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6. イザナ王子
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―――その夜。
城内では、盛大な夜会が開かれた。
会が開かれている間、宮廷楽師は交代で休みながら、音楽を送り続ける。
その中に、ミシャもいた。
自分より年上の楽師たちに混ざって、笛を吹き続けている。
「……?」
窓の方から、よく知った足音が聞こえた。
(…ホントに、聴きに来たんにゃね)
窓の外で壁に背を預け、隠れるようにして立っている姿が、目に浮かぶ。
(…足音、わざとかにゃ)
日頃から足音を殺して動く男だ。
演奏中にも関わらず聞こえたのなら、わざと足音を立てたに違いない。
ミシャは緩みそうになる頬を、慌てて引き締めた。
(…そいじゃ、ちょっとにゃけ本気出しちゃおうかにゃ)
ちょうど、ミシャのソロになった。
ミシャはいつもより少しだけ、表現を大袈裟にする。
伴奏の宮廷楽師たちは、いつもと違うその表現に、チラリとミシャを見た。
…が、ミシャが伸び伸びと吹く様子に、微笑を浮かべて合わせてやる。
(…お、ミシャがメロディライン吹いてる。こういうの何てったっけ……ソロ?)
オビは、物陰からこっそり、笛を吹くミシャを見つめていた。
(ホント、いつもとは別人だね。……綺麗だ)
じっと見ていると、チラリと、ミシャがこちらを見る。
(さっすが。わざと足音立てた甲斐あった)
オビは笑みを浮かべ、軽く手を振った。
同じ頃、夜会会場の一角。
「おや…」
ラジ王子の側近・サカキが、急に曲調が変わったことに気づいた。
宮廷楽師たちを見渡し、ミシャを見つける。
(この音は、あの少年が…?)
子供体型な上、宮廷楽師として、騎士に近い格好をしているミシャは、知らない者が見れば、完全に男だ。
「? どうした、サカキ」
側近がどこか一点を見つめているのに気付いて、ラジが声を掛けた。
「いえ。あの笛吹きの少年、なかなか良い腕をしていると思いまして」
「笛? ……あぁ、確かにそうだな。我が国は弦楽奏者の腕はいいが、管楽奏者はイマイチだからな」
自身も楽器の演奏を嗜む手前、演奏の良し悪しは分かるようだ。
「あの者を、管楽の指南役として、我が国に招いたらどうだ?」
冗談交じりなラジの一言。
「…そうですね」
サカキは、しばらくじっと、ミシャを見つめていた。
→ 7. 雨