夢主の名前を決めて下さい。
4. 堕ちてゆく眼
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌、明け方。
まだ日も昇らない闇空の下で。
「はぁ……散歩には冷えるな。…戻って寝直すか…」
いつもより早く目が覚めてしまったゼンは、気晴らしに城内を散歩していた。
すると…
「あれは…薬草園? 何でこんな時間に明かりが点いて…」
夜闇の中、明るく光る第三薬草園が目に留まった。
何となく、その場所へ足を運ぶ。
(……白雪?)
開いていた入り口から覗くと、見間違えるはずの無い赤髪が見えた。
「…こっち、土が少し流れてるな……」
何かを呟きながら、薬草を見て回っている。
(まだ夜も明けきらんのに何を…)
"ガササッ"
「!」
突如聞こえた、草の揺れる音。
ゼンは剣に手を掛け、様子を伺った。
「誰だ」
声を掛けるも、反応はない。
「……」
ゼンは警戒したまま、薬草園の扉の内側に入り、気配を感じた辺りをじっと見つめた。
すると…
「ゼン?」
「!」
白雪が気づき、声を掛けてきた。
ゼンはハっとする。
「よ、よう、白雪…」
「びっくりした~。どうしたの?」
「え、あぁ、いや……。あ、待て! 外には近づく"ガララッ、ピシャンッ!"
"ガチャンッ!"
「「!?」」
突然、薬草園の扉が閉まり、鍵が掛かった。
外に、走り去る人影が見える。
「んなっ、鍵か!」
「えっ、何ごとっ?」
「…閉じ込められた」
「と、閉じ…?」
「白雪、お前心当たりは? 呼び出されたとかそういう…」
「え、いや、全然…。今ここで試験中で」
「こんな時間にか!?」
「えっと、3日間薬草園の管理を任されてるの」
「なるほど、そういう試験か…。誰だか知らんが、これはそれを知っての真似か?」
「朝には視察が入るから、それを待てば鍵は開くけど…」
「…試験の最中に俺と居たなんて知れたら、マズイだろ」
「それは……。……あれ? だけどゼン」
「ん?」
「何か、用があってここに来たんじゃ?」
「えっ…」
「?」
「……いや、何となく…足が向いただけだ。まさかお前が居るとは…」
「そうだったんだ」
「……軽率だったな」
「?」
ゼンは薬草園の壁に背を預け、打開策を考え始めた。
そして、閃いたように首元を探る。
「そうだ、ミシャを呼べばいい!」
「あ、そっか。笛」
「……あれ? ……あ、しまった。寝室のサイドテーブルの上だ…」
さすがに寝る時まで身につけてはいない。
「大丈夫、私が持ってるから」
「そうなのか?」
「うん。前にミシャから貰ったの」
白雪は、首元から角製の笛を取り出した。
スっと息を吸い込み、そっと吹く。
音は鳴らず、小さく呼気の漏れる音だけが聞こえた。
「聞こえたかな?」
「大丈夫だ。笛も壊れてないみたいだし」
「壊れてるか分かるの?」
「あぁ。壊れると、スカ~って空気漏れみたいな音がするんだ。それがしないなら大丈夫さ」
「そっか。…でも、こんな夜中に気付いてくれるかな」
「そこも心配ない。笛の音は、あいつが必ず目を覚ます音の1つだ」
「へぇ、すごいな…」
"コンコン"
「「?」」
薬草園の扉がノックされた。
見れば、眠そうな顔でミシャが立っている。
「お、さすがミシャだな。助かった」
「ふぁ~ぁ……こ~んにゃ
「馬鹿っ、そんなわけあるか! 閉じ込められたんだよ!」
「へいへい、分かってますにゃ~」
ミシャは、武器に使う
"ガチャ"
「うい、ご開帳~」
「ありがとな」
「いーえ? …しっかし、王子を閉じ込めるにゃんて、肝の据わった犯人にゃねぇ」
「俺を閉じ込めたわけじゃない。おそらく白雪が狙いだ」
「雪ちゃんを? …ていうか、こんにゃ遅くに
「そういや、白雪、お前いつからここにいるんだ? いくら薬草園の管理が試験内容だからって、四六時中いなくてもいいだろ?」
「え、あぁ、まぁね…」
「ちゃんと寝てるのか?」
「寝ましたとも!」
「お前、時々笑ってかわそうとするよな」
「…だって、せっかくこんなに整備された薬草園に居られるんだもん。何だかもったいなくて…」
「そういうもんか?」
「それにね? 夜にしか見られないものなんかも……あれ?」
「ん、どうした?」
白雪が薬草に駆け寄っていく。
「おかしい…。さっきまでと様子が違う」
ゼンとミシャも、近くに寄った。
「この薬草ね、深夜から朝に掛けて、花が上を向いて咲くんだけど…」
「どちらかといえば
白雪は水路の水に手を差し入れた。
(水はちゃんと下を通ってる。環境は正常なのに、花に力が無くなってる…?)
