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11. 守りたいもの
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イザナから、タンバルン行きの命令を受けた翌日。
白雪とミシャは、朝から稽古に入っていた。
「えーと? お嬢さんとミシャが練習してる部屋は、確かここだったよな…」
"コンコン、ガチャッ"
「失礼?」
「あ、オビ!」
オビが部屋に入ると、白雪が振り返った。
シンプルなドレスの裾が揺れる。
「あ、何だお嬢さんか。一瞬誰かと思った」
いつもと雰囲気が違う。
「いいところに! オビ、練習相手になってくれないっ?」
「…はい?」
何のこと? と首を傾げると、椅子に座ったミシャが、笛を片手に足をぶらつかせた。
「雪ちゃんてば、もう10回以上、センセーの足踏んでるんにゃよ」
「だ、大丈夫です、白雪殿…。初めは誰でも難しいものですから…っ」
部屋の隅でうずくまった男を見て、オビは目をぱちくり。
「あの人が、舞踏の先生?」
「そうなの……何だか、これ以上相手してもらうのが申し訳なくて…」
「なるほどね。ミシャも曲の練習中?」
「んー……まぁ、ぼちぼち…」
気まずそうに目を逸らすミシャ。
白雪が笑った。
「ミシャ、聞いて覚えるのは得意だけど、楽譜読むのは苦手なんだって。さっきからずっと、私の踊りに合わせて、知ってる曲を吹いてるの」
「ははっ、それじゃ新しい曲 覚えられないだろ」
「そ、そのうち本気出すにゃ!」
「ま、ミシャが傍に居るなら、お嬢さんの護衛は任せて大丈夫かな」
「どっか行くんか?」
「これから巳早のお守り」
「港?」
「そ」
白雪が、きゅっと真剣な顔つきになった。
「私も、巳早にはもう1回会って、港の方に情報を探しに行きたいけど…」
「あらあら、たくましいねぇ、主もお嬢さんも…。けど、アンタはこっちのタンバルンの件で手一杯でしょう? 夜会での立ち居振る舞いに食事作法まで、やることた~くさんあるんだから」
「う……」
「美少年のことは、今は俺と主に預けな?」
「オビ…」
「そんじゃ、2人とも練習頑張ってね~」
「うん、いってらっしゃい」
「巳早と仲良くにゃ~」
「ははっ、冗談だろ」
というわけで、オビは巳早を連れ、港までやって来た。
「何? 13歳で、髪を結った美形の少年?」
「これといって見かけた覚えはないが…迷子か何かか?」
「いやあ、ウチの一座の期待の若手なんだけど、俺はいずれ騎士になる男だぁっつって飛び出しちゃってねぇ」
「はははっ、大変だな」
「もし入隊したいだの、城に仕えたいだの言ってくる子供が現れたら、それとなく引き留めといてくれるかな。近いうちにまた訪ねるからさ?」
「おう、気に留めとくよ」
話し終えると、オビは駐屯所を後にする。
「…次だ。片っ端から船を当たる」
駐屯兵たちを相手にしていた時とは違い、巳早には低い声で命じた。
巳早は、明らかな自分への敵意を感じながらも、後をついていく。
「兵士相手なら、王子の指示だって言った方が早いんじゃないの?」
「俺はそういう手段には慣れないんでね」
「慣れない? …そちら、ゼン王子の側近なんですよねぇ?」
「さぁ。…どっちにしても、アンタが主や、主の大事なもんにちょっかい出したら、その襟巻き締め上げて、山に帰してやるよ」
「……っ」
「ほら、ちゃんと周り見てろ」
「…その人相と口の悪さじゃ、城の人間だって言っても信じちゃ貰えないか」
「おまけに襟巻き山猿が一緒じゃぁねぇ」
「んなっ、自分ものくせに襟巻き襟巻きうるせぇな! 大体そっちが着替えろっつったんだろ野良猫顔!」
「おーい船乗りサン、ちょいといいかい?」
「聞けよ!」