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9. 共に歩む決意
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食事を終えて、外に出た6人。
木々が、掲示板の貼り紙を見かけた。
内容を一瞥し、指をさす。
「…これ、少し見てきていい?」
ミツヒデが立ち止まった。
「ん、剣の試合か。俺も覗いてこうかな…。オビ、ミシャ、お前らも行くか?」
「何にです?」
「試合だ。剣の」
「あぁ、いいですけど」
「そういうの久しく見てにゃーね~」
2人は木々とミツヒデと一緒に、試合を見に行くことにした。
ミツヒデはゼンと白雪を振り返る。
「2人は……まぁ、この辺で待っててくれ! ちょっと見たら戻るから」
ゼンは思った。
(2人きりにされたな…)
白雪は全く気付いていないらしい。
「いいの? 剣の試合だってよ?」
「まぁ、アイツらが出るわけじゃないし」
ゼンは、4人の厚意に甘え、白雪と2人の時を楽しむことにした。
「お、やってるやってる。だいぶ手練れが集まってるなぁ」
「剣術の参考になりそうだよ」
「休みの時までそんなことを…」
ゼンと白雪を2人にして、4人は、集まった見物人たちに混じり、試合を観戦し始めた。
「この活気こそ、この街の醍醐味にゃねぇ」
ミツヒデがミシャを見下ろして訊く。
「ミシャ、肩車してやろうか? そこからじゃ見えないだろう」
「んーにゃ、肩車してもらっても、どうせ見えやしにゃーよ。音だけでも分かるから」
「そうか?」
「…あれ。オビは?」
木々に訊かれ、ミツヒデとミシャは辺りを見渡した。
「そういえば、いないな…」
「……」
ミシャは、オビの残り香がする辺りを見つめる。
「珍しいね。ミシャならすぐに気付くと思ったけど」
「…人が多いからにゃあ。いくらミーの耳でも、これだけ人がいれば、忍び足は聞き取れにゃーの」
「となると、居場所は分からないか…。手分けして探そう」
「んーにゃ、大丈夫。まだ匂いで追える」
「え?」
「連れ戻してくるにゃ。2人は、このまま試合見てて」
「あ、おい!」
ミシャは人混みの中へ駆け出していった。
ところ変わって、飛び入り参加OKの、武術大会の会場にて。
「よ~し、次が決勝か~。案外と楽勝だったな」
オビは、控えの選手たちに混じって、次の決勝で自分と戦うのは誰になるだろうかと、試合を見ていた。
すると…
「にゃーにしてんの?」
「!」
背後に、突然気配が現れた。
…何だか、初めて会ったときの、背中に刃を突きつけられた時と同じ感覚。
「あらら、見つかっちゃった。よくここが分かったね、ミシャ」
振り向くと、大きな緑色の瞳と視線が合う。
「言ったにゃろ? 耳で追えにゃーときは、鼻で追うって」
「ん~、この人数なら、耳でも鼻でも追って来られないかな~と思ってたんだけど」
オビは両手を頭の後ろに組み、飄々とした顔で試合を見つめる。
「…オビ」
「ん~?」
「逃げたくにゃった?」
「……」
ミシャは、オビの背中をじっと見上げた。
「1ヶ所に留まるの、苦手にゃろ」
「……」
「重い? その首飾り」
「……」
オビは、『第二王子付伝令役』と書かれた身分証の、紐を掴んだ。
銀のプレートが、目の前で揺れる。
「…ほんと、俺なんかにこんなもんくれちゃってさ」
「……」
「どうしたもんかねぇ。何にも執着せず、どこにも所属せず、そうやって身軽にどこへでも行けるのが、俺の長所だったのに」
「勘違いしちゃいけにゃーよ?」
「?」
ミシャはオビの隣に並び、試合を見つめた。
「お前の身軽さは、どこにでも行けるとこじゃにゃーから。いつでも、自分の好きにゃとこで、好きにゃことするために、過去に縛られにゃーとする心の身軽さ。それこそが本当の長所にゃよ」
