夢主たちの名前を決めて下さい。
第二巻
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
春といえば、入学、入社、新生活。
それは地獄でも同じこと。
「ゴホン……えー、新入社員の皆さん、入社、おめでとうございます」
裁判の間で、閻魔は新入獄卒たちを前に、にこやかに挨拶を始めた。
「諸君にはこれから、獄卒として、日々拷問の限りを尽くしてほしいと思っております。手始めに、これから各機関を見学して頂きますので……えーと、鬼灯君?」
「はい」
閻魔の傍らに立っていた鬼灯が、新卒たちの方を向いた。
「皆さんお久しぶりです。採用以来ですね。閻魔大王・第一補佐官の鬼灯です。これから地獄の各機関の見学に参りますが、見学後には早速配属希望を伺いますから、しっかり観察して下さい」
「「「はい!」」」
ピシッと背筋を伸ばし、元気な返事をする新卒たち。
緊張気味の彼らを連れて、鬼灯は裁判の間を後にした。
さて。
まず訪れたのは、大釜の間。
「「おぉ……」」
扉を開けるなり、顔に吹きつける熱気。
部屋中に並べられた大釜は、どれもボコボコと煮えたぎり、中から亡者の悲鳴や呻き声が聞こえていた。
鍋の周辺を動き回っているのは、新卒たちの先輩にあたる獄卒たち。
鬼灯が説明を始めた。
「ここは見ての通り、熱湯の大釜が立ち並んでおり、盗人の末路です。万引きは一回につき一年、強盗は百年、下着ドロは千年」
「……後半二つの開きはなんだ?」
「……さぁ……」
「そこ、聞こえてますよ?」
「「すっ、すみません」」
「ここには、かの石川五右衛門も……あ、アレがそうですね。見ると幸せになるというジンクスがあります」
鬼灯の腕が持ち上がり、釜の一つを指さした。
「うわ、すっげー……」
「アレが石川五右衛門か~」
「クソっ、ふざけんな!」
「「?」」
突然した大声の方を向くと、釜の中でバシャバシャ暴れている男の亡者が一人。
「何でたかが万引きでこんな目に遭わなきゃいけねぇんd"バシャッ"
男の顔に、熱湯が掛けられた。
……さすがに黙らざるを得ない。
「まったく……」
鬼灯は、ポンポンと桶を手の中で弄び、回転つきで男に投げつけた。
"ヒュルルル……カコンッ!"
「痛ッ! ジャストミートでタガが眉間に当たって地味にすっごく痛い!」
タガとは、木の桶の側面をぐるっと囲んでいる鉄の輪である。
鬼灯はシレっと、新卒たちに教えた。
「このような生意気な亡者は、躊躇なく痛めつけて下さい」
「お、俺たちに出来るかなぁ……」
「コツは、仕事だと開き直ることです」
額を押さえていた男が叫んだ。
「こンの鬼ぃぃっ!」
鬼灯は無表情で男を見下ろす。
「鬼ですけど?」
「ぬぁっそうだったっ、チクショー!」
「次にそういう口をきいたら、貴方がコムラ返りになったとき、患部をつつきまくりますよ?」
「何の宣言だよ! 長丁場な上に歪んだ嫌がらせ思いつきやがって!」
「あぁそうそう、これは某人物が、某雑貨チェーン店の店長だった頃のお話です」
「は?」
「そこは片田舎で、集客数は毎日ごく僅か。客単価も安いお店です。……しかし、毎日大量の万引きに苦しんでいました。結果、ロスと売り上げ不振で、店一つ潰れるハメになったのです。万引きを軽罪と考えているバカ全て、皮を剥いでやっていいと思っているくらいです」
「私怨じゃねぇか!」
ところ変わって、血の池。
真っ赤な池で、亡者が首だけ出して浮いている状態だった。
「ここは詐欺・横領などを行った亡者が落ちます。……そうですね、あそこの一角をご覧ください」
指さした先には、三人の初老男性たち。
「助けてくれ~……」
「3憶ほど流すから~……」
「替え玉を用意してくれ~……」
「彼らは、元政治家です」
「こっ、この期に及んでなんつー有り様……」
「今まで何千人、こういう亡者を血の池フォンデュにしたことやら」
「まさに血税に溺れたわけですな……」
「お、おぉっ」
「あれはもしやっ」
突然、血の池が騒然とした。
鬼灯と新卒たちは、崖の上から覗き込む。
亡者たちが上を向いているので、同じように見上げれば、虹色に光る糸が一本、空から垂れてきた。
新卒たちは目を輝かせる。
「あっ、あれは!」
「芥川龍之介でお馴染みのっ!!」
当然、亡者たちは我先にと糸を登り始めた。
しかし……
"チョキン…"
虚しい音が響いた。
「「うわああぁぁっ!」」
"ザバァンッ!!"
亡者たちは血の池に逆戻り。
鬼灯が、ハサミをショキショキ鳴らしながら、新卒たちの方へ振り返った。
「このように、いつも絶望を与えるようにしてください。鬼たるもの、残酷非道でしかるべきです。容赦・慈悲、そんなものは仏に任せ、しっかりと罪を責め尽くして下さい」
新卒たちは青ざめた。
「す、すごい……」
「鬼の中でも相当だ、この人……」
「さぁ、どんどん次に参りますよ?」