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5. 従者お試し期間
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「――――――ミシャ……ミシャ」
「……ん…」
何度も呼ばれる声で、ミシャの意識は闇から浮き上がった。
ぼやける視界の中で、赤色が揺れる。
「……雪、ちゃん?」
「ごめんね、起こしちゃって。薬、飲めるかな」
「…ミー、どのくらい、寝てた?」
「どうだろ、私も今来たところだから…」
ミシャは白雪から薬を受け取る。
「…オビ、は?」
「ん? あぁ、ゼンたちが盗賊を追うことにしたらしくて、たぶんついて行ってると思う」
「…そっか」
「気分はどう? まだ、目、回ってる?」
「……うん」
「…ごめんね」
「?」
「私が何も考えずに手伝わせちゃったから、ミシャにまで…」
「…んーん。…雪ちゃんが、動けんくにゃってたら、もっと、大変にゃった。…今、雪ちゃんにゃけが、頼りにゃから」
「…そっか。うん、頑張るね!」
「…ちゃんと、雪ちゃんも、休むんにゃよ?」
「ふふっ、ありがとう! …ミシャこそゆっくり休んでね? もしかしたら、三半規管が敏感な分、症状が抜けるまで、普通の人より時間がかかっちゃうかもしれないけど…」
「…分かった」
「それじゃ、また後で様子を見に来るから」
「…ん」
白雪の笑顔を最後に、ミシャは再び、眠りに落ちた。
翌朝。
「……」
ミシャが目を開けると、見たことのない色合いの、ぼやけた天井が見えた。
(……あれ…ここ、どこにゃっけ…)
確か、大広間の暖炉の前で寝たはずなのに、いつの間にか、どこかの部屋のベッドに寝かされている。
「やっほ~、起きた?」
ひょこっと、目の前に現れた、オビの顔。
ぼやけている上に、薬が切れかけて視界が暗く見えにくいが、いつものように、ヘラヘラと笑っているようだ。
「……オビ…」
「おはよ。気分はどう?」
「…うん。…だいじょう―――」
身を起こそうとしたところ、ぐらりと世界が回った。
「おっと」
ベッドから落ちそうになったミシャを、オビが受け止める。
「全然大丈夫じゃなさそうだけど?」
「にゃはは……みたい…」
「どうする? 横になってる? それとも昨日みたいに、座ってる方が楽?」
「座ってたい…」
「了解」
オビはゆっくりとミシャの体を起こし、背中に枕を挟んで、壁に背をもたれさせた。
ミシャは目を閉じ、苦しげに長く息を吐く。
頭を動かさなければ、眩暈も収まるようだ。
「自慢の耳が、今回は
ミシャは目を閉じたまま、苦笑した。
「…ほんと。……そういえば、ミー、
「ん? あぁ。兵士たちは大体みんな動けるようになったから、まだ動けない兵士たちを部屋に移して、広間は今まで通りに戻すんだってさ。そんで、ミシャも移されたわけ」
「…そっか……。…盗賊退治は?」
「もちろん大成功~」
「…そっか。…………ん?」
ミシャの耳がぴくっと動いた。
「どうした?」
「…オビ」
「うん?」
「…雪ちゃん、元気?」
「お嬢さん? そりゃ元気なんじゃないの? 今日も朝からよく働いてるけど…」
「…朝から……。オビ、今すぐ、雪ちゃんとこ行って、様子見てきて」
「え?」
「この窓を出て、北東に真っ直ぐ。早く」
「あ、あぁ、分かった」
オビは意味が分からないまま、窓から部屋を出た。
(いきなりお嬢さんのとこ行けって、一体どういう…。ていうか俺、お嬢さんに勝手に近づいたら怒られると思うんだけどなぁ…)
オビは砦の屋根を北東方面へ走った。
すると、何やら荷物を持って、庭の通路を歩いている白雪を発見する。
(…なんかフラついてるな)
よく見ると、白雪は真っ直ぐに歩けていない様子。
(…なるほど、ミシャが言ってたのはこういうことか。…きっと、足音でお嬢さんの不調が分かったん―――)
そのとき、白雪の体が大きく揺れた。
"――――――ドッ"
オビは、反射的に飛び出していた。
間一髪、白雪が倒れる前に受け止める。
「え…あ……」
目を見開く白雪。
オビは気まずそうに視線を逸らした。
「……ミシャの奴、俺が主にドヤされたらどうしてくれんの…」
「あ、えっと、ありがとう…」
「いーえ。……立てるかい?」
「あ、うん…」
オビは荷物を持ち、白雪を立たせた。
「ミシャが心配してたよ?」
「ミシャが?」
「俺をここに寄越したの、ミシャだから。あんたの足音がいつもと違うこと、気付いたんだろうね」
「……」
「何で主に隠すわけ?」
「…ミシャには、誰にも言わないでって伝えて。…あなたも、みんなには黙っててね」
「そうは言われても、あんたの言うこと聞く義理はないんだけどなぁ」
「…だったら、ひとつ借りで」
「借り?」
「そう。借り」
(出会い頭に矢で脅したこと、持ち出さないのかよ…)
「…いいけど。隠す理由くらいは教えて貰えない? ミシャだって、理由もなしじゃ納得しないはず」
「えっと…自分で何とか出来るから、平気」
「あのね、何とか出来てないから、俺がここに来る羽目になったんでしょーが」
「……」
白雪は、兵士たちの声が聞こえる方向を見やった。
オビもそちらを見る。
「みんな、元気になったみたいだな」
「…うん。…だから、何事もなく一緒に締めたいだけだよ。……とにかく、ありがとう。ミシャにもよろしく伝えて?」
そう言うと、白雪は行ってしまった。
オビはそれを見送り、頭を掻く。
「ありゃ何言ってもダメだな…」