白雪は水を掬い、少し飲んだ。
「っ、甘い!?」
「水が、か?」
白雪は上階へ駆け出す。
そして、いろんな箇所の水を飲んでいった。
…と、そのとき。
"ガチャンッ!"
「「「 ! 」」」
…何だか、一度聞いたことのある音がした。
嫌な予感がして振り返れば、再び薬草園の扉が閉まっている。
ゼンは青ざめ、隣で眠そうにしているミシャに訊いた。
「…おい、ミシャ」
「
「お前不審者の足音くらい聞こえるだろ!」
「無茶言うにゃってぇ! こんにゃ水がドバドバしてるとこじゃ、普通の足音は聞こえても、忍び足は聞こえにゃーよ!」
「他にも匂いとかで分かんなかったのか!」
「こんだけ薬草臭いと無理!」
「あ"~~っ……油断したっ……」
「朝を待つしかにゃーね。ガラクにゃら分かってくれるよ」
「……だといいがな」
そこに、白雪が戻ってきた。
再び閉じ込められたことよりも、薬草のことの方が気になる様子。
「白雪? どうした?」
「うん。…たぶん、水路に毒素が流れてる」
「毒!?」
ゼンは白雪の肩を掴んだ。
「お前それを飲んだのか!」
白雪はまばたきを繰り返す。
「あ、あぁ、そっか、ごめん、大丈夫だよ? 人には影響ないから…」
「そう、なのか…?」
ゼンは力が抜けて、その場に座り込んだ。
「なんだ…驚かせるなよ……」
「ごめん」
「にゃははっ、ゼンってば、雪ちゃんのことんにゃると必死にゃねぇ」
「うるさいぞ。……で、毒ってのは?」
「あ、うん。薬草とか薬木が持ってる毒素でね? 蜜みたいな味がするものがあるの。それが水に混ざってるんだと思う」
「この園内のどれかがそうなのか?」
「いや、でも、リストを見た限り、ここにそんな薬草はないはず…」
「そ、そうなのか?」
白雪は原因を考えながら、薬草たちを端から見て回った。
そして、ひとところで足を止める。
「…これ、まさかアケギシグレじゃなくて、ユラシグレなんじゃ…」
白雪は薬草を1本、根ごと引き抜いて、根の先を切り、口に含んだ。
「! 甘い…っ、ユラだ!」
「あったのか? 毒素が出てる薬草」
「うん。ユラとアケギっていう、花をつけるまで見分けるのが難しい種類なんだけど…。このユラは、アケギが花をつけるための環境で育てられてる。…迂闊だった。アケギの方だと思い込んでた…」
「つまり、間違った方法で植えてあるってことか?」
「ユラは環境が変わると、花を咲かせられずに、根に毒素が作られるの。それが土から水路に流れ出て、さっきの花が…。…このままだと、ユラも他の薬草も枯れちゃう」
「それは一大事だな」
白雪は意を決し、袖を捲り上げた。
「ゼン! ミシャ! ここから向こうまでの水路を閉じて! 私は土から全部植え替える!」
「…いいのか? 俺たちが手を貸したら、審査に響くかもしれないぞ?」
「……うん。…でも、今できる一番必要なことをやるよ!」
「お前の道が狭くはならないのか?」
白雪は満面の笑みを浮かべた。
「見失わなければ大丈夫! 前を向いていられる力は、今までゼンにたくさん貰ったから」
「!」
ゼンは目を見開いた。
やがて、フッと笑って拳をつき出す。
「…まったく、お前らしいな。付き合おう、薬剤師殿」
「ふふっ、ありがとうございます」
白雪はゼンの拳に、自分の拳を合わせた。
「よし、やるぞ、ミシャ」
ミシャは頭の後ろで腕を組み、ニヤリと笑みを浮かべる。
「雪ちゃんの頼みにゃら仕方にゃーね~」
「お前な、そこは主である俺の命令だからって言うところだぞ」
「にゃはは~」
こうして、薬草園の薬草は、3人の手で全て植え替えられた。