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第五巻
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とある平日の昼間。
閻魔庁の資料室にて……
"バサバサッ"
「あ、やべっ」
茄子が、巻物を盛大にぶちまけた。
その音を聞きつけ、唐瓜が飛んでくる。
「おまっ、またか! 古い物なんだから気をつけろって言ってんだろ!」
「あはは、ごめんごめん」
巻物は、落ちた拍子に留め具が外れ、床に広がっていた。
唐瓜はため息混じりにしゃがみ、丁寧に巻き戻しを始める。
茄子も同じく巻き戻しをしようとしたが、ふと、よく見知った名前が目に飛び込んで、手が止まった。
「あれ、鬼灯様の名前が……。……ん? "二代目 第一補佐官"? なぁなぁ唐瓜」
「何だよ」
「これ見ろよ、鬼灯様って二代目の第一補佐官なんだってさ!」
「……。……え?」
さすがの唐瓜も、手が止まる。
鬼灯以外の誰かが第一補佐官と呼ばれている光景が、ちっとも思い浮かばない。
(もしかして椿様? ……なわけないか、元は阿鼻地獄の主任だったらしいし……)
唐瓜は、手元で巻物をくるくると巻き戻しながら、茄子の持つ巻物を覗いた。
「……ホントだ、二代目って書いてある……鬼灯様の前に、誰かが補佐官やってたってことか……」
そこに、先輩獄卒が通りかかる。
「あの世の歴史は長いからなぁ。自分よりちょっと先輩くらいに思ってた人が、千年以上のベテランだったりもするんだよ」
「そういうもんですか……。あの、そもそも鬼灯様って、生まれはどこなんです?」
「さぁ、俺は知らないけど」
茄子がボケっとした顔で、天井を見上げた。
「子供の頃とかあったのかなぁ」
「どうだろうな。鬼って色んな生まれ方あるし」
「なんというか、ダークマターから作り出された鬼と言われても、不思議ではないような……」
「そんなSFの悪役みたいな鬼が居て
というわけで。
頼まれた巻物を裁判の間に届けるついでに、唐瓜と茄子は鬼灯に訊いてみた。
鬼灯は、読んでいた亡者の記録から顔を上げ、眉間にしわを寄せる。
「……ダークマター? そんなわけないでしょう。私も人の子ですよ」
「え、人の子って……」
「本当に人の子なんです。……今よりもずっと昔、四千年近く前の話ですがね。当時、私が住んでいた村では日照りが続いていまして、
「「え……」」
初っ端から重たい話に、唐瓜も茄子も青ざめた。
気付いた鬼灯は、ひらひらと手を振る。
「あぁ、お気になさらず。当時はよくあることだったので。……そうして死んだ私は、体に鬼火が入り込み、鬼の子となりました。私が地獄にやって来たのは、それからすぐです」
閻魔がにっこりと笑みを浮かべ、自分を指さした。
「わし、その頃に一回、鬼灯君に会ってるんだよね」
「えぇ。……あの頃はまだ、地獄の制度が確立していない頃でしたね」
記憶をさかのぼるように、閻魔は髭を弄る。
「当時の黄泉には秩序がなくて、亡者の一部がやりたい放題していたから、大人しい亡者や、初めから黄泉に住んでいた鬼や妖怪たちが迷惑してたんだ。そこで、わしが数年がかりでみんなの意見を取り纏めて、黄泉の女王・イザナミに提言したんだよ、"地獄"の制度を作りたいってね」
茄子の瞳が輝いた。
「へぇ~! じゃあ今の地獄は閻魔様が作ったんだぁ!」
唐瓜がジト目をする。
「へぇ、って……歴史の授業で習ったぞ。……あの、鬼灯様って、地獄発足当時から補佐官だったんじゃないんですか? 記録には二代目と書いてありましたけど……」
「最初から私が補佐官であれば、地獄はもっと厳しいものになっていたかもしれません。私は二代目で、初代補佐官は、元・黄泉の女王である、
「黄泉の女王がNo.2に!?」
閻魔が苦笑して頬を掻いた。
「う~ん……新制度を作るから、わしが王になるべきだったんだけど、黄泉の女王を
(最恐地獄メーカー……)
「だから、もう少し地獄が落ち着いたら、別の補佐官にしたいと思ってたんだ。その矢先に、鬼灯君を見つけたんだよ。目の付け所が違う子だなぁって、以前から思ってたんだ」
「すっご~い! 大王ってば心眼あるぅ! 見直しちゃった!」
「……見直されるほど評価低かったの? わし」
と、そこに……
「お~、いたいた、鬼灯~」
椿が、数枚の書類を手に、気だるげな様子で歩いてきた。
「変成庁に続く橋、ありゃもう駄目だな。改修工事の指示出してきたから、あとで請求届いたら処理頼むわ」
そう言って、書類を鬼灯に渡す。
「分かりました。わざわざ見に行ってもらってすみません。ありがとうございます」
「んや、いいけどよ。お前らは何してんだ? こんなとこに集まって」
「少し、昔の話をしていましてね」
「昔?」
茄子が、興味津々の顔で、椿の前に走り出た。
「椿様は地獄生まれ!? それとも鬼灯様みたいに人の子だった!?」
「あ? あぁ、人の子だけど?」
「へぇ~そうなんだ~!」
唐瓜も、気になったことを訊いてみる。
「椿様は、いつから獄卒に? 第二補佐官になったのは最近で、それまでは阿鼻地獄で主任をしていたと聞きましたけど……」
「獄卒ンなったのは……あー、確か鬼灯が第一補佐官になった辺りだったか……」
そうだよな? と、椿は鬼灯を見た。
「えぇ。私が第一補佐官に就任してすぐに、大規模な人事異動を行いましたから。人脈…要するにコネで官職に就いていた者を降ろし、実力のある者に
きっぱりと言い切った鬼灯を、唐瓜と茄子は畏怖の念を抱いて見上げる。
「すっげぇ……」
「容赦ないなぁ……」
「……ん? じゃあ椿様って、獄卒になるまで何してたんですか? 見た感じですけど、鬼灯様と同じ年くらいですよね?」
鬼灯が首を横に振った。
「いいえ、椿さんの方が上です。といっても、人間に換算して十歳前後ですが」
「そうなんですか!?」
「そんなに驚きます?」
「あ、いえっ、何となく、鬼灯様の方が役職が上なので、年上なのかと……」
椿は、昔を思い出しながら、担いでいたハンマーをコトンと床に降ろし、自分の体に立てかける。
「あたしはここに来る前は、ただ気に入らねぇ奴をぶっ飛ばして、食って寝てただけだ。何かしてたわけじゃねぇよ」
閻魔が笑いながら言った。
「そういえばあの頃、化け物みたいに強い鬼が山に棲んでるって噂、流れてたよね。あれ、椿ちゃんだったんでしょ?」
「ははは! まぁな。好き勝手に暴れてたら、鬼灯が来たってわけだ」
……何となく、椿の笑顔がわざとらしい。
鬼灯は、ちらりと椿の様子を窺いながらも、すまし顔をしていた。
「年々、鬼も亡者も大人しくなる中で、大した豪傑がいるものだと思いまして、是非 獄卒にと」
「へぇ~、そうだったんだ~!」
「……さて。そろそろ仕事を再開しましょう。このままでは残業になってしまいますからね」
「は~い!」
「はい!」
唐瓜と茄子は、小走りで次の仕事場へと走っていく。
鬼灯は閻魔と共に裁判を再開し、椿は、次の視察場所へ向かった。