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9. 共に歩む決意
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"ガララ…"
オビとミシャが薬室にやってくると、白雪とリュウは何やら作業中だった。
「ルコの実、炒ってきました」
「…じゃあ、擦り潰して」
「はい」
ミシャは顔をしかめて鼻をつまむ。
「いつにも増して薬草くしゃい…」
「お嬢さんたち~、何やってんの?」
オビが訊くと、白雪は口元に人さし指を立てた。
「薬膳茶の調合。薬室長が徹夜続きで体力の限界なんだ。そのせいで機嫌も悪くて…」
「…美味しいお茶を飲めば、機嫌直るから、薬室長」
「紅茶とかじゃダメなの?」
「そこは薬室だから、薬膳茶にするよ」
白雪とリュウは、様々な薬草をポットに詰めて、お湯を注いだ。
それをグラスに注ぐ。
「出来た!」
効能としてはバッチリ。
あとは味だ。
「スンスン……ミー、絶対飲まにゃー、これ…」
ミシャがとんでもなく嫌そうな顔をする。
「そんなに酷い匂い?」
「ひどいっていうか、美味しくにゃー匂いがする」
白雪とリュウとオビは、薬膳茶を試飲した。
「うっ、にがずっぱい…」
「ほらにゃ?」
「ジュリアの花と、氷砂糖を溶かしたら?」
「…それじゃ薬効が半減するよ。もっと効能の近い種類を混ぜないと…」
「ロカは?」
「「?」」
オビが薬膳茶の匂いを嗅ぎながら言った。
「香りが似てるし、あれ甘いんでしょ?」
「…湯に溶いたことはなかったけど……」
試してみる価値はあるかもしれない。
というわけで、ロカの実をいくつか取って来た。
それをグラスに入れ、先ほどのお茶を注ぐ。
「ん、今度はいい匂い!」
ミシャの瞳が輝いた。
リュウがフっと笑みを浮かべる。
「…ミシャが言うなら、成功かな」
3人は再び試飲してみた。
「わっ、おいしい!」
白雪が笑顔を浮かべると、オビは親指を立ててみせた。
「オビっ、ミーも飲む!」
「ん? はいよ」
下から伸びてきた手に、オビは自分のグラスを渡した。
ミシャはそれを一口飲み、ふわっと表情を輝かせる。
「これいいにゃ~っ、ミーでも飲める」
「薬膳茶は苦手なのか?」
「色んにゃ匂いがし過ぎるからにゃあ。今まで1つも飲めにゃんだよ」
「そっか。良かったな」
オビはポンと、ミシャの頭に手を乗せた。
そこへ…
「ん……ん~…」
部屋の奥で仮眠を取っていたガラクが起きてきた。
「んぁー……仕事しなきゃ…」
白雪がお茶を注いで差し出す。
「薬室長、ロカ茶です!」
「ロカ茶…? ……ん、いい香り」
ガラクはグラスを受け取って、一口飲んだ。
途端、表情がパァっと明るくなる。
「美味しい」
「そうですか! 良かったです」
「これ、子供用の炎症を抑える薬を溶かすのに使えるわね。薬の苦みを抑えるのにちょうどいい甘さだわ」
リュウが顎に手を当てる。
「…そうか。薬が苦手な子供って、多いんだっけ」
「それにしても、ロカ茶なんてよく思いついたわね」
「オビの考えなんです」
「え、俺?」
「そういえば、白雪君と一緒にロカ園に行っていたねぇ」
「いやいや、素人の思いつきですよ」
「白雪君とリュウだけじゃ、このロカ茶は出来なかったかもしれないわ。影響し合えるいい関係なのね、あなたたち。自分の世界が広くなるものは、大事にしなさい?」
「はい!」
その後、薬室は通常通りに業務を始めた。
オビは薬草の採集でも無い限り暇なため、階段に座って適当に興味のある本を読みつつ、時間を潰す。
ミシャは、ガラクの薬剤調合実験に鼻を貸していた。
「んにゃっ、これ臭いっ!」
「少しの我慢よ。収穫した時期によって薬効の異なる種なの。本当はひとつひとつ調合して、長い実験期間を設けないと、どの時期がどのくらいの薬効になるか分からないものなんだけど、薬効が強いほど、匂いも強くなる傾向があるって分かったの。それで、ミシャの鼻なら、きっと嗅ぎ分けられると思って」
「む~~~っ」
「どれがどのくらいの匂いを放ってるか、教えてちょうだい? 後でセツカの実のハチミツ漬け、あげるから」
「はぁい…」
ミシャは顔をしかめたまま、並べられた草の実に鼻を近づけた。
「んむ……左から3番目、一番強い。その両隣りが半分くらいの匂いで、さらにその両隣りが半分。右端の2つは、さらにその半分」
「ふむふむ、7月のものが最も強く、6月と8月は1/2、5月と9月が1/4で、10月11月は1/8か……。なるほど。ありがとう」
ガラクは部屋の奥から、セツカの実とハチミツがギッシリ詰まった瓶を取って来た。
その中から1粒、楊枝に刺して、ミシャに渡す。
「はい、ご苦労さん」
ミシャは実を受け取って匂いを嗅ぎ、安堵したようにため息をついた。
「んにゃ~生き返る」
のほほんとした顔で、実を齧り始める。
階段に座っていたオビは、いつの間にか本から顔を上げ、膝に頬杖をついて、ミシャを見ていた。
「それ、
「うん? うん。甘くておいしいよ」
カリカリと、ミシャは実を齧りながら、ご機嫌な顔をする。
ガラクが記録を付けながら言った。
「それはとても栄養価が高くてね。風邪だったり体調が悪い時に最適なのよ。あまり食べ過ぎるとダメだけどね」
「へぇ~」
「オビも食べる?」
ミシャは近くへ歩み寄って、オビの膝に手をつき、実を差し出した。
近いなー、なんて思いながら、オビはフっと口角を上げる。
「いいの?」
「一口くらいにゃら」
「…そんじゃ、頂きます」
オビはミシャの手に自分の手を添え、食べかけの実に齧りついた。
「…ん、想像以上に甘っ」
「にゃははっ、美味しいにゃろ?」
「ん~……俺甘ったるいの苦手だからな~」
「そにゃの?」
ミシャはオビの隣に座って、引き続き実を齧った。
(へぇ、間接キスとかは気にしないのか)
オビは膝に頬杖をついたまま、横目にミシャを見下ろす。
(テンパるのは、耳触られた時と、くすぐられたときぐらいか……いや、あの時も…)
夜会の前、勢い余って口づけそうになったときは、さすがに動揺しているようだった。
(けどま、その後こうして何事もなく普通にしてるから、よく分かんないな)
じっと見ていたからか、視線に気づいたミシャが見上げてきた。
緑の瞳と視線がかち合う。
「ん? にゃに?」
「ん~? いやね、甘いモン好きなのに、酒の好みは辛口なんだな~って」
「食べ物と飲み物は違くにゃーか?」
「俺、その辺けっこう近いから」
「ふ~ん」