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11. 守りたいもの
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翌朝。
星影の門前。
「ほーらミシャ、ちゃんと歩けって」
「ん~……ねむい」
「だから早く寝ろって言っただろ?」
「昨日、遅くに部屋に来たのはオビじゃにゃーか…」
「でもミシャ、まだ武器の仕込みしてたし、寝てるとこ起こしたわけじゃないだろ?」
大荷物を持ったオビと、眠そうなミシャが、城から出てくる。
近場のベンチに座っていた白雪が、笑った。
「ふふっ、眠そうだね、ミシャ」
「ふぁ~ぁ……オビのせいにゃ」
「いや、だから俺じゃないでしょ」
「2人は、今回は一緒に馬車で行くの?」
「んにゃ恐ろしいことに、ミーが
「ってわけだから、ミシャは城の直前まで、俺が馬に乗せてくことにした」
「あはは、やっぱりそうなんだ。…それにしても、一緒にタンバルンに行くのがオビだってこと、
「あー、そう? …まぁ、そうだろうね」
「ん? 何?」
「あー、いや……。お嬢さんさ、付き人が俺にどう決まったかは、聞いた?」
「どう、って?」
「主が話してないなら内緒!」
「えっ、自分で振っておいて」
「まぁ、一番アンタについていたいのは主だってことだけ、教えとくよ」
「は、はぁ…」
「そんじゃ、荷物乗せてくるね~」
オビは馬車の方へ歩いていった。
すると、そこに…
「随分と余裕そうだが、準備は出来ているのか?」
「あ、はい………えっ!?」
ハルカ侯爵がやって来た。
白雪は思わず固まる。
「…何だ? 私が同行することに、何か言いたいことがある顔だな、娘」
「いっ、いえ! そんなことは!」
慌てる白雪とは裏腹に、ミシャは、ハルカ侯爵が同行することを、最初から知っていたらしい。
姿勢を正し、胸元に手を当てて、軽く頭を下げた。
「道中、何卒宜しくお願い致します、ハルカ侯爵」
「あぁ」
そこへ…
「お嬢さ~ん、ミシャ~」
オビが戻ってきた。
「どうかし……たっ!?」
「! お前はっ」
ハルカ侯爵を見るなり、オビはシュッと姿勢を正す。
「これは失礼致しました、ハルカ侯爵。お久しぶりです」
声色も態度も、まるで別人だ。
ハルカ侯爵の眉間に、しわが1つ増える。
「…ゼン殿下の伝令役をしているそうだな」
「は、ご存知で…」
「殿下から聞いている。この娘には、殿下の側近が1人つくと聞いているが、まさかお前か?」
「そうですが…」
「……」
「……」
白雪、オビ、ハルカ侯爵の間に、不穏な空気が流れた。
出会った当初を思い返せば、それも致し方ない。
「お、揃ってるな? 見送りに来たぞ」
ゼンの声が、不穏な空気を打ち消した。
ハルカ侯爵は、鬼のような剣幕でゼンの元へ向かう。
「ゼン殿下! 少々お時間よろしいか!」
「よ、よろしいが…?」
…お小言を言われるゼンを横目に、オビは白雪とミシャに訊いた。
「何で侯爵が?」
「国境近くまで同行して下さるそうです…」
「げっ、そうなの!? じゃあ8日間くらいは一緒ってこと!?」
「あれ? 2人とも知らにゃんだ? 雪ちゃんに細かい作法とか教えるために、同行するんにゃってよ?」
「そうだったんだ…」
「知ってたなら教えとけよ…」
「にゃははっ、やっぱしオビの弱点、ハルカ侯爵にゃね!」
「ん~? あんまり調子に乗ってると~ぉ」
オビの両手が怪しく動く。
地獄の果てまでくすぐり倒すぞと言いたいようだ。
「そ、それは勘弁にゃ…」
「馬車の用意が整いました!」
御者が知らせに来たので、ハルカ侯爵は、まだ何か言いたげながらも、話を終わらせる。
ゼンは、全て右から左へ聞き流しましたと言いたげな顔で、言った。
「では、道中よろしく頼む、ハルカ侯」
「はっ」
見送りに、ミツヒデはミシャの頭に手を乗せた。
「向こうで粗相するなよ?」
「むむっ、ミーを誰にゃと思ってる?」
「ははっ、気を抜いていなければ、それでいい。しっかりな?」
「ほ~い」
「オビ、お前もだぞ?」
「えぇ、もちろん」
ミツヒデがミシャの頭から手を離すと、今度は木々が手を乗せた。
「ミシャが城を留守にすることは多いけど、1ヵ月は珍しいね。頑張りな?」
「ん。キキ
「ある意味、ここ最近で一番の仕事になりそうだよ」
苦笑する木々に、ミツヒデも笑った。
「だな。今から先が思いやられる」
「主が何日でお嬢さんの幻聴・幻覚に襲われるか、見ものですねぇ」
「聞こえるぞ?」
チラリと見れば、ゼンは白雪と話していた。
「あの、ゼン王子、何か、今持っているもので、タンバルンに借りて行っていい物はないですか?」
ハルカ侯爵が居るからか、白雪は敬語で話している。
「えっと、ピンとかボタンとか…」
「ボタン? …時計でもいいのか?」
ゼンは懐から時計を取り出した。
白雪の表情が明るくなる。
「返って来たらお返しします!」
ゼンも釣られるように笑顔になって、小さく頷いた。
「それでは…。……?」
行ってきます、と言いかけた白雪は、近場にイザナの姿を見つけた。
白雪の視線を追ったゼンは、イザナを見つけるなり、警戒心を抱く。
「兄上っ」
イザナはそれをものともせず、微笑むだけ。
「気にするな。ただの見送りだ」
白雪は真っ直ぐに、じっとイザナを見た。
「……」
丁寧に深く一礼し、強い光を湛えた眼差しを向ける。
そして、ゼンの方へ向き直った。
「それでは、ゼン王子、木々さん、ミツヒデさん、行ってまいります!」
白雪に合わせて、ミシャとオビも軽く頭を下げる。
ゼンたち3人は、深く頷いた。
「ああ。行ってこい」
王子2人と、そのほか多くの城の者たち。
豪華な面々に見送られ、白雪たちはタンバルンへと出発した。