夢主たちの名前を決めて下さい。
第三巻
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地獄において、新卒たちはまず様々な部署の雑用をして回る。
その中で、配属希望先を決めていくのだ。
地獄のチップとデールこと、唐瓜と茄子は、今日は衆合地獄の洗濯場にいた。
「はぁ……」
タライに洗濯板という古風な方法で、鬼女たちの着物を洗う唐瓜。
「オシャレ着って全部手洗いなんだってな。楽じゃねぇよ実際」
「んー、そうだね~……」
うわの空で相槌を打った茄子は、顎に手を当て、干された洗濯物をじっと見つめていた。
唐瓜が手を休めず言う。
「そういや、お前も明日非番だったよな。せっかくだし、鬼灯様に頼んで明日衆合地獄の見学させてもらおうぜ」
茄子は思いついたように、ポンと手を叩いた。
「なぁなぁ唐瓜! 今すっごい一発芸思いついたぞ!」
「あぁ? んなことより、お前、干してく係だろ? 終わったのか?」
言いつつ唐瓜が振り返ると……
「ファラオ」
ボーダー柄のタオルを頭にかぶった茄子がいた。
"ゲシッ!"
「仕事しろォ!」
茄子は唐瓜に蹴り飛ばされていた……
「鬼灯様~、洗濯終わりました~」
「うぅ~……何で本気で蹴るんだよォ……」
茄子を引っ張って、唐瓜は鬼灯の元へ戻ってきた。
裁判の間にいた鬼灯は、亡者たちの記録を納めた巻物を整理しながら、二人に軽く頭を下げる。
「お疲れ様でした。次はこちらの書類の清書をお願いします。分からないことがあれば、記録課の方々に訊いて下さい」
「はい!」
「は~い!」
唐瓜と茄子は大量の書類を抱えた。
「ふ~んふっふふ~ん」
茄子は早速鼻歌混じりに歩き出す。
しかし唐瓜はその場に佇んでいた。
「? どうしました、唐瓜さん」
「えっと、あの……急で大変申し訳ないんですけども、明日、衆合地獄を見学させて頂けませんか!」
「何故、衆合地獄を?」
「えっ、あ、えーと……今後の参考のために見ておきたいなぁ、と……」
「……」
目を泳がせる唐瓜からは、どうしようもないくらいの下心が感じられる。
「おっ、お願いします!」
唐瓜は書類を持ったまま、深々と頭を下げた。
鬼灯は手帳のスケジュールを確認し、ため息をつく。
「前もって言って頂きたかったですね」
「す、すみませんっ」
「……まぁ、明日はちょうど、衆合地獄の視察がありますから、そのときに」
「あっ、ありがとうございます!」
これでもかと表情を輝かせた唐瓜は、走って茄子を追いかけていった。
その背中を、困ったものだと見送る鬼灯。
……と、そこに。
「お~い、大叫喚地獄の視察終わったぞ~」
椿がやってきた。
「お疲れ様です。どうでした?」
「ん~、まぁデカい問題は無しだ。夜勤業務が人手不足とか嘆いてやがったが、シフト調整してやったら何とかなった。けどまぁ、あと2~3人は欲しいな」
「そうですか。こちらで少し調整します。ご苦労様でした。……明日は非番でしたっけ?」
「ん? あぁ」
「結局、二週間休みなしで出勤させてしまいましたね。すみません」
「ンなのお互い様だろ? お前こそちゃんと休み取れよ?」
「私の方は大丈夫です。貴女が来てくれたおかげで、かなり仕事が減っていますから」
「つーかお前、休みの日くらい寝りゃいいのに、何で徹夜で薬作んだよ」
「やり始めると止まらないので、つい。……ご心配なく。仕事に影響は及ぼしませんから」
すまし顔で巻物整理を再開する鬼灯。
椿はその背中を眺め、僅かに眉根を下げた。
「……なぁ」
鬼灯は振り向くことも、手を休めることもなく返事をする。
「はい?」
「……お前、この仕事好きか?」
巻物を持った鬼灯の手が、止まった。
「……どういうことですか?」
「そのまんまだよ。……好きか?」
鬼灯は数秒視線を巡らせた後、作業を再開する。
「そうですね。好きか嫌いかと問われれば、好き、でしょうね」
「そうか。薬作んのとどっちが好きだ?」
「はい? ……それは迷いますね」
「薬剤師を仕事にしようとは思わなかったのか?」
「……どうかしたんですか? さっきから質問ばかり……」
手を止め振り返った鬼灯の目に映ったのは、辛そうな笑みを浮かべた椿の顔。
その表情に、鬼灯はいつもらしからぬ雰囲気を感じた。
「何か、あったのですか?」
椿はふっと短いため息をつく。
「いーや、なーんも。ただちょっと気になっただけだ。悪かったな」
鬼灯の肩をポンポンと叩き、椿は次の仕事へ向かうべく、行ってしまった。
「……」
鬼灯はしばらく椿の背中を見送った。
……本当に、少し気になっただけなのか。
二千年以上に渡るつき合いの長さが、それだけではないような気にさせた。