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第二巻
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「ふ~んふっふふ~ん」
裁判の休憩時間。
閻魔は『マンガで分かる四谷怪談』を楽しく読んでいた。
「鬼灯、コレどっちだ?」
「あぁ、それはこっちです」
裁判の間で、休憩中の閻魔をよそに、鬼灯と椿は大量の巻物を整理していた。
「ねぇねぇ、百物語って知ってる?」
鬼灯と椿が顔を上げる。
「ヒャクモノガタリ? 何だそれ」
「現世の人間が、ロウソクを百本並べて、百の怪談を語るアレなら、存じておりますが」
「ふーん、現世の奴らってそんなことやってんのか」
「アレ面白いよね。みんな怖いのに何でやるんだろ」
「手頃なスリルなんでしょう。百物語が何か?」
「いや~、人って不思議だよね。怖い目には遭いたくないのに、怖いものには惹かれるんだから」
「あぁ、もしかして閻魔大王、スリルをご所望ですか? 分かりました。今すぐチェーンソーを持って参ります」
「違うよ!何さらっと言ってんの!」
「そういやこの間、烏頭が新作のチェーンソー作ってたな。切れ味抜群で作業効率も格段に上がるとか力説してたけど」
「椿ちゃんまでやめて!」
閻魔は青ざめた顔でため息をつく。
「あのねぇ、わしが言いたいのは、いつの時代も怪談が流行るなぁってこと」
「あぁ、そういうことですか。怖い目に遭いたいのかと思いました」
「さてはリアル鬼ごっこするつもりだったな!?」
「別にいいだろ? 死なねぇんだから」
「死なないから辛いの!」
閻魔はマンガを閉じ、昔を思い出した。
「わしもず~っと昔は人間だったけどさ、その頃も怖い話ってあったよ」
「現代でも、稲川淳二氏は夏の風物詩ですしね」
「君、鬼なのにそういうの見るの?」
「イナガワ…ジュンジ……?」
「好きですよ、語り口とか。……まぁ、肝は1ミリも冷えませんが」
「だろうねぇ……」
「しかも、大体後輩が酒の席で話す武勇伝とカブっているので、オチが分かってしまうんです。そこで俺が化けて出たんだ~とか」
「みんな現世で何してるの!? というか鬼灯君、飲み会とか参加してるの!? そういう付き合いはしない方だと思ってたよ! 誘っても全然来ないし!」
「行きますよ? 飲み会くらい。私から誘うこともありますし。……ねぇ? 椿さん」
「あぁ。鬼灯、結構イイ店知ってるからな。毎回楽しいぜ?」
「大王の誘いは断ってますけどね」
「何で!? わしの何が嫌なの!?」
「特に何が嫌という訳でもないのですが……お孫様の話を延々と何時間も聞かされるのが辟易するというか、飽きるというか……」
「結構具体的に嫌なんじゃないか! ……というかわし、そんなに孫の話してる?」
「してますね。気持ちは分かりますが、5回目からはキツイです」
「いや~そうだったか。ごめんごめん、もうしないよ」
「孫溺愛中の『もうしない』は信用できません。……この間なんて―――
―――遡ること数日前。
閻魔は孫を抱っこして、裁判に臨んでいた。
「んーと、おまえ、じごくだっ」
「えぇ~? 坊がそう言うなら、地獄逝きにしちゃおっかな~!」
「なっ……ちょっと閻魔大王……」
「ショッピング感覚で俺の今後を左右しないでくれぇっ!!」
椿も、その日のことを思い出した。
「あ~、あの日か。あんときゃビックリしたぞ。執務室で書類見てたら、いきなり鬼灯に呼ばれて、ガキ押しつけられて面倒見ろとか言われて」
「あのまま裁判を続けていたら、裁定が大変なことになりかねなかったので……」
「う~ん、ごめんねぇ……。でも、坊は椿ちゃんのこと気に入ったみたいで、またあの鬼ごっこやりたいって。どんな鬼ごっこしてたの?」
「あぁ、デッド・オア・アライブ、真剣サバイバル鬼ごっこだ。余ってた拷問器具借りてな、鬼に捕まりたくなきゃ鬼を倒せっていう趣旨で「ウチの孫に何て危険なことさせてんのォ!?」
