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9. 共に歩む決意
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馬車や馬に揺られること数時間。
6人は、ユリカナという街までやって来た。
白雪が辺りを見渡して、目を輝かせる。
「わぁ、賑やかな街」
ミシャが笑みを浮かべて言った。
「お祭り好きの集まる街にゃからね。舞台に闘技大会はもちろん、露店も所狭し、ここは年がら年中お祭り騒ぎしてるんにゃよ」
「そうなんだ」
楽しそうな街だな、と思いながら、白雪はフードをかぶった。
「あれ、何お嬢さん、外だとそんなんかぶってんの?」
オビに訊かれ、白雪は笑顔を見せる。
「うん。場所にもよるけど、人が多いところでは、この方が歩きやすいからね」
「へ~。そういや目立つんだっけ、お嬢さんの髪」
「まぁね。あはは」
"チリーン、チリーン"
どこからか聞こえてきた鈴の音に、ミツヒデが振り向いた。
「おっ、向こうで何か始まるみたいだぞ。行ってみるか、白雪、木々」
「あ、本当ですね! 何でしょう」
「劇団かもしれないね」
3人は鈴の鳴る方へ歩いていった。
それを見送り、オビはゼンに訊く。
「お嬢さん、前に外で危ない目にでも遭ったんですか?」
「……」
「ははーん、それじゃ隠してても何も言えないですねぇ」
「…まったくな。阿呆がいて困る」
ゼンは、楽しそうに催し物を見ている白雪を見つめ、フっと笑みを浮かべた。
「…綺麗なのにな」
オビは、傍に居たミシャと目を見合わせて、2人して半目になる。
「俺らにそんな口説き文句言ってないで、デート気分でも味わったらどうですか? 主」
「デ!?」
「ゼンってばそういうとこ抜けてるにゃあ。こうやって大人数で遊ぶのもいいけど、今度は雪ちゃんだけ誘って、2人でお出掛けしてきにゃよ」
「…そ、そういうものなのか? ……いや、だが、で、デートって、一体何をすれば…」
オビは視線だけで、ミシャに、マジで? と訊いた。
ミシャは、マジにゃ。と、半目とため息で答える。
ことあるごとに城の外へ遊びに出てきたゼンだが、俗に言う女遊びのようなことをした経験がないため、初めて出来た恋人と何をすればいいのか、いまいち分かっていないのだ。
「ん~そうですねぇ。ありきたりですけど、2人で色んなもの見て回ったり、お嬢さんの欲しいものを買ってあげたりとか…」
「……何だ? 欲しいものって」
「知りませんよそんなの」
「それを考えたり探ったりするんも、1つの楽しみにゃろ?」
「さ、探る!? そんな真似できるか!」
「一体どんな"探る"を想像したんですか…」
「っとにもう、図体だけ大っきくにゃって、中身は子供のまんま…」
「ミシャには言われたくない!」
そこに、催し物を見終わった3人が戻ってきた。
どうやら、一時的なパレードだったようだ。
「何をミシャに言われたくないの? ゼン」
「白雪っ……。……何でもない」
「?」
頬を僅かに赤くして、気まずそうに目を逸らすゼン。
白雪は首を傾げた。
オビとミシャは目を見合わせてニヤける。
オビが気を取り直して、と言いたげに提案した。
「ま、とりあえず、メシにしません?」
ミツヒデが手持ちの時計を見る。
「そうだな。まだ朝も食べてないし」
「そんにゃら、ミーが美味しいお店、案内したげるにゃ!」
というわけで、諜報員ミシャの一押しの店にやって来た。
「…って、酒場じゃねぇか」
半目で店内を見渡すゼン。
「にゃからいいんにゃろ? 城じゃ出てこにゃー料理が盛りだくさんにゃあ!」
満面の笑みで空席を探すミシャ。
そこに…
「おや? チェルじゃないか!」
店の店員と思われる、恰幅のいいおばさんが近づいてきた。
「あ、おばちゃ~ん!」
一瞬でミシャの声が低くなる。
オビはデジャヴ感を覚えた。
「出た、笛吹きのチェル…」
ずっと前、まだミシャの監視下にあった頃、城下町に出た時に、食事処で同じようなことがあった。
「何だい、随分と久しぶりじゃないか。うちの旦那と心配してたんだよ? どこかで野垂れ死んでやしないかって」
「なっはっはっ、ウチが死ぬわけないやん」
楽し気に話すミシャ。
白雪は唖然とした。
「何だか、ミシャが別人みたい…」
ミツヒデが苦笑して答える。
「アイツは諜報員として、いろんなところに潜り込むからな。上手く潜り込めるよう、偽名や偽人格を使い分けてるんだ」
「そうなんですか」
ゼンも苦笑する。
「毎度毎度、鮮やかな手並みだな」
オビは両手を頭の後ろで組んで、笑った。
「また笛の演奏とか頼まれたりして」
そこに、話を終えたらしいミシャが戻ってきた。
「2階の空いてる席、いいって!」
6人は2階に上がった。
ミシャのおすすめを参考に、料理を片っ端から注文する。
「いや、ちょっと待て、多くないか?」
「おばちゃんが、サービスにゃって!」
「つっても多すぎだろ…」
「まぁいいじゃないか。ちょっと早いけど昼飯ってことにして、あとは夕方に何か食えば帳尻合うだろ」
「ミツヒデ、お前そういうところは大雑把だよな…」
「「カンパーイ!」」
「オビとミシャは既にお酒開けてるけど…」
「白雪、チーズは平気? 大丈夫なら取り分けるけど」
「あ、はい。好きです。ありがとうございます、木々さん」
「好き嫌いといえば、ゼンは昔、牛乳飲めなかったよなぁ」
「ゴフッ、ミツヒデお前っ」
「牛乳~っ? ぶはははっ、マジですか主!」
「笑うなオビ! 昔だ昔!」
「そういえばあったにゃ~。『テーブルの下に潜んで、俺の代わりに牛乳飲め』って命令されたときは、さすがにゼンの正気を疑ったにゃ」
「なっ、そんな昔のこと…っ」
「あれミシャが飲んでたのか? いつも、俺が食後のデザートを取りに出て、戻ってくると、牛乳のコップだけカラになってたから、不思議には思ってたんだ」
「ぎゃははっ、マジですか主! つーか、その割にミシャはこれかよ!」
「頭叩くにゃ!」
「こら、暴れるな2人とも。ゼンも気にすることはないぞ? お前だってそんなに低いわけじゃ「やかましい!」
「まぁ高くもないですもんね~」
「うるさいわ!」
じゃれ合う4人に、白雪は笑い、木々はすました笑みを浮かべていた。