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6. イザナ王子
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2人を見送り、ミシャは会場へと戻った。
見れば、王子3人は未だ話を続けている。
「せ、せっかくだがイザナ殿、席を設けるとのお話は遠慮させてもらおう」
「そうか?」
「何か勘違いをされておいでのようなので、この際はっきり申し上げますが、私は白雪殿に去られたわけでは断じてなく、違う地に生きてみたいと国を出た彼女を、快く送り出したのだ。まさか未練などあるはずもない」
イザナは数秒考え、真顔で訊いた。
「何か会えない理由でも?」
ラジはびくっと肩を揺らす。
「い、いや…」
どう答えればいいんだ…
まさか毒林檎の件を話すわけにもいかない。
ラジは無い頭をひねり、何とか答えを絞り出した。
「し、白雪殿は、ゼン殿が婚約者に考えている相手だと聞いたのでな」
しーん……と、会場が静まった。
ラジはきょとんと辺りを見渡す。
何か悪いこと言った? と訊きたげな顔で。
「ちょっと失礼」
ゼンはラジの腕を掴み、傍の建物の中へ入っていった。
(ここまで馬鹿にゃ王子だにゃんて…)
ミシャは半目で、小さなため息をついた。
会場がざわつき始める。
(しっかし困ったにゃ…。一度出てしまった言葉、ゼンがいくら撤回しようとも、諸侯たちは雪ちゃんを気にし始める)
成らず者を雇い、白雪の身辺調査を始める者も出てくるだろう。
そして、白雪がただの町娘であると結論が出れば、白雪はもちろん、ゼンへの風当たりも強くなる。
(…そろそろ、ゼンは雪ちゃんをどうしたいんか、雪ちゃんはゼンとどうにゃりたいんか、決めてもらわにゃーと…)
しばらくして、ゼンがラジを連れて戻ってきた。
ざわついている会場の皆を前に、兄・イザナの目を真っ直ぐに見て、告げる。
「ラジ殿と俺とで、少し話が噛み合っていなかったようで。あの娘との婚約は考えていないし、申し込んでもいません」
妙にすっきりとした表情。
得心ゆかないのか、イザナはじっとゼンを見ていた。
茶会も終盤に差し掛かった頃。
ミシャは、ゼンが1人のときを見計らい、その背後に忍び寄った。
「…ゼン」
ゼンは表情を変えず、小声で答える。
「何だ」
「ゼンがイザナ王子とラジ王子と話してるとき、雪ちゃん、近くにいたんにゃ」
「!」
ゼンは思わず目を見開いた。
「ぜ、全部聞かれてたのか!?」
「全部じゃにゃーよ。イザナ王子が、雪ちゃんも国に帰りたいんじゃにゃーかって言ったとこまで。その後の婚約云々は聞いてにゃー」
「そ、そうか……とりあえず良かった…」
「雪ちゃん、怯えてた」
「……」
「夕方、茶会が終わった後、もう一度ここに来るよう言ってある。…あとは、任せるにゃ」
「あぁ」
ミシャは何事もなかったかのように、ゼンの背後から離れ、警備の務めに戻った。