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7. 雨
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その後すぐに、雨が上がった。
ガラクが気を取り直して言う。
「それじゃ、仕事再開ね。リュウと白雪君は予定通り、ロカ園に行ってきてちょうだい」
「…わかった」
「はい!」
「ん、お嬢さん移動すんの? んじゃ俺もついてかないと」
「え、大丈夫かな…」
「何が?」
「これから収穫に行くロカの実は、香りのせいでぐらぐらに酔うの。中和させる薬がないと作業できないんだ」
「じゃあ、俺にもちょうだい? その薬」
「えっと…」
白雪はガラクを見た。
ガラクは手をヒラヒラさせる。
「人手は多い方が早いでしょ? 行っといで行っといで」
「だってさ、お嬢さん?」
「は、はぁ…」
白雪は戸惑い気味に、オビも連れて、ロカ園に向かった。
―――数時間後。
「……ん…」
夕日が差す中、ミシャは目を覚ました。
ぼんやりと、茜色に染まった天井が見える。
(…ここは……)
耳と鼻が、周囲の情報を拾う。
一番近くに聞こえるのは、ガラクと八房とヒガタの足音。
そして、何種類も混ざり合った薬草の匂いがした。
(薬室の仮眠室かにゃ…)
ふと、視界に入った左手首を見れば、丁寧に包帯が巻かれていた。
匂いからして、白雪が巻いてくれたようだ。
ミシャはのっそりとベッドから起き上がり、隣の部屋へと歩いていった。
"ガララ…"
引き戸を開けると、3人がこちらを向く。
「あら、やっと起きたわね、ミシャ」
言って、ガラクは笑みを浮かべた。
「…ミー、どのくらい寝てた?」
「ん~3,4時間ってとこじゃない?」
「…そっか」
「気分はどう?」
「いつもの、寝起きの感じ」
「そう。それは何より…。何があったかは覚えてる?」
ミシャは俯いた。
「……全部」
「オビ君にお礼言っときなさいよ?」
「……。……うん」
ミシャは薬室の窓に歩み寄った。
雨上がりの鮮やかな景色が広がっている。
ミシャの目では、すぐ近くの植木ぐらいしか見えないが。
「そういえば、
少し離れたところを、白雪とオビ、そしてリュウが一緒に歩いている足音がする。
「おや、聞いてない? ゼン殿下の意向で、白雪君の護衛として、オビ君がつくって話」
「なんにゃ、その話」
「ミシャにも、仕事がないときは護衛に当たってもらうつもりだって聞いたけど?」
ミシャは半目で振り向いた。
「知らにゃーけど…」
と、そこに。
"ガララ"
「只今戻りました~」
白雪とリュウ、そしてオビが、ロカを漬けた薬酒のビンを抱えて戻ってきた。
窓辺に居るミシャに気づき、白雪がパァっと表情を輝かせる。
「ミシャ! 起きられたんだね!」
ミシャはいつも通り、笑顔を浮かべた。
「うん。左手、ありがとにゃ、雪ちゃん」
言って、丁寧に包帯の巻かれた左手を挙げてみせる。
「痛みはない?」
「ぜーんぜん」
「そっか、良かった」
そこに、オビが歩み寄ってきた。
ポン、とミシャの頭に手を乗せる。
「元に戻ったな」
ミシャはオビを見上げて、照れるように笑った。
「色々ありがとにゃ、オビ」
ふにゃりとした柔らかい笑顔。
オビは僅かに目を見開いてから、笑みを浮かべた。
「今度はギリギリになる前に、薬貰いに来いよ?」
「うん、そうする」
ガラクは、何か考えながら、ミシャとオビを見ていた。
やがて、フっと笑う。
「それじゃ、せっかくだし、ロカの試飲といきましょうか。見習いの2人には、味を覚えておいて欲しいしね。オビ君とミシャも飲んでいきなさい?」
ガラクは八房に、グラスを持ってこさせた。
それに、瓶の中身を注ぐ。
(……ん?)
鼻を動かしたミシャは、僅かに首を傾げた。
(この匂い、ロカじゃにゃーね…)
それに気づいたガラクが、口元に人さし指を立てる。
ミシャはフっと笑った。
しかし、3人は何も気づかず、グラスを手に取る。
どんな味がするのだろうか…
そんな顔で、グラスを仰いだ。
「うぐっ!?」
「んっ、辛っ!」
白雪とヒガタは、予想外の味に口を覆う。
しかし…
「うま~!」
オビだけは笑顔で飲み干した。
ミシャもご機嫌でグラスを仰ぐ。
「ん~、さっすがガラク~。いい
リュウが半目で言った。
「…薬室長、それ、ロカじゃなくて、お酒だよね」
「せいか~い」
オビは満面の笑みを浮かべる。
「ははっ、どーりでうまいわけだ」
「でしょ? ロカ園行ったあとはしばらく鼻が利かないからね。中身すり替えても分かんないんだよ。あとは、ミシャへのお見舞いに、ね?」
ミシャは目を見開いた。
そして、フっと笑みを浮かべる。
「ありがと。すっごくおいしいにゃ」
「そりゃよかった。もう一杯いっとく?」
「にゃははっ、やった"ドサッ"
「「「 ? 」」」
突然、何かが倒れる音がした。
振り向いてみれば、顔を真っ赤にして目を回した白雪が…
「えっ、お嬢さん?」
「あらら、白雪君、お酒弱かったの?」
「にゃ~、意外」
白雪は、薬室の隣の仮眠室へ運ばれた。