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第五巻
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ある日の極楽満月にて。
「
そう言って、白澤は桃太郎に、薬の作り方を書いた紙を渡した。
「あ、はい」
紙を受け取った桃太郎は、眉間にしわを寄せる。
(象形文字……?)
説明文は難しくないが、挿絵は何を訴えているのか分からない。
「手順は、前に薺ちゃんと一緒にやってた調合と似てるし、そんなに難しくないから。よろしくね~」
「えっ、ちょ、待……」
"ガララッ……ピシャン……"
有無を言わせず、白澤は店を出て、すぐさま神獣の姿になり、飛んでいってしまった。
どうやら今日は、鳳凰や麒麟と集まる予定があるらしい。
店にひとり残された桃太郎は、唖然として、もう一度作り方の紙を見下ろす。
(……どうするよ、これ)
今日は薺も、衆合地獄のお得意様の元へ、鍼治療の出張診療に出ており、夕方まで帰らない。
「……」
桃太郎は、とりあえず説明文だけをザッと読み、今までの調合のメモと見比べた。
確かに、以前やったことのある調合の応用のようなものだから、出来ないことはないだろう。
……いつかは、自分一人で調合できるようにならなくてはいけない。
これも勉強だと思って、桃太郎は
その日の午後。
「こんにちは~……」
桃太郎は、調合した薬を持って、閻魔庁の鬼灯の元へやってきた。
鬼灯は巻物整理の手を止めて、桃太郎に軽く会釈する。
「あぁ、どうも。薬の配達ですね。急に頼んでしまってすみません」
「いえいえ。……あれ? 椿さんは居ないんですか?」
「えぇ。今日は外勤をお願いしているので。今頃は視察中でしょう」
「そうですか」
桃太郎は、調合した薬の包みを渡した。
そして、申し訳なさそうに両手を彷徨わせる。
「あの、一応中身を確認してもらってもいいですか。今回は俺が調合したんですけど、その……」
桃太郎は、白澤に渡された説明書を鬼灯に渡した。
それを見るなり、鬼灯の眉間にしわが寄る。
「白澤様に渡された調合の説明書がこれでして……説明文と、以前に薺さんと調合した時のメモで、何とか出来たと思うんですけど、この絵を見ると、どうも自信が持てなくて……」
鬼灯は包みを開き、薬を確認した。
自分も調合を行うため、ある程度の薬なら、見れば分かる。
「大丈夫です、ちゃんと出来ていますよ」
「そうですか、良かった~……」
「最近、鬼インフルエンザが流行っていましてね。医務室の生薬が思いのほか早くなくなってしまったので、急遽、注文したんです」
「鬼インフルエンザですか?」
「えぇ。毎年冬になると流行るんですよ。今年は、インフルエンザと無縁の阿鼻地獄から来た椿さんが居ますからね。彼女に罹ったら閻魔庁全体にリスクが及びますから、私も気をつけないと……」
(……この人も病気になるのか?)
鬼灯は生薬を包みに戻し、白澤の説明書に視線を移した。
「しかし、この説明書は酷いですね」
「……はい」
桃太郎はこれを機に、ずっと気になっていたことを言う。
「薄々気づいていらっしゃるとは思いますが、白澤様は絵が、ちょっと……」
「いえ、薄々というか、痛感するレベルで気づいてますよ」
「あ、やっぱり?」
「薺さんが上手なだけあって、さらに酷く見えますね」
「そういえば、学会の資料作りでも、後から薺さんが挿絵を配布してるって聞きましたけど、やっぱり上手いんスか?」
「えぇ。現世なら美大に入れますよ。……確かその辺に……」
鬼灯は、閻魔大王のデスクに歩み寄り、勝手に引き出しを漁り始めた。
閻魔は今、休憩中でどこかに出かけている。
やがて、下の方の引き出しから、雑誌を一部引っ張り出してきた。
東洋薬学についての論文が載っている専門誌だ。
それをペラペラめくり、とあるページを桃太郎に見せる。
小難しい論文の端に、二枚の図が挿入されていた。
左側は白澤が描いたと思しき呪いの絵で、右側はモノクロ写真に見える。
「これは……写真ですか?」
「いいえ。薺さんが描いたものです」
「はぁ!?」
桃太郎は、雑誌に鼻が触れるほど顔を近づけた。
「た、確かに……よく見ると絵ですね」
「お上手ですよね。その左の呪いの絵を解釈して、右の絵として描き直しているんです」
「す、すげぇ……」
「おそらく世界中探しても、あの白豚の絵を理解できるのは薺さんだけです。白豚はアレでも東洋薬学の権威ですからね。挿絵一つとっても、貴重な知的財産なんです。それを唯一解読できる薺さんもまた、とても貴重な財産なんですよ」
「まさか神獣同士でここまで差があるとは……」
「本当に、どうしてこうなったのやら……。しかし、さすがに薺さんの手を借りられない状況で、こんな説明書を渡されるのは困りますね。業務に支障が出ます」
「そうなんですよ。……せめて、自分の絵が下手だって自覚してくれれば、文章だけで説明を頑張ってくれると思うんスけど……でも絵のことなんて本業外のことだし、あまり傷つけずに伝えるには……」
そうして桃太郎が頭を悩ませているうちに、鬼灯は光の速さで電話をかけていた。
"―――プルルルルル、ガチャ"
「……あ、もしもし。お前の絵、酷すぎるから、絵習いに来い」
『いきなり何だ―――
"ピッ"
桃太郎はぎょっとして振り返る。
「ちょっとォォォ! 俺はどうやんわり言うか……」
「大丈夫です。こんなことで傷つくような神経を、ヤツは持っていません。……それに、これを機にもう一人、絵心を持ってもらいたい人がいるので、ちょうどいいです」
「え……もう一人?」