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第四巻
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午前中。
閻魔殿で書類を運んでいた唐瓜は、いつも通る廊下が清掃中のため、今日は違う廊下を通っていた。
『ハーイ、並んで下さーい! そこ! 列は乱さないで!』
誰かが拡声器で呼びかけている。
唐瓜は、声が聞こえてくる部屋を覗いた。
部屋奥の、カーテンの間仕切りに向かって、大量の亡者たちが並んでいる。
「? この列は……」
呟くと、傍に居た先輩獄卒が答えてくれた。
「お前は初めて見たか? 拷問待ちの列だよ」
「ご、拷問待ち!? 閻魔庁で!?」
拷問は全て、地獄の各部署で行われるものと思っていたが……
「これはな、裁判を全て終えた亡者で、『まぁ大した罪なし』になった亡者が、1回だけ罰を受ける列なんだ。逃げたら即・地獄行きだから、みんな大人しく我慢してるのさ」
「へ、へぇ……」
「ま、痛いのなんて一瞬だよ。あとは転生か天国が待ってる。安いもんだ」
「……何か、予防接種の列みたいっすね」
「ん、あれ? 鬼灯様だ。ここに顔出すのも珍しいな」
先輩獄卒の見ている方へ、唐瓜も目を向ければ、拡声器を持った鬼灯が立っていた。
『情状酌量による現世か天国逝きの皆さん、誠におめでとうございます』
バックに流れている、蛍の光。
その曲の演出が地味にイヤだなぁと、亡者たちは皆思った。
『しかしこれも、ひとえにご遺族の手厚い供養の
亡者たちの目の前に、巨大な祭壇がある。
一番後ろには花が積み上げられており、その前に、数々の料理や菓子が置かれていた。
「あ……アレは、うちの嫁の手料理だ……」
「アレは孫が供えた似顔絵とジュースだな」
「パ●の実とコア●のマーチ率が異様に高いな……」
亡者たちは供物の祭壇を眺めながら、『簡易地獄』という看板が立てられた、カーテンの間仕切りの方へ進んでいく。
唐瓜は隣の鬼灯に訊いた。
「あの中では一体どんな……」
「別に大したことはしませんよ。ちょっと舌を抜くだけです」
「だけ!?」
「すぐまた生えてきますよ。それで無罪放免なら、安いものでしょう?」
「いや結構な代償ですよ!? ……しっかし、凄いですねぇ供物の量」
「……と、もうこんな時間でしたか」
「ん、どっか行かれるんですか?」
「えぇ。この亡者たちの判決を出した方々の会食場へ。案内を椿さんに任せてあるんですが、なにぶん大雑把な人ですから、ちょっと心配で」
「へぇ~……って、つまり十王様!?」
「そうですよ。大事な懇親会です。……宜しければ、食事運ぶの手伝って頂けます?」
鬼灯は唐瓜を連れて、十王の懇親会会場へやって来た。
10人はきちんと席についており、周りを補佐官が動き回っている。
「椿さん」
鬼灯は部屋の隅にいた椿の元へ歩み寄った。
「おー、鬼灯」
「問題ありませんでしたか?」
「あぁ。王たちもみんな慣れてんだろうな。あたしが何かしなくても、勝手に席座って、勝手に始めてくれたよ。各庁の補佐官も手伝ってくれたし」
「そうですか」
「しっかし、こうやって見るとホント大王ってデカいな」
「そうですね。現世の地獄絵でも、閻魔大王は一番大きく描かれることが多いですが、実際そうなんですよね」
食事を運んできた唐瓜が、半目で苦笑する。
「何というか……変なだまし絵を見ている感覚が……」
話が聞こえたのか、閻魔以外の十王たちが口々に言う。
「いやいや、御立派な証拠ですよ。我々なんて、大王に比べたら十把一絡げ」
「そうそう、現世の我々の絵なんて、パンダ並みに個体差もありませんし」
「こうして閻魔大王主催の会食へ出席できるなんて、ありがたい話です」
「食事も豪華ですしねぇ。さすが閻魔大王」
「いやいや、補佐の彼らが居てこそですよ」
唐瓜は、呆けた顔で、談笑する十王たちを見つめた。
「これだけ王が揃うと壮観だなぁ……」
「そうですね。皆さん多忙ですから、なかなかこんな機会はありません」
「十王様たちの周りに居るのは、補佐官様たちですか?」
「えぇ。一人につき一人以上、もしくは一体以上、必ず
「へぇ~」
「あ、椿ちゃん、そこのビフテキ取って?」
「ん、あぁ、はいよ」
「……え、ちょっと、何で思いっきり振りかぶってるの?」
「いや、投げた方が早いだろ。ちゃんと口でキャッチしろよ?」
「犬かワシは!」
"ヒュッ"
「おふぅっ!?」
ガヤガヤワイワイ。
十王たちの晩餐も、佳境に入った頃。
「……ところで、最近は供物も多様化してますねぇ」
「そうですなぁ。昔は、飯と水があれば贅沢な方でしたね」
「今どきの亡者は、ケーキや料理が普通にあって、幸せですね」
「えぇ、それに、供養の仕方も個性的でいいです」
五道転輪王が、屈託のない笑顔で話した。
「以前、お寺に来た若い男性が、お墓にアートを施されていったという話を聞きました。最近は変わった墓参りをするのですね」
鬼灯が冷静にツッコむ。
「それ、墓参りじゃなくて、ヤンキーのお礼参りですよ、多分」
「おや、そうなんですか? あははは」
鬼灯は小さくため息をつき、呟いた。
「五道転輪王は聡明な方ですけど、やはり少々ポヤンとしていますね」
「昔っからあんな感じだよな」
「あの人がラストの裁判官で大丈夫なんですかっ!?」
……食事をしながら、閻魔は各王とその補佐官を見つめた。
(心なしか、みんなの補佐官はすっごい従順な気がする……あれ、これって気のせいかな……隣の芝生は青いって言うし……いやいや、うちの鬼灯君と椿ちゃんはいい子だ。仕事はもちろん、こうして会食のプロデュースを一任しても、完璧にこなしてくれる自慢の「食事をポロポロ零さない!」
"バコンッ!"
