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7. 雨
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薬室の隣の、仮眠室にて。
「いや~、まさかお嬢さんがこんなに酒に弱かったとは」
「にゃはは、お酒の度数が高かったせいもあるんにゃろうけど」
オビが白雪を寝かせると、ミシャは白雪の傍にしゃがんで、頬をそっと撫でた。
「ミシャは大丈夫なの?」
「当然」
「へ~。そりゃ意外だな」
「む、見た目で判断しちゃいけにゃーよ?」
「いやいや、どう見ても甘~いジュースがお好みって顔でしょ」
オビはミシャの隣にしゃがんで、もちもちなほっぺたを左右に引っ張った。
「んぎっ、にゃめろ~っ」
「はははっ、変な顔」
パチンと、ほっぺたを離してやる。
「むむう…」
ミシャは両頬をさすった。
オビは自分の膝に頬杖をついて、頬を膨らませたミシャを見つめる。
「元気になったな」
「
「…昼、ホントに驚いたからさ」
「……」
ミシャは視線を逸らした。
浮かない表情のまま立ち上がり、窓に歩み寄る。
日が傾きかけた空を見上げ、いつかこの夕空の色すら見えなくなる日が来ることを、想像した。
「…今度は、あの状況にも耐えられるようんにゃらにゃーと」
「ミシャ?」
「ミーの目は、いつか見えんくにゃって……いつか、今朝みたいにゃのが日常んにゃる」
「……」
窓枠を掴むミシャの手に、きゅっと力がこもった。
その背中が居た堪れず、オビは口を開く。
「……っ」
しかし、言えなかった。
―――そのときは、俺が傍に居るから。
思いついたその言葉を、言える資格はないと思った。
この先、ずっとこの城に居るかなんて分からない。
元々、興味本位で居座っただけだ。
いつ、ここを去るやも知れない自分が…
「…まだ、時間はあるだろ? あまり先ばかり見てないでさ、今、目に見えるもの、とりあえず見ていたらどうだ?」
思いつくままに、そんな言葉を並べる。
「…そうにゃね」
返って来た言葉は、軽かった。
こんな軽い慰めでどうにかなるものではないと、痛感した。
やがて日は暮れ、夜がやって来た。
オビとミシャは、倒れた白雪の代わりに、薬室を手伝っていた。
そのうち、ミシャが布団の擦れる音を聞き取ったため、白雪の様子を見にくる。
"コンコン……ガチャ"
「うわ、ホントに起きてた。相変わらずすげーな、ミシャの耳」
「隣の部屋の音にゃら、ほとんど
オビとミシャが扉を開けると、案の定、白雪は起きていた。
ベッドに座り、ぼーっと窓の外を見ている。
こちらに反応しない辺り、まだ酔っているのだろう。
2人の後ろから、ガラクが部屋を覗いた。
「どう? 白雪君は」
「まだ酔ってるんじゃにゃーか?」
「いつもなら、扉開けた時点でこっち見るからねぇ」
「そっか。…悪いけど、私は仕事片づけなきゃならないから、2人とも、白雪君のこと見ててくれる?」
「ほ~い」
「それじゃ、よろしく」
ガラクは薬室の方へ戻っていった。
オビとミシャは目を見合わせてから、仮眠室へ踏み入る。
「気分はどうだい? お嬢さん」
「……」
声を掛けても返事はなし。
…ただ、
「雪ちゃん?」
白雪は突然立ち上がり、部屋の外へと歩き出した。
まるで見えていないように、オビとミシャをスルーしていく。
「どったの…」
「さぁ…」
オビとミシャは、再び目を見合わせてから、サイドテーブルに書き置きを残し、白雪を追いかけた。