾きの髪を、優しく撫でる。
「…いいよ。ミシャの気が済むまで、いくらでもここに居る」
ミシャはうっすら開いていた目を、閉じた。
「…にゃはは……お人好しにゃね…」
「ん~、そこは優しいって言ってよ」
「そうにゃねぇ…。……オビは優しいにゃ」
「……」
まさか素直に言ってくれるとは思わなくて。
オビは一瞬固まった。
そして、押さえ切れない興奮に頬を緩める。
(…護衛役、代わってもらって良かった~)
「……っくしゅ」
小さく身を震わせて、丸くなるミシャ。
「寒い?」
ノースリーブにショートパンツでは、冷えて当然だろう。
オビは辺りを見回した。
「…お、ちょうどいいところに」
近くの椅子の背に、ひざ掛け用と思しきブランケットが掛かっている。
オビはそれを手に取り、ミシャに掛けた。
小さく丸まったミシャは、すっぽりとブランケットに包まれる。
「少し寝たら……って、もう寝てるし…」
薄く開いた唇から漏れている、規則正しい寝息。
(…ホント、外じゃ全然隙ないくせに、何でこういうときは無防備になるのかねぇ)
こっちの気も知らないで…
と、小さくため息をついた。
『お前、気に入られてるんだな』
ふと、ゼンの言葉がよぎる。
(…無防備になるのは……俺、だから?)
そう思うと、再び頬が緩んだ。
…
「…帰ったら覚悟しなよ、ミシャ」
信頼してくれるのは嬉しいが、自分だって男なのだと、知って欲しい。
…それから、夕食に呼ばれるまで、オビはずっと、ミシャの傍に居た。
→ 12. タンバルン
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