夢主の名前を決めて下さい。
8. ユリスの鳥
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の夕刻。
クラリネスの連絡手段に関する考試が行われることとなった。
「考試内容は以下の通り。城より西に直線で約10kmの地点、馬で往復40分を要するココクの見張り台に、文書を持たせた鳥を飛ばして、見張り台に居る者がその文書に署名をしたあと、鈴を一緒につけて城へ帰す。これらを確実に25分以内に行うこと。条件を全て満たせば認定とし、満たせない場合は白紙とする。鳥使いはキハル殿。補佐役は白雪殿。見張り台には、監視役として、兵士3名と伝令役2名を同行させる。以上だ」
キハルと一緒に、白雪が壇上に上がる。
すると、子爵が笑った。
「はははははっ、なるほど、何故急にこんな突拍子もない話が上がるのかと思えば、殿下のご友人を味方につけるとは、考えたなぁ、トグリル?」
「で、殿下のご友人っ?」
「フン、まったく小賢しいことだ」
白雪は思わず反論する。
「それとこれとはっ「ブレッカ子爵」
白雪を制するように、ゼンが口を挟んだ。
「今はクラリネスにとって有益か否かの提案をしている。貴殿にも国の諸侯のお1人として、きちんと見定めて貰いたい」
「っ……では殿下、私もココクの見張り台に同行させて頂きたい。疑うわけではありませんが、娘らに不正があっては、陛下の面目が立ちますまい」
ゼンは、チラリと白雪を見た。
白雪は自信を持って、笑顔を返す。
ゼンは小さく頷いた。
「では、ブレッカ殿、白雪殿、兵士3名は、ココクの見張り台に移動! 午後4時にこの場から鳥を飛ばし、開始とする!」
午後3時半頃。
白雪は、ブレッカ子爵や兵士たちと共に、ココクへと出発した。
馬の足で20分もあれば着くだろう。
それを見送った後、ゼンはオビとミシャを呼び寄せた。
「…お前らを伝令役に選んだ理由、分かってるな?」
「勿論ですよ」
「頼んだぞ」
「了解にゃ」
…本当の目的は、ブレッカ子爵の監視だ。
「ミシャって、馬乗れるの?」
「乗れるよ? でも、今回は一緒に乗っけてって。もう一頭引っ張ってくるの面倒にゃから」
「もちろん、喜んで」
オビは馬を一頭引いてきた。
ミシャは、その馬の首筋を撫でる。
「よ~しよし、ココクまでよろしくにゃあ」
馬の装備を整えていたオビは、ふと、気になったことを訊いた。
「ミシャって、どうやって馬乗るわけ?
言わずもがな、ミシャは小柄だ。
足を掛ける
「乗るときは長くしといて、乗ってから調節するとか?」
「そんにゃの毎回やってたら面倒にゃんか。跳んで乗るんにゃよ。こうやって…」
ミシャは両手を伸ばし、馬の背に乗せた。
その場で軽くピョンピョンとジャンプしてから、勢いをつけて、一気に馬の背より高い位置まで飛び上がる。
そのまま、ストンと馬の背に座った。
「こんにゃ感じ」
大きな馬に、小さなミシャ。
オビは思わず笑った。
「ふっ、くくっ、はははははっ」
「むっ、にゃに笑ってんにゃ!」
「だってどう見ても、無理やり馬に乗せられた子供にしか見えないから、はははっ」
オビは
身長差ゆえか、ぴったりはまる。
「お、ちょうどいいサイズ感」
「ん、ちょうどいい背もたれ、にゃはは」
「俺は椅子かよ…。手綱握る?」
「んーにゃ。オビに任せる」
「はいよ」
オビは手綱を握り、馬を走らせた。
馬は風を切って駆けていく。
「わっふ~い、快適快適~!」
ミシャは両手を挙げてはしゃぎ、べったりとオビに背を預けた。
「おーい、ホントに背もたれにしないでくれる~?」
「ん、
「ちゃんと人間扱いして~って言った」
「……」
「ん、あれ?」
何故か、ミシャは何も言わずに振り返り、緑の瞳でじっと見上げてきた。
わけがわからず、オビは首を傾げる。
「どしたの? ミシャ」
訊くと、ミシャは眉根を下げて笑った。
「やっぱ馬に乗ってると、にゃーんも聞こえにゃーね」
「え、そうなの?」
「こうやって後ろ向いてれば、唇の動きで分かるけどにゃあ」
「……あ、蹄の音か」
ミシャは言わずもがな、耳がいい。
馬に乗っている間は、蹄の音が絶えず響き、声がかき消されるのだ。
「いつもどうやって馬乗ってるの? 見えないし聞こえなかったら無理でしょ」
唇の動きからオビの言葉を察したミシャは、指先でチョンと、自分の鼻先に触れた。
「匂い」
「え、うそ、馬に乗ってても?」
「障害物は風の流れで、川とかは水の匂いで分かるんにゃ。…そもそも馬乗ってるときにゃんて、障害物の少ない開けたとこ走ってるから、そう難しくにゃーよ」
「は~、相変わらず超人…。んじゃあさ…」
「?」
「こうしてれば、会話できる?」
「!」
オビは片腕でミシャをぎゅっと抱きしめ、耳元で話してみた。
「ね、どう?」
「……き、聞こえる、けど…」
吐息がかかるくすぐったさで、カァっと赤くなる耳。
オビは悪戯な笑みを浮かべた。
「そっか。じゃあ、馬に乗ってる間は、こうやって話そう」
「にゃっ、そ、それは…」
「だって、ずっと後ろ向いてるのは危ないでしょ?」
「……け、けどっ」
「うん? 何か問題あるの?」
ミシャが懸命にくすぐったさに耐えていると分かっていながら、オビはわざと、ミシャの耳元で話し続けた。
「なーに? 何かダメなの?」
「に、にゃんもにゃー…」
「なら、いいよね」
オビは両手が塞がっているため、頭を撫でる代わりに、鼻先で、コツンとミシャの頭に触れた。
(…いい匂い)
眼下でふわふわ揺れている白金髪。
揺れに合わせて、甘い香りが漂った。
「っ……くっつきすぎにゃろ!」
「ん~? だって、落ちたら大変だし」
「お、落ちるわけにゃーろお! ミーも馬乗れるんにゃから!」
「まぁまぁ。もしもの保険ってことで」
オビはきゅっと、腕に力を籠め、ミシャの髪に鼻を埋めた。
「…ワケ分からんにゃっ」
湖に着くまでの間、ミシャは必死に、くすぐったさに耐えていた。