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10. 招待状
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3人は揃って、イザナの執務室へとやって来た。
「「「失礼致します」」」
「ん、あぁ、来たか。すまないな、こんな時間に」
「何の御用でしょうか、兄上」
「厳密に言えばお前ではなく、そっちの2人に用があるんだが、白雪の件に関しては、呼ばないと怒ると思ってね」
「…は?」
「白雪、久しぶりだね」
突然話し掛けられ、白雪は固まる。
「! はいっ、イザナ王子!」
「ミシャも、いつもよく働いてくれてるね」
ミシャは慣れているのか、胸元に手を置き、少し頭を下げた。
「恐れ入ります」
「つい今しがた、隣国タンバルンから、2人宛に書状が届いてね。タンバルンで開かれる夜会に合わせて、2人を王城へ招きたいそうだ」
「「!?」」
「以前、あちらの第一王子ラジ殿を、クラリネスに招いたことがあっただろう? ミシャに関しては、夜会の際、ラジ殿の側近殿が、ミシャの笛の腕前に大層感激したそうだ。是非、タンバルンの奏者にも手ほどきをお願いしたいと、書状に綴られていた」
「…光栄でございます」
「そして、白雪、キミを招く理由だが、ラジ殿がこの城へ来城した際、キミに世話になったから、その礼をしたいとのことだ」
「そんな、私は何も…」
「近頃、ラジ殿には、一国の王子としての意識に向上が見えると耳にしている。キミがラジ殿に向けた言葉が、いい薬になったんじゃないかな」
…それは、薬室の傍で偶然出会ったとき。
『でしたら、故郷の王子があなたで良かったと思えるくらいの方になって下さいよ。礼を欠こうがそう願います。タンバルンで生まれた者として』
白雪はそう言い放ち、近くにいたイザナも、それを聞いていた。
「タンバルンとしては、一度キミを見てみたいといったところだろう」
ゼンがハッとする。
「ではっ、ラジ殿の傍に置いて、様子を見るのが目的ですか!」
「えっ…」
「向上が事実なら結構な話じゃないか。親交ある国の次期国王だ。キレ者でも考え物ではあるが、ただの無能では此方が困るだろう? ゼン」
「……っ」
「というわけで白雪、もうひとつ喝を入れてきてくれるとありがたい。滞在は、白雪、ミシャ、共に7日間。明日から出国までは、白雪には舞踏の稽古を受けてもらい、ミシャにはタンバルンの宮廷音楽を覚えてもらう。2人の上司には、私から話を通しておこう」
イザナは、微笑を浮かべながらも冷ややかな瞳で、白雪とミシャを見据えた。
「白雪、ミシャ、2人に、14日後のタンバルン行きを命じる」
ミシャは慣れたように、少し頭を下げた。
「承知致しました」
しかし、白雪は突然の話に固まっている。
イザナの瞳がさらなる冷やかさを湛えた。
「…白雪、返事をしないのは、この話が自分が何かを得られる機会になるとは、考えもしないからか?」
「!」
白雪は我に返って、瞳に熱を灯す。
「いえ、イザナ王子「兄上」
白雪が答える前に、ゼンがその場に膝をついた。
「その命令、私から1つ、条件を出させて頂けますか」
「…条件?」
「白雪の付き人として、私が信頼をおく者を1名、同行させたい。これだけは、譲るわけにはいきません」
真っ直ぐなゼンの瞳。
イザナも真っ直ぐに見返し、フっと口角を上げた。
「…いいだろう。では白雪、いいな?」
「はい。承知しました」
"キイィィ……バタンッ"
3人は部屋を出て、ゼンの執務室へ戻っていく。
その途中…
「失礼致します、ゼン様」
2人の女中に引き留められた。
「どうした?」
「今晩より、白雪様にはお部屋をご用意しております。今からご案内させて頂いても宜しいでしょうか」
「…そうか。ミシャは元々城内に部屋があるが、白雪は別の宿舎…。明日からの稽古で、そこまで戻らなくてもいいように、だな。まったく、やることが早い」
「そんなことまで…」
ゼンはふわりと微笑みを向けた。
「今日はもう遅い。ひとまずゆっくり休め、白雪」
白雪は、不安を押し殺して笑顔を浮かべる。
「そうします。では、また」
「おやすみにゃ~ん、雪ちゃん」
「うん、おやすみ」
ゼンとミシャは白雪を見送り、執務室へと戻った。
待機していたミツヒデ、木々、オビに、イザナから出された命令を話す。
「白雪とミシャが、タンバルンに…」
「あぁ」
「ミーはともかく、雪ちゃんはにゃぁ…」
「他に問題が起きてるって時に…間の悪い」
ゼンは窓の外を見ながら、言った。
「ミツヒデ、タンバルンへの同行、お前に任せる」
「はい」
「それと、ミシャ。お前も向こうでは忙しいと思うが、出来るだけ白雪の傍についてやってくれ」
「了解にゃ」
突然舞い込んだ不穏な話と、好機な話。
当事者たちの不安など露知らず、夜は静かに更けていった。
→ 11. 守りたいもの