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5. 従者お試し期間
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その頃、ラクスドの街では。
「は~……さむさむっ」
ミシャが、長いローブを体に巻き付け、フードを目深に被り、
(こんにゃ雪深い時期に北方に派遣されるにゃんて、運悪いにゃあ…)
雪深いこの時期、ウィスタル北方は王家の目が届きにくくなり、場合によっては悪事の温床となる。
このラクスドに来るまで、ミシャはウィスタル北方の街を幾つか回り、それとなく街の状況を調査してきた。
今のところ表の世界に不穏な噂話は流れていないし、裏稼業の界隈にも妙な依頼や動きはみられない。
裏稼業は、表の世界からはいい顔をされないが、そういう者たちが一定数いてくれるからこそ、表の世界が成り立つ。
表と裏、双方の均衡が保たれることが重要なのだ。
あとはラクスド最大の裏稼業の依頼
(帰りにウサギ肉のスープでも飲んでこうかにゃあ…)
ミシャは、ターバンの巻き方を少し変え、いつもより長く垂れ下がった余りを、マフラーのように首に巻いた。
鼻先を覆うように引き上げれば、少しだけ暖かくなる。
(寒いの苦手にゃのに、北の領土に派遣されるにゃんて…)
本当は、1秒でも早く建物の中に入って、温かいスープを飲みたい。
しかし、こんな時期、こんな場所だからこそ、不穏の芽は育ちやすく、小さな異変すら見落とせない。
国のため、王家のため、ゼンのため、ミシャは耳を澄ませながら、裏稼業の依頼処へ向かった。
しばらくすると…
(……ん? この足音は…)
ミシャの耳がぴくっと動いた。
聞き取ったのは、人々の足音をかき消すほどの、馬が駆けてくる足音。
「…ミッチー?」
ミシャはバっと振り返り、街の出入り口の方向を見た。
「……」
聞き間違いだろうか。
…いや、何度も聞いた馬の足音だ。
間違えるワケがない。
(…行ってみよ)
ラスクドの入り口にて。
「…さて、白雪はどこにいるのやら」
馬を降りたミツヒデは、どこから探そうかと辺りを見渡した。
すると…
「やっぱしミッチーにゃった」
「?」
背後で、聞き慣れた声がした。
「ミシャ!?」
ミツヒデは思わず飛び上がる。
「お前もラクスドに入るとは聞いていたが、まさか居合わせるとはな…」
「にゃはは、偶然にゃねぇ」
ミシャはミツヒデの馬に近寄って、ポンポンと撫でた。
「聞いたことある馬の足音だにゃ~って思ったら」
「まさか、馬の足音まで覚えてるのか?」
「全頭じゃにゃーけどね。…それにしても、こんにゃとこで
「ん、あぁ、実はな…」
ミツヒデは現状を説明した。
「ほ~。そんで、雪ちゃんを呼びに来たんか」
「ミシャ、白雪の居場所は分かるか?」
「ん~……ちょっと人多いし、雪道にゃから足音がいつもと違うにゃあ……。スンスン……うん、匂いにゃら辿れる。こっち」
ミシャは白雪の匂いがする方へ走り出した。
「助かる」
ミツヒデは心底感心しながら、後を追った。
しばらく走ると、薬屋の前に出る。
「はい、確かに。では、ウィスタル城まで配送致します」
「よろしくお願いします」
「あ、いた、白雪~!」
「!?」
ミツヒデの呼び声に、白雪は肩を揺らした。
「えっ、ミツヒデさんっ? それにミシャも」
「悪い白雪、至急、一緒に砦まで来て欲しいんだが…」
ミツヒデは、砦での一件を説明した。
「兵士の皆さんが倒れてる!?」
「病なのかそうじゃないのか、原因は分かっていないんだ」
「分かりました、すぐ行きます!」
「薬室のおつかいはいいのか?」
「今終わりましたから!」
「そうか。…急で悪いが、頼む」
「はい!」
「ミーも、仕事終わったら合流するにゃ」
「あぁ、そうしてくれ。先に行ってる」
「頑張ってにゃ~ん」
走り出すミツヒデと白雪を、ミシャは手を振って送り出した。
そして…
「……あと1軒」
ラクスド最大の裏稼業の依頼処へと、歩き出した。