鬼灯が手近なお盆で、閻魔の顎を下から打ち上げた。
「おべしっ! やっぱり気のせいじゃない!」
傍では、王が落とした箸を拾い、代わりを持って来つつワインのおかわりも注ぐ補佐官。
(ものっすごい主従関係! かたや、何かの切れ端をパンパンやって、マナーを見張るワシの腹心!)
「ちょ、ちょっと鬼灯君、彼らをご覧よ。キミも少しは見習って……」
「うちはうち! よそはよそ!」
「ひっ、久々に出たァ! 鬼灯君のお母さん節ぃ!」
ガミガミと閻魔に説教を始める鬼灯。
その様子に、王たちは頬を引きつらせる。
「さ、さすがは大王……部下から違うな……」
「うむ。……ん? そういえば彼女は……」
「見覚えのない補佐官だな……」
「閻魔大王、鬼灯殿、そちらは新しい補佐官ですかな?」
「先程、我々を案内してくれたが……」
閻魔は、助け船をありがとうと言いたげに、その話に乗った。
「あぁ! 彼女は最近入った第二補佐官で、椿ちゃんって言うんですよ!」
鬼灯は、話を逸らされたか、と小さくため息をつきつつも、丁寧に紹介する。
「彼女は元阿鼻地獄の主任獄卒でして、昨今の人口爆発を受けて、此の度、第二補佐官として閻魔庁に来てもらうことになりました。……ほら、椿さん、ご挨拶を」
「挨拶? 何言やいいんだよ……」
鬼灯に背を押されて、椿は十王たちの前に出た。
「あー、第二補佐官してます、椿ですー。宜しくお願いしまーす」
テンプレートを棒読みして、頭を掻きながら軽く会釈をする。
「ほう、阿鼻地獄から引き抜きですかな」
「それはさぞかし、有能な方なのでしょうなぁ」
「丁度いい機会だ。鬼灯殿、椿殿、地獄の管理も引き受けている閻魔庁から見て、昨今の供養問題はどうかね」
「供養によって亡者が減刑になることに、疑問を持つ者もいるようだが」
鬼灯と椿は目を見合わせた。
鬼灯が見解を述べる。
「そうですね……。確かに、短絡的にそのルールに従えば、供物の多い金持ちや権力者ばかりが減刑になります。しかし、人望は亡者の重要な要素。その公正な判断こそ、我々の役目と自覚しております。遺族の強い祈りを、
「なるほど。しかし、人口爆発によって、我々も多忙になりましたな」
「そうですねぇ。昔はもう少し、一人ひとり丁寧に裁判できたのですが……」
「今は物も豊かで、供物の量自体は増えていますが、だからといって、昔より敬虔だと判断するのは浅はかですしなぁ」
「それに、あの供物の山。一部は獄卒たちの食事に回されているようですが、大半は処分になっているのでしょう?」
鬼灯が、あぁ、と話に入った。
「いえ、大半は彼女が平らげています」
「「「……え?」」」
鬼灯の指す先には、椿。
十王たちは数秒固まった。
「大半を、平らげる……?」
「えぇ。椿さんは地獄一の大喰らいでして。他にも、阿鼻の巨大生物たちの餌にもなっています。昔から、社員食堂で食べきれなかった供物は、阿鼻に回されていました」
「ほ、本当にそんな華奢な椿殿が……?」
椿はニっと笑みを浮かべる。
「この会食の料理くらいなら余裕っすよ」
「興味がおありでしたら、今ここでフードファイトさせてみましょうか?」
「え、あぁ、いやぁ……」
返答に困った十王たちは、互いに目を見合わせた。
供物は全て、
→ 23. 盂蘭盆地獄祭