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10. 招待状
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しばらくして、白雪が連れてこられた。
木々とミツヒデに巳早の監視を任せ、ゼンとオビとミシャは、白雪と話をする。
「えっ、それで来てるの!? 今!?」
「あぁ。隣の部屋に」
「そ、そっか…」
「ミシャ、確かお前、あの男の素性を知ってるんだよな」
「知ってるっても、元の肩書きにゃけにゃよ。いろいろと不正をやらかして没落した、元伯爵シスク家の三男」
「…シスク家、か」
「アイツはもう一度、かつての富と名声を手に入れようと躍起ンにゃってる。…自分のためにゃら手段を選ばにゃー。根っこからそういう奴にゃよ」
冷めた色を浮かべるミシャの瞳。
オビはその瞳をチラリと見た。
(主は珍しく堂々と嫌ってるし、何より、ミシャに殺意向けた奴だ。…アイツは敵だな)
「白雪、お前は見たくない顔だろうが…」
「うん……。……でも、私のことで何か話があるんだよね?」
「奴の言葉を信じるなら、な」
「信じるも信じないも、話を聞いてみなきゃ始まらない。会うよ」
真っ直ぐな白雪の目に、ゼンは負けたとばかりに苦笑する。
「まぁ、そう言うと思ったよ」
というわけで、白雪も加え、巳早と話しをすることになった。
「お、久しぶりだな~白雪。何だ、髪伸ばしてねぇの?」
「…お、おかげさまで」
白雪は気まずそうに目を逸らす。
その隣に、ゼンが椅子を持ってきて座った。
「さぁ、これでいいだろ。話せ」
「早っ……まぁいいや。いきなりだけど、白雪、外見13~14歳の、薄茶色の髪をした美少年の知り合いって、いる?」
「え、薄茶色の髪…?」
オビが白雪の耳元で囁く。
「美少年だってよお嬢さん、美少年」
「シュカ君…は、14歳には見えないか」
「あぁ、ラクスド砦の見習い君?」
「あれ、心当たりあんの? そいつって、アンタが城に居ること知らねぇ?」
「知ってるけど…」
「じゃあ違う。別の奴だよ」
ゼンが眉をひそめた。
「お前、何の話がしたいんだよ」
巳早は、過去を遡るように視線を巡らせる。
「俺、この間ようやく牢から出まして。金が底をついたので、稼ぎに出ようと、とりあえず船に乗っていたら、何の縁だか、赤い髪の娘を探してる小僧が居たんですよね」
「赤い髪…」
「ま、白雪のことだろうなと思いまして、隣国タンバルンの有名バカ王子の愛妾騒ぎの話をしてやったんですが、それは知っていたようで…。昔、赤髪の子が山で迷子になってたから、保護してやったら、ウィスタル城から迎えが来たって話したんです」
「「んなっ」」
「仮に俺が話さなくても、白雪が城にいるんなら、そのうち辿られましたって。…それで殿下」
「…何だ」
「この情報の見返りといっては何ですが、まとまった金か、それが無理なら、しばらくここで俺を雇って下さい」
何かがピシっと割れる音を、ミツヒデは聞いた。
「それが用件か!」
「ちょっ、殿下っ、おさえて!」
巳早はビビりつつも言う。
「あー、聞き出した相手の情報も、まだ持ってますよ?」
「ぁあ?」
「今の話に乗って頂けるのでしたら、申し上げます」
「…この野郎」
ミシャの言った通りか、と、ゼンは頬をひくつかせた。
白雪は、自分のことでゼンたちを巻き込むまいと、立ち上がる。
「ま、待った!」
その肩に…
「……オビ?」
オビが手を乗せ、制した。
ゼンが、先ほどとは打って変わって、冷ややかな目で巳早を見下ろし、言う。
「お前は信用できない。情報が先だ」
巳早は、そう簡単にはいかないか、と言いたげな目つきで、答えた。
「そいつの名前と、白雪を探している理由です。名前は鹿月。理由の方は、白雪には城なんかよりふさわしい場所があるから、と」
白雪はドキッとする。
「それ、どういう…」
「白雪、アンタ、またその髪のせいで、何かに巻き込まれてるんじゃねぇの?」
「……っ」
「俺だってアンタを、"ラジ王子が手に入れられなかった品"として、どっかに献上すりゃ、稼げると思ったんだからさ」
白雪の顔色は、いつもの色白を通り越して、真っ青になっていた。
…その後。
巳早はしばらく、城内に留めておくことになった。
「えーと、ゼン、顔怖いよ?」
「…そうか?」
ゼンの眉間には、いつにも増して深いしわ。
オビが笑って言った。
「そりゃ不機嫌にもなるって。アイツの話が本当なら、その謎の美少年は、お嬢さんを連れ去ろうと企んでるんだから」
ゼンはため息混じりにミシャに問う。
「ミシャ、薄茶色の髪で、カヅキって名前の少年に、心当たりはないか?」
オビが付け足す。
「それも美少年のね」
ミシャは首を横に振った。
「髪色と名前の合う奴はいにゃーね。カヅキって名前にゃけにゃら3人いるけど、全員、髪色は黒か濃い茶色にゃし、お世辞にも美少年とは言えにゃーよ」
「そうか…。相手の顔を知ってる
「美少年をね」
「他に情報もない…」
「美少年ってこと以外ね」
「オビ! お前さっきからやかましいぞ! そこはどうだっていいんだよ!」
「やだな主~、大事な手掛かりですよ?」
2人のじゃれ合いを、どこか遠くに聞きながら、白雪は目を伏せた。
(……連れ去る、か…)
タンバルンでラジ王子に。
クラリネスで巳早に。
どこへ行っても、自分はそういう運命からは逃れられないのだろうか…
「白雪?」
「! は、はいっ」
思わず肩を揺らして顔を上げると、ゼンが優しい笑みを浮かべていた。
「まだ何も分からんが、1人で考えるなよ? 不安になったら、構わず言え」
「ゼン…」
と、そこに。
「ゼン! 白雪! ミシャ!」
ミツヒデが走って来た。
何やら慌てている様子。
「どうした? あの男、何かやらかしたか?」
「いや、巳早は大人しくしている。元貴族だけあって、城内での振る舞いは心得ているらしいからな。……そうじゃなくて、別件だ。ゼンと白雪、それにミシャも、イザナ殿下がお呼びだ」
ゼンと白雪が驚くのはもちろん、ミシャも目をぱちくり。
隣にいたオビと、目を見合わせた。
「
「珍しい組み合わせだねぇ」
ミツヒデが、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「…とにかく、3人ともだ」