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第五巻
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「あ"~~疲れた……ねぇ椿ちゃん、少し休憩しない?」
「ぁあ? お前さっき休んだばっかだろ」
「え、今わしのこと"お前"って言った?」
「さっさとやんねぇと終わんねぇぞ」
「無視……?」
昼下がりの閻魔殿にて。
閻魔大王は今日も、適度にダラけながら仕事をしていた。
その隣で、椿は面倒くさそうな顔をしながらも、テキパキと仕事を終わらせている。
「椿さま~ぁ!」
「?」
突然、元気な声に呼ばれた。
そちらを見れば、白い毛玉が自分の方へ走ってくる。
「おう、シロ公か。どうした?」
「部長が、鬼灯様か椿様にコレ渡してこいって!」
シロは尻尾を振りつつ、首に巻いた風呂敷を見せる。
椿は持っていた巻物をその場に置き、シロの傍にしゃがんだ。
風呂敷をほどいてみれば、人間の言葉で書かれた報告書が。
折り
「不喜処の報告書か。……ん。特に不備はないな。サンキュー」
「うん! ……椿様は裁判中?」
「あぁ。自堕落大王のせいで ちっとも進まねぇけどな」
椿はため息混じりに、シロから受け取った報告書をファイルに挟んだ。
それを、裁判を終えた亡者の巻物のワゴンに放り込むと、別のワゴンから、これから裁判をする亡者の記録を20本ほど取り出す。
そして、閻魔のデスクにドサッと降ろした。
「ほらよ、次の20人やんぞ」
「え~~~~っ」
口を開けば文句ばかりの閻魔に、椿の血管がプチッと音を立てた。
「黙ってやれ。そろそろ挽肉にすんぞ」
「ひっ……分かったよぉ……」
と、そこに……
「宣言する前にミンチにしてしまえばいい」
恐ろしいバリトンボイスが響いた。
閻魔と椿とシロが閻魔殿の入口を見やると、鬼灯がゆったりと歩いてくる。
その隣には、神々しい光を放つ小柄な人影もあった。
閻魔大王と対を成す仏、地蔵菩薩だ。
椿は何度かまばたきを繰り返す。
「なんだ、どこの子供拾ってきたかと思ったら、地蔵か」
鬼灯が鋭い眼で睨んだ。
「失礼ですよ、椿さん」
しかし、地蔵菩薩本人は穏やかな笑みを崩さない。
「構いませんよ鬼灯殿。二週間ぶりですね、椿殿」
椿は早くも仕事を再開し、裁判を終えた亡者の記録に追記をしながら、意識だけを地蔵や鬼灯の方に向けた。
「ついこの間 来てただろ。また来たのか?」
「えぇまぁ。予定にはありませんでしたが、閻魔大王に呼ばれまして」
途端、鬼灯がため息をつく。
「まったく、閻魔大王は甘いです。最近、地蔵菩薩の派遣が頻繁すぎやしませんか? 賽の河原の子供たちが、すぐ地蔵様にすがりつきます」
閻魔は唸りながら髭を弄った。
「いや、まぁねぇ……でもさぁ、あんなに小さくして亡くなっちゃったことを思うとね」
地蔵がフフフと微笑む。
「相変わらず、鬼灯殿はお厳しい。反対に閻魔大王はお優しい。どちらも大切なことでしょう。私は、大王の化身であることを誇りに思っていますよ」
そんな地蔵菩薩を見て、シロは首を傾げた。
トコトコと近寄って、衣服の足元を噛む。
途端、鬼灯が声を荒らげた。
「あっ、コラ!」
シロはきょとんとした顔で眉をひそめる。
「石じゃないの? お地蔵様なのに」
地蔵菩薩は笑みを崩さず、しゃがんでシロの頭を撫でる。
「あれは私を
「へぇ~。あと、閻魔様の化身ってどういうこと?」
相変わらず神経が図太いシロにため息をつきながら、鬼灯が答えた。
「地蔵菩薩と閻魔大王はセットなんですよ。地獄の十王は、それぞれアメとムチの顔を持っていて、ムチが十王、アメが仏様です」
「そうなんだ」
「地蔵菩薩は子供を守る仏様として知られていて、"弱い立場の者優先で救ってくれる"ということから、庶民の間で爆発的に大人気になったんです」
「へぇ~。じゃあ、お地蔵さまは閻魔様の優しさで出来てるんだね!」
「……ところが、本来ムチであるべき大王がちっとも怖くないんです」
「え、あー……そのさぁ、ムチの化身っていうのが、実は鬼灯様とか椿様なんじゃない?」
シロはふと思いついて、心理テストのような質問をした。
「もしさぁ、子供が万引きしてるの見つけたら、4人はどうする?」
地蔵菩薩はニッコリ微笑む。
「もちろん、諭します」
閻魔は う~んと唸った。
「叱ってから、親に言うかなぁ……」
鬼灯と椿は、まるで打ち合わせでもしたように冷たい目をする。
「鼻血が出るまで引っぱたきます」
「山の向こうまで殴り飛ばす」
シロは思わず一歩引いた。
「や、やっぱり、閻魔様が中間なんじゃないの……?」
閻魔は困り顔で髭を弄る。
「う~ん、そうかもねぇ……結局、どうするのがいいんだろうね」
そんなこと訊かれても、と言いたげな顔で、シロは首を傾げた。
「さぁ……」
鬼灯が、ため息混じりに手を叩く。
「さぁさぁ、休憩時間は終わりです。仕事再開しますよ」
閻魔が分かりやすく机に突っ伏した。
「え~~もう~~?」
"スコンッ!"
追記作業をしていた椿の手から飛んだ筆が、閻魔の手元に突き刺さった。
「3秒以内に始めねぇとミンチにすっぞ」
「わ、分かったよぉ!」
閻魔は、鬼灯の技が着々と椿に受け継がれていることに恐怖しつつ、慌てて記録を開き始めた。
「さぁ、シロさんも仕事に戻りなさい」
「は、は~い……」
これ以上お喋りを続けると挽き肉にされる気がして、シロはそろりそろりと駆け出した。
途中、閻魔殿の戸口で振り返る。
閻魔が必死に次の亡者の記録を読む傍ら、地蔵は現世の入口へと歩き出しており、鬼灯と椿は真剣な顔で仕事に臨んでいた。
(結局、アメもムチも全部必要ってことだよね)
アメな大王とムチな補佐官で、今日も地獄は順調に回っている。
→ 31. 大判小判