「怪我なんかさせねぇよ。鬼役のアタシは防戦だけだったし、アイツが自分で怪我しそうになったら止めてた」
「もう……心臓に悪いよ……」
「心臓だぁ? 死んでんだから関係ねーだろ」
「まぁ、そうだけど……」
「また椿さんとサバイバル鬼ごっこして欲しくなかったら、もう仕事場へ引き込むのはやめて下さい」
「うん、以後気をつける。……あ、そうだ! 迷惑かけたお詫びにドーナツあげるよ」
閻魔は机の一番下の引き出しを開けた。
「これ凄いんだ。限定商品で、今なかなか買えなくてね、今朝一番に並んでようやく……」
パカっと、紙製の箱を開けて、閻魔は固まった。
―――中身がカラッポ。
「あれ?」
鬼灯と椿はシレっとした顔を向ける。
「あぁ。それなら先ほど、椿さんと毒見しておきました。美味しかったですよ」
「隠すならもっと上手くやれよ? アタシの鼻にかかれば、そんくらいすぐ見つけ出せる」
「ギャアアアァァァァッ!! いけしゃあしゃあと!!」
閻魔は二人の首根っこを掴む。
「君たちっ……何も、全部……っ、ドーナツ! ドーナツ! ドーナツ!」
「言うほどか? 心狭めぇな」
「五月蠅いですね、このドーナツ大王」
鬼灯はため息をつき、首元の閻魔の手を払い除けた。
「分かりましたよ。私が今から揚げてきますから」
「え、君、ドーナツ揚げられるの?」
「簡単ですよ。いつも罪人を素揚げしてますし」
「なんかイヤな得意料理だな……」
「鬼灯、アタシにも頼む」
「もちろん、分かってます。……では、一時間ほどお待ちください」
言って、鬼灯は調理場の方へ歩いていった。
―――1時間後。
"ドサッ"
「はい、どうぞ。出来ましたよ」
鬼灯が運んできたのは、直径150cmの超巨大ドーナツ2つ。
「おっ、デカいドーナツ!」
椿が喜び勇んで飛びつく。
「閻魔大王も、どうぞ?」
「う、うん。……てっきり、ドーナツ状の何かが出てくるオチだと思ってたけど、まさか普通に巨大ドーナツとは……。まぁでも一応、ありがとう。頂くよ」
閻魔はドーナツに顔を突っ込む形で、内側に齧りついた。
すると……
「……ポン・デ・エンマ」
鬼灯が呟いた。
「ちょっ、何っ、ポンデエンマって!」
「いえ、何でもありません」
「ぷは~っ、美味かった~。鬼灯、ありがとな~」
「もう食べたんですか? 相変わらず恐るべき胃袋ですね」
「はっはっは~、まだイケるぞ~?」
楽しそうな二人をよそに、閻魔は肩を震わせる。
「……鬼灯君、君ねぇ、前から思ってたけど、チョイチョイわしで遊んでるよね……一回痛い目見た方がいいよ! 部下への制裁も上司の役目! 覚悟! 閻魔の裁き!!」
閻魔が杓を振り下ろすと、どこからか雷が落ちてきた。
"ビシャアアァァァッ!!"
それを無表情に見上げた鬼灯は、右手を一振り。
"ぺしっ"
雷は方向を変えた。
その先には椿が……
「ぅおっ、危ねっ!」
"ぱしんっ"
"ビシャアアァァッ!!"
二人に払い除けられた雷は、床を砕いた。
「二人して蚊でも払うかのように!?」
閻魔はがっくしと机に項垂れる。
「……もういいよ。君たちの方が大王に向いてるんじゃないかな……。鬼灯君が大王で、椿ちゃんが第一補佐官、その方が上手くいくよ、きっと……」
鬼灯と椿は目を見合わせ、ため息をつく。
「なぁに言ってんだ大王」
「貴方以外に閻魔大王が務まるものですか」
閻魔は意外な言葉に顔を上げた。
「鬼灯君……椿ちゃん……っ」
パァっと表情を輝かせる。
……逆に、鬼灯の顔には影が落ちた。
「地獄一頑丈で凹まないあなたを叩きながら、地獄の黒幕を務めるのが美味しいんじゃないですか」
「鬼灯君の本心を初めて聞いた気がする! そしてあまり聞きたくなかった!」
「そういや、もう長い付き合いだな。何千年だ?」
「そうですね。これからも、よろしくお願い致します」
「う、うん……」
何となく、腑に落ちない気のする閻魔であった。
→ 第三巻:13. 男と女と衆合地獄