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8. ユリスの鳥
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翌朝。
「ふぁ~ぁ……
ミシャは、朝からゼンに呼び出され、オビの迎えで執務室へ向かっていた。
「昨日の夜にお嬢さんが、鳥を飛ばす技を何とか使えないかって、主に相談してさ。主は連絡手段にどうかって考えついたわけ」
「へー」
「んで、ミシャが昨日、誰でも鳥を飛ばせる笛を作っただろ? それに関しても、話を聞きたいんだってさ」
「んー……眠い」
「話終わったら寝ていいからさ」
「んー…」
ミシャは半分閉じた目で、執務室までやって来た。
"コンコン、ガチャ"
「主、連れてきましたよ」
「遅い」
室内には、ミツヒデと木々は勿論、キハルもいた。
「それで、キハル殿。本当に笛1つで、鳥を意思通りに飛ばすことが出来るのか?」
「あ、はい。修練を積んだ島の者は皆…。そうでなくとも、昨日彼女が作ってくれたこの笛であれば、誰でも飛ばせます」
ミシャは、ブレッカ子爵の手前、敬語でゼンに説明する。
「ちなみに、その笛はポポちゃん専用です。キハル殿の持っていた笛と、同じ音になるように削ってありますので。鳥ごとに覚えさせる音を区別しなければならないので、鳥1羽に対して1つ以上、笛を作る必要があるようです」
「なるほど…。遠くへ飛ばす場合、どの程度の距離を飛ばせるんだ?」
キハルはビクっと肩を揺らした。
「えっと、島では、漁で沖に出た船に、よく飛ばしています」
「それは、どうやって船の位置を?」
「これです」
キハルはポーチから、胡桃石の鈴を取り出した。
ミシャの耳がぴくぴく動く。
「それ、ハルちゃんの笛の元になった石と、同じ石から削り出した?」
言葉が標準語になっていて、キハルは一瞬戸惑ったが、表情には出さなかった。
「う、うん。よく分かったわね…」
「同じ音がするからね」
キハルはオビに向けて、鈴を差し出した。
「あなた、これを持って外に出てくれませんか? 出来れば離れた場所へ」
「ん、あぁ」
オビは鈴を受け取り、木々と一緒に外へ出ていった。
遠く離れた庭の、木の後ろに隠れるようにして立つ。
キハルは笛を吹いた。
"ピュイィーーーッ"
すると、ポポは迷うことなく、まっすぐにオビの元へ向かう。
「主~! 見つかっちゃいました~!」
オビは、遠くのゼンに分かるよう、大きく手を振った。
「なるほど、これは凄いな…」
「ポポには、この笛とあの鈴の元となった石の音を覚えさせてあるので、その音のする場所へ降り立ちます」
「分かった。……ミシャ」
「はい」
「笛を作った胡桃石とは別の胡桃石で、笛と同じ音を出せる鈴を作ることは可能か?」
「容易です」
「そうか。…キハル殿」
「あ、はい!」
「たとえば、同じ音のする鈴が4つあったとして、それを東西南北に配置した場合、指定した方角の鈴へ、鳥を向かわせることは可能か?」
「はい、方角指示は笛で出来ますので」
「なるほど」
ゼンは、算段が整ったと言いたげに口角を上げた。
「キハル殿、可能ならその鳥を扱う技を、クラリネスの連絡手段として検討したい」
「え…」
「そのため、長距離での考試をやって頂きたいのだが、どうだろう」
「それは、城で、ですか?」
「あぁ。今日の夕刻に」
「……鈴を持つ相手を、指名しても宜しいでしょうか」
「あぁ、構わんが?」
「では、白雪殿にお願いします!」
「白雪に?」
というわけで、白雪が呼ばれた。
「えっ!? 私が鈴を持つ役に!?」
「お願い! 迷惑かもしれないけど、私にとって城は、まだ敵陣なの!」
「て、敵陣…」
「国の提案っていうだけで信じられないし…あなたがゼン殿下を信頼してるなら、私も、あなたと組んで、少しでもそう思いたいの」
「……分かった。やってみる!」
「ホント!? ありがとう!」