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7. 雨
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"ガララ…"
「すんませーん」
昼前。
突然、薬室の扉が開いた。
仕事中だった薬剤師たちが、全員振り向く。
もちろん白雪も。
「あれ、オビ…。……えっ、ミシャ!?」
オビの腕に抱かれ、眠っているミシャ。
白雪が、慌てて抱えていた資料を机に置き、駆け寄ってくる。
「どうしたの!?」
「あー……色々あってね、ははは…。お嬢さん、ミシャの左手首、診てくれる? ベッドから落っこちたらしくて」
「左手首? ……わ、腫れてる! 捻挫かな…湿布薬、取ってくるね!」
白雪は薬倉庫へ駆け出した。
オビは薬室に入り、手近な椅子にミシャを座らせる。
ガラクが傍に寄ってきた。
「何があったの?」
オビは苦笑しながら答えた。
「いや~、不運が重なっちゃって…」
「不運?」
「朝起きたら薬が切れてて目が見えなくて、薬飲もうとしたら、水が零れて薬も流れちゃって。雨だから耳も鼻も利かなくて、手探りで部屋を出ようとしたら、ベッドから落ちて手首怪我した挙句に、デカい置物にぶつかって下敷きになった、ってわけです」
「あらら…」
「けどまぁ、早めに見つけられて良かったです」
「そうだね。下手をすれば、明日の朝までそのままだったかもしれない」
そこへ、白雪が戻ってくる。
「湿布薬、持って来ました!」
白雪が処置していくのを眺めながら、ガラクはオビに訊いた。
「目の薬は飲ませたの?」
「ん、あぁ、はい。ついさっき」
「そっか…」
ガラクは険しい顔で、ミシャを見下ろした。
(…これが、いつかは日常になるんだよね)
ミシャの目は、悪くなる一方で、治る見込みはまずない。
いつか失明して、雨が降るたびに、今日と同じような恐怖に駆られるのだ。
…果たしてそれに、耐えられるかどうか。
(誰か、ずっと傍についていてくれる人が居ればいいんだけどね…)
「これでよしっ」
白雪は処置を終え、心配そうな顔で、ミシャの顔を見上げた。
ガラクがオビに声を掛ける。
「仮眠室まで運んでやってくれる? オビ君」
「えぇ、もちろん」
オビはミシャをそっと抱き上げ、薬室の隣の仮眠室へと運んだ。