「……」
オビは目を見開いてミシャを見下ろす。
「お前は今まで、ずっと居続けたいと思える場所に巡り合えにゃーったから、どこか1カ所に長居するのが怖いんにゃろ。…けど、その首飾りを恐れることはにゃーよ。離れたくにゃるまで、ずっと居ればいいんにゃ。たとえ根っこが生えようが
歓声が巻き起こり、決勝進出者が決まった。
ミシャはニシシっと笑って、オビの背中をバシッと叩く。
「ほ~れ出番にゃよ!」
「え、あ、あぁ…」
「ちゃ~んと優勝して、ちゃ~んと帰ってきにゃ、ナナキ?」
オビは見開いた目でまばたきを繰り返すと、フっと微笑んだ。
「知ってたのかよ、俺の偽名」
「さっき対戦表で見た。にゃははっ。ミーをナメんにゃって」
「…そうだな」
ナメてかかれるわけがない。
(…そろそろ、覚悟決めるか)
オビはぐいっと伸びをして、決勝戦へ出ていった。
…始まった決勝戦を見ながら、ミシャは自嘲気味な笑みを浮かべた。
(あんにゃこと言って…)
オビに掛けた言葉。
本当の部分もあるが、だいぶ自分の願望も入っていた。
(…あれが的外れにゃったら、失望して出てっちゃうかもにゃあ…)
剣の試合の観戦中、オビがいなくなったと気付いたとき、心臓がヒヤリとした。
…思い出した。
オビは、ミツヒデや木々とは違う。
いつ、ゼンに身分証を突き返し、手の届かない場所へ行ってしまうかも分からない存在なのだ。
…そんな浮雲のような存在に、いつの間にか寄りかかって、離れたくないと思っていた。
浮雲を何とか自分の空に繋ぎ止めようと、あんな言葉を連ねた。
(…我が儘にゃねぇ、ミーも)
「そこまで! 勝者、ナナキ!」
会場が湧いた。
優勝者が決まったのだ。
オビは賞金と賞品を受け取って、ミシャのところへ戻ってくる。
「言われた通り、優勝してきたよ?」
スッキリしたような笑顔のオビ。
対してミシャは、作ったような笑顔を浮かべた。
「おめでと」
「ミシャ」
「?」
真っ直ぐに見下ろしてくるオビの瞳を、ミシャは不思議そうに見上げる。
「俺、決めた」
「
「これ、俺から手放すことは、しない」
「!」
揺れる、オビの身分証。
「それともう1つ…」
「?」
オビはミシャの頬に手を添えた。
「…こっちは、また日時と場所を改めて」
目の前で、ニヤリと上がる口角。
ミシャは何度か瞬きを繰り返し、やがて、半目で首を傾げた。
「
「ん~? あはは~。何だろうね」
「相変わらずにゃね、お前」
そう言ってため息をつきながらも、ミシャは内心、浮かれていた。
自分から身分証を手放すことをしない。
それはつまり、主であるゼンから解雇されるまでは、この場所に居続けるという宣言…
「あ、そうだ。こんなの貰ったんだけど」
「?」
オビは、賞品として渡された小箱を開けた。
「異国の髪飾りだって」
シャランと、鈴らしき飾りが揺れる。
「ミシャ、つけない? 似合うと思うよ」
「ん~、せっかくにゃけど、無理にゃ」
「何で?」
「その音、耳元でずっと
「あらら、残念。……それじゃ」
「!」
オビはミシャの髪を掻き上げた。
「ここに似合う、音のしないやつ、見つけてくるね」
そう囁いて、耳に口づける。
すると…
「……み」
「ん?」
「耳に触るにゃっていつも言ってんにゃろーがぁ!」
「うおっ!?」
ミシャは真っ赤な顔で激昂し、襲い掛かって来た。
オビは慌てて逃げ出す。
「待てこにゃ! 今度こそ後ろからめった刺しにしてやる!」
「あーはいはい、ごめんて!」
笑いながら逃げるオビ。
ミシャはそれを追いかけながら、何度も耳をこすった。
(…早く冷めろにゃ……っ)
耳に触れられるのは、昔から苦手だ。
…けれど、こんなにも熱くなるのは―――。
2人はしばらく、闘技場の中で追いかけっこをしていた。