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第五巻
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ある晴れた日の午後。
「今日もよくそだってますね~、ふふふ」
薺はいつものように、極楽満月の兎たちと、畑の手入れをしていた。
みずみずしく立派に育った薬草たち。
兎姿の薺は、その根元に土を上乗せして、モフモフの前足でポンポンと叩いていく。
「げんきに育ってくださいね? 無駄なくしっかりおくすりにしますから」
フスフスと鼻を動かしつつ、兎の手でも器用に土を盛り続ける薺。
やがて全ての薬草の世話を終えると、くるりと一回りして人の姿になった。
ふう、と息をつきながら立ち上がると、手入れの行き届いた畑を満足そうに見渡し、手の甲で額を拭う。
「……さて。みなさ~ん! そろそろおみせに戻りますよ~!」
畑のあちこちで作業をしていた兎たちに声をかけると、白や黒の耳がピョコピョコと立ち上がった。
"ガラララ……"
「ただいまですよ~」
極楽満月の扉が開き、薬草の籠を抱えた薺に続いて、従業員の兎たちがピョコピョコ入ってくる。
カウンターの椅子に座ってダラケていた白澤が、ひらひらと手を振った。
「あ、薺ちゃ~ん、おかえり~」
「ただいまです! 白澤さま」
薺はにっこり微笑むと、店の隅に薬草の籠を降ろして、仕分けを始める。
「おひるから、お客さんはいらっしゃいましたか?」
「いや~? ぜ~んぜん。あんまりにも暇だから、桃タロー君には午後は休みでいいよって言っちゃった」
「そうなのですか。桃太郎さんは、どこかへおでかけに?」
「うん。シロちゃんたちとどっか行くって言ってたよ」
それはいいですね、と言いつつ、仕分けを終えた薺は手を洗いに行こうと立ち上がった。
ぱっと顔を上げると、白澤と目が合う。
何故か じっと見つめられ、薺はまばたきを繰り返した。
「どうかなさいました?」
訊くと、白澤は突然吹き出す。
「ふ、くくくっ、キミはまた……。ちょっとおいで」
「へ? は、はぁ……」
薺はトテトテと白澤の元へ駆け寄った。
すると、白澤の大きな左手が頬に添えられ、どこからか出された白いハンカチが、そっと額を拭っていった。
「土の付いた手でこすったでしょ。せっかくの可愛い顔が汚れちゃってる」
「ひぇ!? あっ、じぶんでふきますよ!」
「いいから いいから」
「や、そのっ……」
カァっと赤くなる薺の頬。
恥ずかしさで慌てふためく姿が可愛くて、白澤は満足そうに口角を上げた。
そして、ひとつ思いつく。
「そうだ、どうせこのまま店番してても暇だし、久し振りに衆合地獄にでも出張営業しない?」
「え? あ、わたしはかまいませんが……」
「よし、決まり! 薺ちゃんが一緒にいてくれると、女の子がたくさん来てくれるからね~ふふふふっ」
それから。
二人は出張用の大きな薬箱を用意した。
獣の姿になった白澤は、薬箱の取っ手を口にくわえ、背に薺を乗せて地獄へと飛ぶ。
そして衆合地獄の花街までやってくると、地面に降り立った。
白い煙を発しながら、人の姿へと戻る。
「ん~、いつもながら、可愛い女の子がいっぱいだね~」
上機嫌に辺りを見渡す白澤。
……そのいつも通りの横顔をチラリと見上げた薺は、いつもより少しだけ、胸が苦しくなるのを感じていた。
「さて、空いてるベンチで薬箱広げよっか」
「はい」
スキップ混じりで歩き出す白澤に、薺は作った笑顔を浮かべてついていった。
大通りの脇に置かれたベンチに薬箱を置き、極楽満月の
「さぁさぁ極楽満月の出張診療だよ~! 頭痛に腹痛、肌荒れ、恋の悩みまで、何でも診察するよ~!」
白澤が声を張り上げると、道行く鬼女たちが振り返った。
「あら、極楽満月」
「見て見て! 今日は薺ちゃんもいるわ!」
「かわいい~!」
ヒソヒソと黄色い声が木霊する。
やがて、二人組の鬼女が第一の客として寄ってきた。
「あの~、冷え性のお薬とかありますか?」
白澤から花のオーラが
「もっちろ~ん! 何なら、今ここで僕が温めてあげるよ?」
そう言って強引に鬼女の両手を握ると、当然のごとく、鬼女は身を引いた。
「いや、あの、欲しいのはお薬で……」
それを見ていた薺は、困ったひとですね、と小さくため息をつく。
「だめですよ、白澤さま。こまってらっしゃいます」
そう言って、やんわりと白澤の手から鬼女の手を奪い取った。
「あらら、手先がひえてますね。冬場はさぞおつらいでしょう」
「わぁ、薺ちゃんの手あったか~い!」
「ふふふ、それはよかったです。手足がひえているとき、ぎゃくにお顔が
「そう! そうなのよ!」
「ふふっ、からだとは不思議なものですからね。……それと、もう一つおききしたいのですが……」
薺が背伸びをして、内緒話をするように口元に手を添えると、察した鬼女は、身をかがめて薺に耳を向ける。
「最近、お通じにお悩みはありませんか?」
「え!? うそっ、どうして分かったの!?」
薺はにっこり微笑むと、小さくも暖かい両手で、冷えた鬼女の手を再びすりすりと撫で始める。
「これこそ、からだの神秘というものなのです」
そんな、可愛くて献身的な姿に、次から次へと鬼女が集まり始めた。
女の子の手から引き離された白澤は、ちょっと残念には思ったものの、女の子たちが周りに集まってくれる上に、何より薺が楽しそうなので、良しとすることにする。
「白澤さま、
「もちろん、すぐに調合するね~」
満面の笑みで答えて、薬箱から生薬を取り出し、掛け合わせていく。
……その後も、薺が接客と問診をして、白澤が調合するという分担で、診療が続いた。